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【フツーの人々(1人目) / 腹筋する魚屋】

腹筋する魚屋

東急線沿線のとある駅近の商店街にある魚屋の主人。
その魚屋は、わりとおしゃれな花屋の横にある。
その雰囲気を見事にぶち壊す映画ロッキーのテーマ。

おそらく40代中盤の店主と思しきその男性は、
そのBGMを大音量にして、額に汗し鼻息も荒く腹筋をしていた。
ヒラメとかマグロとかの切身といっしょに、店先で。
グレーのよれたTシャツに紫のエプロンをかけて。
め、ちゃ、く、ちゃ、ゆっくりと。(負荷かけてるの?)

繰り返すが、ここは24時間営業のジムでもなく、
ただの魚屋である(そのはずだ)。
その店主以外に腹筋している人間はいなかったから、
魚屋×ジムといった奇抜な新業態ではなかったはずだ。

おっさんは、誰に認められるわけでも、
誰に褒められるわけでもなく、
ただロッキーのテーマとともに、ひたすら腹筋していた。
ひ、た、す、ら、ゆっくりと。(負荷かけてたの?)

もちろん(というか案の定)、客足が途絶えていたこと、
またおっさんの腹が見事にビール腹だったことは言うまでもない。
しかし魚屋のおっさん、どこに向かってたんだろう。

フツーの人なんてこの世に1人もいません。
自分にとってはフツーじゃない人々が
大きな世の中のフツーってもんを作ってるんですよね。
事実は小説よりも奇なり。いやほんと。

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