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UTOPIA #18 隠された海辺の街


 碧玉の瞳を持った魔女が人やか弱い獣達を生かすためにつくった幻の海辺の街。禍々しい空は、敵対的存在が近寄る事のないよう、魔女が細工したのだろう。サリーと羊は旅の道中、偶然その扉を開いた。彼らには敵意や悪意が無かったため、海辺の街は拍子抜けするほどあっさりと彼女らの前に姿を現した。

 裂けた入り口からは冷たい夜の海風が吹き寄せる。海面は凪いでいた。遠くに街灯は見える。しかし人の生活の気配は感じ取れない。波一つない箱庭の世界から、サリーは物寂しさを感じた。

「もしかしたら、ここには沢山の人や優しい獣が住んでいるかもしれないね」と彼女は言った。

「どうだろう、もう随分時間が経っているように見受けられる。この街をつくった魔女もとっくに死んでいるようだ」と羊は言った。


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