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UTOPIA#11 夕立の悪魔


 小紫色の積乱雲から刃物のように鋭い雨粒が地上に叩きつけられる。夕立の悪魔が現れる時、空は真っ赤に染まって、死を孕む雨風が地上を薙ぎ払った。

 サリーは小さな黒い傘で身を守り、その致死的な暴威に輝きを見出していた。 それがここを過ぎ去った時、この土地には水と破壊の痕跡だけが残る。きっとその景色は清々しく美しいのだろう。

 少女は風に掻き消されないよう、傘を強く握りしめた。


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