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鹿児島ラプソディ

ガソリンを入れていたら少し出遅れた日、最初に呼ばれたのはタイ料理かベトナム料理あたりが混ざっているアジアンレストランでした。

店員さんに出前に来たことを告げると、彼は私の顔を見て開口一番に「日本人?」と聞くのです。

私が「日本出身ですよ」と答えると、
彼は「どの街?」と食い下がります。

私は「東京です」と答えると、
彼は一言「カゴシマ」と告げました。

失礼ながら鹿児島の方には見えませんし、何が鹿児島なのかと思いつつも「鹿児島の方ですか?」と聞いたところ「鹿児島に2、3年住んでいた」と。

なるほど。

「鹿児島で何してたんですか?」と問うと「英語の勉強をしていた」と彼は答えました。

日本は留学先として決して有名ではないですし、残念ながら私達が英語が苦手民族なのは皆、承知の事実です。

「英語を?日本で?」と聞き返す私に「クレイジーでしょ?」と可笑しそうに笑うのです。

確かにクレイジーですが勉強の成果は出ている気がします。不思議なこともあるものだと感心している私に、彼はすかさず言い放ちました。

「そのあとフィリピンに行って勉強しなおしたけどね!!」


「…やっぱり!」

私と彼は2人で笑い合いました。

民族的な話は、この国では扱いに気をつけなくてはならない繊細な話題ですが、移民同士でたまに許し合う瞬間があります。カタコト英語の不躾な態度を許容してくれるのは、海を越える苦労を知る仲間だったりするわけです。

彼がどこから来たのかは結局、分からず仕舞いでしたが、タイ料理だかベトナム料理だかのランチが冷めない内に、彼には別れを告げました。

所要時間:28分
配送料:$4.08
チップ:$5.01

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