デジタル通貨

「ワールド・デジタル通貨構想」Ⅱ ー リクスバンク(RIKSBANK、スウェーデン中央銀行)がデジタル通貨「eクローナ」の実験を近く実施へ。

 2/20にスウェーデン中銀であるリクスバンク(RIKSBANK)がデジタル通貨「eクローナ」の実験を近く実施すると発表した。現在日銀とECBが中心となって研究グループを立ち上げているが、まずは比較的金融規模の小さいスウェーデンクローナでパイロットショップ的に試してみよう、という事だろう。やり方は「トークン型」「口座型」に分かれるが、詳細については、1.19稿.「ワールド・デジタル通貨構想」 ー 日銀のワーキングペーパーから論点を紐解いてみる。 ↓ をご参照願いたい。

 ①フェイスブック(FB)による「リブラ」が頓挫したこと、②「デジタル人民元」の脅威が差し迫っていないこと等、大分時間的余裕が出来ているようだ。これらの実験を重ねて実用段階へのステップを踏むつもりだろう。

 関連記事も出ているが、おそらく「トークン型」が主流になっていくのだろう。*「口座型」は民間銀行の預金・決済業務のほとんどを中央銀行が奪ってしまうことになりかねず、自由主義諸国では敬遠されそうだ。(中国なら可能かもしれない)

 それでなくても日本と欧州の銀行はマイナス金利などで収益力低下に喘いでいる。ここで更に預金・決済業務まで奪ってしまうのはとどめを刺すことになりかねない。日本の銀行全部を「日本銀行」にしてしまうなら可能かもしれないが、それも現実的ではないだろう(実はアリかもしれない?)。

 さて、ここでそもそも論に立ち返って見たい。なんで「デジタル通貨」が必要なんだっけ? - 大前提は「顧客の利便性」を高めること、そして送金手数料などのコストを引き下げること...???

 もともとこの議論が起きたのは、FBなどのIT関連企業が銀行業務に乗り出してくることに危機感を覚えた銀行勢(含.中央銀行)の反発だ。送金、決済などの業務を安い手数料で引き受けられたら、それこそ銀行業存続の危機である。「リブラ」を潰した今、**銀行勢が取り組む「デジタル通貨」「コスト引下げ」のモチベーションが本当にあるのだろうか?

 **日本には「全銀システム」という、世界に類をみない決済システムがある。セキュリティーなど、ある意味優れた部分もあるがかなりコスト高。これが「他行振込800円」などの異常に高い手数料の元凶とも言われている。「損切丸」は母体である全国銀行協会(全銀協)関連の理事会に外国銀行代表として出たことがあるが、決算書を見てびっくり。2年毎に民間銀行から「天下り」してくる役員に〇億円の退職金が...。更にシステムは日本の某大手電気機器大手企業が単独受注しており、委託手数料はかなり高かった(→その後海外企業も入れて入札制にしたところ、受注額が1/4近くに減ったらしい)。これが「コスト」の正体である。

 それでなくても日本もヨーロッパも収益悪化に苦しむ銀行は「口座維持手数料」「マイナス金利転嫁」を本格化させている。そんな中、送金手数料の引下げなど本来の「デジタル通貨」導入の目的が果たされるとはとても思えない。銀行が「仲介機関」として絡んでくる以上、「高い手数料」が引き下げられることはないのではないか。

 おまけに通貨偽造やハッキングを防ぐための「ブロックチェーン」技術も銀行単体で開発・運営することは無理だろうから外部委託になる。ありそうな展開としては、また専門の「別会社」をつくって法外な手数料を払い、役員には銀行出身者が..。こういう「輪廻」(日本での「習わし」)はもう止めにしてもらいたい。

 「デジタル通貨」が始まったら800円だった送金手数料が2,000円に、なんてのは勘弁願いたい。そこは預金者や銀行顧客もよく監視しておくべきだ。それでなくても政府による「新通貨切換」的な措置で今持っているお金の価値を切り下げるのではないか、という不安もある。苦しんでいる銀行や国の為にこれ以上お金をむしり取られるのは堪えがたい。

 「デジタル通貨」にはインフレ対策の投資価値を期待していた「損切丸」であるが、どうも「逆の目」も見えてきている。銀行業界以外が手掛けないなら「顧客の利便性」に返ってくる可能性は低い「自己資産防衛」のためにもメリット、デメリット、両面から注意深く見ていく必要がありそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?