人生は最高の花火

友人のミニサイズ版みたいな子どもが、私の子どもと手をつなぐ。なんだか、変な気持ち。時空が歪んで、ぶわっと何十年も過ぎたようだ。

学生の頃は訳もなく一緒にいた私たちも、なかなか集まることができなくなった。気を抜くといつも数年が経っている。

今年は、湖畔の小さな花火大会へ。
曇天の生温い空気の中、砂浜にレジャーシートを敷く。浴衣を着た子ども達が、横一列に並んで座っている。波の音がすぐ傍で聞こえ、スナック菓子の香りが鼻をかすめる。

とても花火大会とは思えない、ゆるやかな雰囲気に心がほぐれていく。子ども達のシルエット越しに、花火が丁寧に打ち上がる。

焦りと葛藤を抱えながら、遠くの花火を見上げていたあの頃は、毎日が無い物ねだりで満ちていた。

今、すぐ傍で上がる小さな花火を、愛でるように見つめている。
「よるはね、くらいから、はなびがあかるくしてくれるんだよ」
振り返った息子が笑顔で私に囁いた。

#旅する日本語 #心安

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