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覚悟を決めた?財務省・日銀

 12/20(共同) "政府が2024年度の当初予算案で、借金である国債の利払い費の算出に使う想定金利を23年度の1.1%から1.9%に引き上げる方向で調整。引き上げは17年ぶり。日銀の金融政策の修正を背景に、長期金利が上昇傾向にあるのを反映する。これを要因に国債の返済と利払いを合わせた国債費は23年度当初の25兆2503億円を上回り、過去最大を更新"

 昨日(12/19)の日銀政策決定会合で何~にもなかったことからはしゃいでいるドル円、JGB、そして日経平均。まあ短期トレードとしては「買い」が正解だったのだろうが「投資」となるとどうだろう。17年振りに「国債想定金利」を@1.1%→@1.9%に引き上げた ↑ という記事が気になる。年間で換算すれば▼10兆円近い出費増だ。

 JGB1,200兆円×(1.1%-1.9%)=年間▼9.6兆円

 「財政健全化至上主義」を標榜する財務省としては、これ以上税・社会保険料の徴収増を見込めない以上、「国債費」増加を盾に歳出削減を図りたい思惑もあろう。実際医療費を巡っては本体部分の増額は認めたものの薬価を含めた全体は引下げている。今回の「強制捜査」も合わせて考えると、政治サイドに「お金」の警鐘を鳴らしているとも読める。もう振る袖は無い。

 今日も朝からJGBが「買い」で飛ばしている「日本金融村」と財務省・日銀の ”阿吽” の呼吸を考えると国内勢が主導しているとは到底思えない。 「JGB」と「ドル円」をぶん投げているのは誰? ー オモチャにされる「日本」もう懲り懲り|損切丸 (note.com) から察するにドル円もJGBも「キャリートレード」に飛びついているのは ”黒船” ≓海外ファンドだ。1月会合まで何もないならその間の「キャリー」も取りに来るのが彼らの習性。

  ” Sell Japan!  Sell JGB!! " 

 1994年10月に英銀に転職して最初に仕えた金利のマネージャーが毎朝こう叫んでいた。当時は10年JGBはまだ@2%台だったが、それでも米国債が4~5%時代だったからかなりの「低金利」。彼は元々2桁金利のGILT(英国債)のトレーダーだったのでJGBを売りたくてたまらなかったのだろう。

 欧米の金利トレーダーの反応は9割方同じJGBを「買い」(金利低下)から入るのを見た事がない。だが*繰り返し邦銀の「お金」の壁に阻まれ連戦連敗「不思議の国・日本」の完成である。彼らの "物差し" ではそんな金利の低い商品に「投資」するなど考えられなかったのだろう。だから「損切丸」がいくら説得しても無駄(苦笑)。

 これの真逆がポンドの短期金利。筆者が担当した時は政策金利が@10%で1年が@15%という「超・順イールド」1,000億円のポジションで年間+5%のキャリー=+50億円も儲かりそうなのだから「買い」体質の日本人は手が出てしまう。だが結果は+1~2%もの急速な「利上げ」が続きあっという間に「ネガティブキャリー」=大損をこいた。トドメは1992年9月の「ポンド危機」O/Nが@100~200%にぶっ飛んで筆者も半年分の収益を1日で失ったが、その後邦銀には「ポンド禁止令」が布かれたと聞く(筆者は幸い続ける事ができた)。 "知らない" というのは怖ろしいものである。

 その後数年経って彼らが到達した結論は「JGBは売ってはいけない」。ほぼ「禁止令」に近いがそれだけ「不思議の国・日本」は理解しがたい部分が多い。それが今やJGBの「キャリートレード」に走るとは...。世代交代もあるのだろうが、時代も変われば変わるもの。隔世の感がある。

 ただ、直近のテール(最高利回り-平均利回りの差)が長い超長期債の入札からも国内勢が及び腰なのは明らか米国債もそうだが中央銀行と密接に繋がっているドメ(Domestic、国内)の銀行と闘っても勝てる見込は薄い。長年色々な金利を手掛けてきて筆者が得た "教訓" でもある。

 前総裁の呪縛で動きが取れなかった日銀だが、この「国債想定金利」引き上げから察するに財務省から "フリーハンド" を得たと考えていい。**10年ぐらい前から「海外勢の損は国内勢の利益」(逆も然り)という発想が財務省・金融庁・日銀の間で共有され始めている。

 **JGBで言えば、海外勢が買い漁った所で「利上げ」を持ち出せば、彼らの「投げ」を国内勢が拾うことになる。 ”ゼロサム” の市場原理。もう ”オモチャ” は御免という訳だ。最近高金利を売りにする「仕組債」の販売を締め付けているのも同じ理屈である。

 ドル円日経平均もそうだが、筆者は海外勢がブンブン振り回すのはほとんど無視している。どうせ買った分売ってくるのだから市場への需給インパクトはトントン。それより大事なのは国内勢がどう動くか裏では財務省・日銀がタクト(指揮棒)を振っている。そこを見誤らないこと。

 おそらく海外の「新世代」でも「不思議の国・日本」を理解している向きはほとんどいない。特にこの強烈な「同調圧力」は自主性を重んじる欧米人には到底理解できない。だから今回日本人は彼らの「損切り」に巻き込まれない事が肝要。今度は「JGB買い禁止令」に追い込みたいそれで初めて日本に「お金」が残ることになる。おそらく当局もその事は意識している。少し "斜め" から相場を見てみる工夫がいるだろう。

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