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ジャスミンと私の週末

珍しくよく晴れた金曜の午後、ジャスミンにグローサリーを届けます。

ジャスミンの住まいは美しい新興住宅街にあります。真新しい家々には新しくこの地に引っ越してきた人ばかりが多く住むエリアです。春の村と名のついたこの地域にふさわしい春の陽気の中、彼女の住まいを探します。

家の前の石段に女性と小さい男の子が座っているのが見えました。私が声をかけると、ジャスミンはにこやかに手をあげ、男の子は急いで彼女の後ろに隠れました。

紙袋を6つほど運び、納品完了の報告をアプリにしようとしましたが、電波が悪く、何度やってもうまく行きません。気まずい時間が流れないように私は口を開きました。

「いい天気ですね」

ジャスミンは答えます。
「ほんと。いつまで続くことやら」。

「ここは雨が好きなら言うことはないですね」
「ほんと、雨が長すぎる!」

「お子さんはいくつですか?」
「5歳。今日は保育園お休みなの」

「週末は何かされるんですか?」
「インドのお祭りが近所であるの!知ってる?」
「知らなかったです。私はダウンタウンのスポーツイベントに参加するんですよ」

それでもアプリはまだクルクルとのろのろしています。そろそろ話すことが無くなってきたなと感じ始めた頃に、ジャスミンが「Wi-Fi使う?」と聞いてくれました。得体の知れぬドライバーにWi-Fiを共有してくれるなんて、なんて心優しい方なのでしょう。

彼女が貸してくれたWi-Fiもそこそこのろのろとし、私を脅かしましたが、無事に納品報告が完了しました。

「ありがとうございました。助かりました。」
「どういたしまして」

私達は「お日様を楽しんで!」と言い合い別れました。滅多に太陽が顔を出さない私たちの街では、晴れの日の為の挨拶があります。

ジャスミンと、その周りでうろちょろしている小さな息子は、この後も石段で日向ぼっこを続けるようです。

所要時間:40分
配達料:$6.07
チップ:$0.00



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