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AI(人工知能)の発展に欠かせなかったボードゲーム(アブストラクトゲーム)での人とAIの真剣勝負、そして未来へ

 AI(人工知能)に関する書籍でAIの進化の歴史について記述があると、かなりの確率でチェス、将棋、囲碁といったアブストラクトゲーム※のチャンピオンとAIとの対戦について触れられています。
 ※アブストラクトゲームとは、偶然が関与せず、ゲーム内の全ての情報が公開され、ルールが明解で解釈の余地がないゲームを指します。二人零和有限確定完全情報ゲームと同義。


人とAIの対戦の歴史

・公式の記録ではないようですが、1997年、コンピュータオセロのロジステロが世界チャンピオンの村上氏に勝利。
・1997年、IBMのスーパーコンピュータ「ディープブルー」が当時のチェス世界チャンピオンに勝利。
・2012年、将棋プログラム「ボンクラーズ」が米長邦雄永世棋聖に勝利。
・2016年、ディープマインドが開発した囲碁プログラムのアルファ碁がトップ棋士の李九段に勝利。

 過去において、発展途上のAIがアブストラクトゲームの世界チャンピオンに勝つことで、大きく進化していることを世に示すという意義があったのだと思います。しかし、人のチャンピオンとAIの真剣勝負は現在では行われていません。一度AIが勝ってしまうと人を大きく超えるスピードで進化し続けるため、人がAIに勝つことはほぼ不可能になってしまいます。アブストラクトゲーム以外でもAIは現在進行形で進化し続けており、様々な分野で人を超えたのではないかと言われることが増えてきています。発展途上のAIが何とか人に追いつこうとするステージから、AIと人が共生するための最適解を模索するステージにシフトしたのかと思います。
 上述の通り、オセロ、チェス、将棋、囲碁という有名アブストラクトゲームで既にAIが勝利しており、アブストラクトゲームにおいても人とAIが対立する必要は無くなったのかと思います。

人を超えたと言われるAIの弱点とは

 アブストラクトゲームの最後の砦となっていた囲碁は他ゲームと比べ可能な局面数が多く、人の世界チャンピオンにAIが勝つのはまだまだ先のことと考えられていました。しかし、2016年3月、6000万人が視聴するなか、Google傘下のディープマインド社が開発したアルファ碁が囲碁の世界チャンピオンである李九段に勝ち、AIが人を超えたのではないかと全世界に衝撃を与え、世界的なAIブームをもたらしたと言われています。
 しかし、その裏で李九段がアルファ碁に圧勝していたものがあります。対局に使用された消費電力です。人間の脳は1日に600kcal消費すると言われており、電力換算するとたった20Wです。一方、アルファ碁は本対局に25万Wを消費したと言われています。1万2500倍の差があり、人がいかに効率良く思考することができる有能な生物であるかがわかると思います。
 人は過去の経験等から大局観で物事を判断することが出来、必要と思われる探索を絞り込むことで短い時間で善と思われる手を判断することに優れています。一方、AIは徹底的に局面の探索と評価を進めることで時間をかけて最善手を模索することに優れています。どちらが優れているということではなく、人とAIは共に一長一短があり、双方が適切に補いながら共生していくことが重要となります。

人とAIの真剣勝負の未来

 アブストラクトゲームにおける人とコンピュータの対立の歴史を終えた今、人とコンピュータの共生に関する最適解を模索するためのアブストラクトゲームが必要であると考え、公式戦ルールを整えたのがUNOZEROというボードゲームです。

イメージ動画(32秒)

公式戦ルール

 UNOZEROはサッカーをテーマとしたアブストラクトゲームであり、最大の特徴は、非収束の無限ゲームを各プレイヤーに持ち時間を設定することで確実に収束させている点です。「先を読み最善手を模索する」という一般的なアブストラクトゲームの戦術に加え、時間に関係する「早く考えをまとめること」や「時間を稼ぐこと」も重要になります。時間と無限ゲームの融合により、スピード感のあるゲーム展開に、人ならではの高度な心理戦が加わり、これまでにない新しいアブストラクトゲーム体験を実現しています。また、公式戦ルールにてあらゆるアイテムの持ち込みを許容していることも大きな特徴です。短時間で善を判断できる人と、長い時間をかけて最善手を模索できるコンピュータの共闘における最適解が必要となります。
 キャッチフレーズとして、「この世界に「第三の知能」をもたらすのはあなたかもしれません」というフレーズを使っています。第三の知能とは、現在地球上には存在していない、人やAIを超える、時間をも克服する知能のことを指しています。真剣勝負の結果、やはりAIが勝つのか、人が巻き返すのか、あるいは新たな第三の知能が発現するのか、私自身全くわかりません。

ボードゲームUNOZEROのこれから

 UNOZEROはアブストラクトゲーム上級者のためのボードゲームとして少しずつ認知度をあげていきたいと思っています。このボードゲームは未完成です。「UNOZEROの攻略」という、人類史上最難関のラストピースについてはプレイヤー様に託すこととしました。そのラストピースの模索のための真剣勝負の場として公式戦を検討しています。
 少しでも興味をもって頂いた方には是非とも下記記事を読んで頂きたいと思います。イメージ動画(32秒)、ゲーム概要、遊び方(動画あり)、公式戦ルール、勝ち方、時間の計り方、「第三の知能」について、開発のきっかけ、今後の展望、販売チャネル等ボードゲームUNOZEROの全てがわかる記事となっています。

参考文献
・今井豊治「AIの未来予想 2080年代のAIと企業経営」現代書林、2023年
・谷岡悟一、和久利智丈、平岩宗、上田智之「「AI思考」は武器になる」クロスメディア・パブリッシング、2024年
・瀧澤武信、松原仁、小谷善行、鶴岡慶雅、山下宏、金子知適、保木邦仁、伊藤毅志、竹内章、篠田正人、古作登、橋本剛、コンピュータ将棋協会(監修)「人間に勝つコンピュータ将棋の作り方【あから2010を生み出したアイデアと工夫の軌跡】」技術評論社、2012年
・山本一成「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?」ダイヤモンド社、2017年
・倉洋輔「AIに仕事奪われると怯える人に知ってほしい心得その限界と可能性を知ったうえで何ができるか」東洋経済ONLINE、2022/01/28/ 20:30、AIに仕事奪われると怯える人に知ってほしい心得 その限界と可能性を知ったうえで何ができるか | ワークスタイル | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)



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