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楽園のカンヴァス / 原田マハ

タイトル : #楽園のカンヴァス
筆者: #原田マハ
出版社 ‏ : ‎ #新潮社 (2014/7/1)
発売日 ‏ : ‎ 2014/7/1
ページ数 ‏ : ‎ 350ページ

その本を選んだ理由

 美術を題材にした小説と知って興味を持った。「観察力を磨く 名画読解 」という本を読み、美術館賞が洞察力と観察力を磨くには最適と理解した。そのため、美術を知るきっかけとなる本が読みたかった。

最も印象に残ったシーン・一押しポイント

 早川織絵とティムブラウンのダブル主人公で物語は進んでいく。絵画の真贋を依頼されるというキュレーターらしい展開で話が進む中、二人で同じ物語を読んでいく。
 話の展開から、伝説の画商バトラーの正体がヤドヴィエの旦那のジョセフなのも、ティム・ブラウンが、トム・ブラウンの間違いではなく、最初からティムとわかって呼ばれていたのも、ジュリエットがヤドヴィエの子孫なのもわかってしまったので、終盤は「やっぱりねー。」って思ってしまった。
 伏線がわかりやすすぎるのと、日本の女性作家はロマンチストすぎるので、悪人が悪人じゃないっていうのとか、そういうのがあるにはあるけど、気にしなくてもいい。普通にプロットがしっかりしているので面白かった。
 ただ、ルソーが若い人妻ヤドヴィエと子供を作って、それがジュリエットっていうのは、昨今のパパ活や初老のお笑い芸人が若いアイドルと結婚しているニュースばかり見ているので、正直、歳の差なんてって思いつつも嫌って思った。ルソー(高齢の老人)とヤドヴィエ(若い人妻)がセックスする描写は不要だっただろう。血筋を大事にする日本人ぽさがあってそれが嫌だった。ただ、モデルをしただけだったら、そっちのほうが良かったが、まー、最後までやってしまうか。芸術家なら尚更。ピカソの夜会で、ルソーもちあげて、ヤドヴィエがセックスを許すって展開が、昨今の日本の芸能界でよくやる、芸人仲間がアイドルに「あいつ、いいやつなんだ!」って囲って結婚させるのと全く同じで笑えなかった。ここだけが気持ち悪かった。ピカソとルソーのやり口が「性・暴力団」と一緒だった。

今後の自分の行動や考え方の変化

 キュピズムは正直、苦手だった。この話を読んで、写実と違って「価値観の破壊」「新しい芸術」という側面でみると理解できなくはない。下手くそな絵をなん度も被せて書いていくのになんの意味がって思っていた。でも、目の前にある風景をそのまま描くことにも何の意味があるのか。芸術とはアートとは、彫刻や絵画などの芸術品そのものに価値があるのではなく、その芸術品が人間に与えるインスピレーションにこそ価値がある。
 つまり、定量化しつつあった芸術界に「アートの本質はそこにない!」と指摘したのがピカソだったのだろう。
 ただ、アンリ・ルソーもマティスもただ、アカデミックな絵を描けなかったからそこで勝負するしかなかったっていうのは絶対にあると思う。ピカソは基礎があったけど、抽象画の画家全員がわかってかいていたかは疑問は大きい。ただ、キュピズムがあったからこそ、ポップアートがうまれ、漫画がうまれた。そういう点では評価しないといけない。

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