「マイナス金利国債」の謎 - 誰が何のために買っているのか。ドルで運用すると...。

 なぞなぞ。 ↓ は何の事を言っているのだろうか?

①1.35% > ②-0.67% > ③-0.27% > ④1.45%

 ??? 10年国債の運用利回りランキングだと言う。正解はこちら ↓

①イタリア 1.35% > ②ドイツ -0.67% > ③日本 -0.27% > ④アメリカ 1.45%

 ??? 損切丸さん、算数苦手なの?と言われてしまいそうだが、実はこれ、ドル建に変換したときの利回りを単純に順位付したもの。ドルに直すと ↓ のようになる。(あくまで例示のための概算)

①イタリア $4.35% > ②ドイツ $2.32% > ③日本 $2.20% > ④アメリカ $1.45%

 ちゃんと算数になった。何回か投稿しているが、マジックのタネは「ベーシススワップ」。2通貨を一定期間交換する取引のことで、ドル・円やユーロ・ドルなどドルとの交換を中心に市場で値付けされている。ドル資金の需要が強いことから、ベーシススワップ市場では「ドル・プレミアム」が上乗せされることが多く、そのためドルの投資家が運用するとマイナス金利の他国の国債を買っても高い運用利回りが確保できる。( ↓ グラフ 参照)

 しかし、この高利回り、あくまでドルの余剰資金を運用に回せるところだけが得られるメリットであり、例えば日本やドイツの銀行が円建て、ユーロ建てで購入しても損をするだけ。マイナス金利だから、国庫にお金を払うだけになってしまう。ただ、日本やドイツの銀行は日銀やECBに一定額の担保を置いておく必要があるため、コスト覚悟で買わなければならない。

*イタリア国債などを買えばユーロ建でも高い利回りは得られるが、信用リスクが高いため価格が下落(利回りが上昇)するリスクも高い。

 それだけ世界中でドルは大人気で取り合いになっている、という証。どの国も喉から手が出るほどドルが欲しいのだが、経済力、信用力の劣る国ではなおさらだ。マネーマーケットだけを俯瞰すれば、まだまだドル至上主義は続いているのである。更に言えば、ドル建で借金をしている国が多いので、自国通貨がドルに対して値下がりすれば、借金の額が膨らむことにもなる。そして国のデフォルトのほとんどがこのドル建の債務を返済できずに起きている。アルゼンチンなどはその最たる例であろう。(韓国なども同様)

 ドル需要を推し量るための材料として、この「ベーシススワップ」は指標性が高いがまだまだ一般には認知されていない。この「損切丸」のnoteで初めて知った方も多いのではないか。代わりと言っては何だが、日本やドイツなどのメジャーな国債のマイナス金利に着目すると良いかもしれない。マイナス金利がどんどん深くなる時はベーシススワップ市場でドル・プレミアム拡大を伴っている可能性があるからだ。

 筆者もキャリア上このベーシススワップに関わる時間が長かった。「リーマンショック」の時もそうだったが、このドル・プレミアムがデフォルトの鍵を握ると言っても過言ではないからだ。デフォルトが絡むと市場は激動する事が多い。特に対マイナー通貨の場合は、流動性の低さから極端な動きをすることが多く、暴力的に動くことさえある。

 ベーシススワップマイナス金利から想起されるドル・プレミアム拡大。この金利市場からのメッセージを頭に入れておくと、見える風景も変わって来るだろうし、売買や投資の判断を誤らなくて済むかもしれない。

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