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受験生村の記憶

プノンペンから東京に出張に来ています。この度の出張、なかなかホテルが取れなかったので、出張前半はアパートを借りたのですが、後半戦の今日からホテルに宿を移しました。このホテルはここ3,4年ほど出張の度に使っていますが、今回にかぎってはホテルの客層がいつもと少々違うようです。

団塊ジュニア世代は残念世代

いまはZ世代とか、ちょっと前はさとり世代とかゆとり世代とか、いろいろありますが、わたしは団塊ジュニア世代の人間です。別名残念世代と呼ばれるやつに属しています。何が残念なのかといえば、親の世代がベビブーマーでその子らも多いときたものだから、受験戦争大変、就職超氷河期が相まって就職戦線異常ありでこれまた大変だったのです。残念と呼ばれるのは「失敬だわ」と思っていたのですが、どちらかといえば”大変世代”ですよねぇ。

親同伴のホテルの大学受験

さて、いま、東京西部の某市にあるホテルにいます。今回の出張は10泊というスケジュールですが、前半6泊は職場から近いいつものホテルを予約できませんでした。まさかの満室、そして宿泊費が恐ろしく高騰。インバウンドがどうこう言われているアフターコロナですが、こんな寒い時期に外国人は来るんかいね? と思ったら、私立大学の受験シーズンだった〜、というのが理由。2月はじめといえば、確かに受験シーズンですね。ホテルのチェックインも行列していました。のですが、行列の様子がいつもと違うんです。母親と子のペア。ほほぅ〜、親が受験に一緒に来るんですね、いまどきの受験は。親のケアが手厚いですね。残念世代の親たち、団塊世代にはなかったことですね。

平成にあった代々木の受験生村

「受験生がホテルに親同伴だったよー」と友人たちに話したら、同世代の友人が「わたしたちの時代の子育ては雑だったよね」という切り返し。うん、そうなのかも、我が家は確かに。大学受験といえば、もう30年くらい前の話になりますが、わたしは首都圏と京都の私立大学を5校ほど受験したので、日程的に都内に9泊以上しなければなりませんでした(京都の大学も東京会場受験あり)。裕福な家庭ではなかったので当然ホテルなどNG。受験生のわたしは、母がラジオで情報を仕入れてきた「受験生村」というところに単身10日間放り込まれたのでした。1964年の東京オリンピックのときの選手村が代々木(参宮橋駅)にあって、数十年経ても健在の建物は受験のシーズンだけ受験生村と化したのでした。知っている人いるかなぁ。というか「泊まったよ」って人にぜひ会いたい。

連夜のお菓子パーティー

受験生村では、たしか6人から8人部屋だった気がします。もちろん、全国各地から集った受験生たちが、知らない者どうしが、しばし同居するんです。わたしは、北海道、東北、関西、など全国各地の知らん子らと一緒に寝泊まりしました。箸が転がってもおかしい世代の女子が集まるとどうなるか? もちろんすぐに仲間になるでしょう。備えられていた自習室で一応受験生らしく勉強はするものの、部屋に集まっては連夜のお菓子パーティー、寝る直前までおしゃべりしまくって真面目な子に叱られる、そんな10日間でした。お風呂は別棟の大浴場しかなかったので、初対面からみんなで裸の付き合いというのもすぐに親しくなる要因になったのかもしれないですね。いい歳して、シャンプーの泡でツノ作って遊んだしね。

夢破れた選手の霊が出るとか?

「そういえばここって、1964年の東京オリンピックの選手村だったんだよね?」という会話から、「ねぇ、メダル取れなかった夢破れた選手が怨念になったりして幽霊とか出るんじゃない? 」すぐなんでも笑い話にしたい世代は、入試前日でも勉強もせずに、ゲラゲラ笑っていました。さすがに何百人も宿泊していたら同じ大学を受験する人も多数。声をかけあって、朝、一緒に受験に出かけたりもしました。なんというか、田舎者がひとりで上京して、複雑怪奇な電車路線図を見ながらひとりで受験に行くという大きなハードルに立ち向かっているんだけど、仲間がいるし、極度の緊張を感じることもない。プレッシャーなども忘れてしまう、すばらしい環境だったな、と今になって思います。というのは、今日ホテルで見た受験生たちが、母親に見守られながらプレッシャーを抱えたようなちょっとつらそうな顔をしていたからです。

がんばれ受験生!

かつての平成時代の受験戦争とは時代が変わって、少子化、大学によっては定員割れなんて言われている時代。いろいろな方法で大学入試に挑めますが、あえて一般入試という形で試験を受けようとしているこの時期の受験生たちは、えらいと心から思います。どうか、プレッシャーに負けず、親や家族のためではなく自分のためと思ってがんばってほしいと思っています。もしダメでも人生なんて変わらない。そして合格してもそれで成功ではない。これまで勉強してきたんだから前日はリラックスして、幽霊がでるとかバカ話するくらいでいいんじゃない? がんばれ受験生!

受験生村で知り合って連夜のお菓子パーティーをやっていたメンバーのうち数名は、その後大学に進学してからも卒業してからも時々会ってお酒を飲んだりしました。何名かはいまでも繋がっています。わたしにとっての大学受験は受験生村との思い出に直結しているのです。今はなき、受験生村。親が一緒だったらこんな友人もできなかっただろうなぁ。


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