見出し画像

映像作品のミックスバランスとダッキング


自己紹介

皆様お世話になっております、株式会社okidesignの沖田純之介です。
私の自己紹介は以下にリンクしてあります。

ミックスバランス

Netflixやサブスク配信と多くの時間を過ごしてきましたが飽きがきて、ツタヤディスカスでトーキーから70年代の映画作品を掘る事にはまってます。
そんな中、たまたまNetflixで新作を見たら今までと違う事に気付きました。ミックスバランスが、イヤホン向けになっていたのですね。↓この作品です。パンデミック下で映像制作もリモート作業が進み、ディレクターやプロデューサーが、自宅でイヤホンチェックする事が多くなりました。スピーカーで聞かなくなったのですね。ミックスを行うエンジニアも自宅作業が増え、イヤホンかヘッドホンミックスが多くなりました。

イヤホンチェックの弊害

ミックスエンジニアはセリフを聞かせる所、音楽を聞かせる所、効果音を聞かせる所と音量操作をしていき、映画だと20dB程音量を上げ下げしてます。
これがイヤホンチェックになると、全部の音が良く聞こえるので、音量の上げ下げが気になり音量が平坦になります。音楽のダッキングをあまりしなくなったのです。

ダッキングとは、セリフを聞こえやすくする為に、音のバランスを大きくしたり小さくしたりする事で、素早く音量を上げ下げするアメリカ作品から来た言葉です。音楽のフェーダーが凹凸みたいな動きをします。日本では素早く上げ下げしないので、「フェーダーを撚る(よる)」と言ったりします。

WebMovieミックス(ホームシアター向け)

今までのネットにあがる映画作品、特にNetflixはこのようなバランスが多かったです。M(音楽)、D(セリフ)、Na(ナレーション)、Se(効果音)。
スピーカーがしっかり調整されたスタジオでミックスするとこういうのが出来上がります。

画像1
WebMovie

TVShowミックス(日本のテレビやイヤホン向け)

日本のテレビ番組は大体これで、MAミキサーが多く取るバランスですね。
水色の音楽のバランスの取り方が変り、セリフより音楽が小さくなってます。イヤホンチェックだと音楽に低域から高域まで全てが聞こえるので、音量を大きくしなくても聞こえてしまうからなのですね。
それに、日本は家庭のテレビ音量が小さいので、このバランスにしないとセリフが聞こえにくいのです、さらに音楽を効果的に使う事が少ないので、ずっとBGM扱いだったりします。

画像2
TVShow

劇場公開作品のミックス

これが劇場作品になると大きな音が出せますし、音量も演出の一つなのでこうなります。音楽音量が20dBくらい変わるわけです。
この弊害はテレビやイヤホン視聴だとセリフが小さすぎ音楽が大きすぎて、非常に聞き取りづらくなります。

自宅が大きくテレビの音量が大きい海外では、こようなバランスにディレクターも慣れていて、日本的なTvShowミックスだと、「きちんと仕事してるのか?」と言われます。これは私が経験ありです。

画像3
Movie

CM広告のミックス

CM広告の場合はどうなるでしょうか。テレビで流す為のCMはこのようなミックスバランスで、音楽は平均して小さいままが多いです。全体音量が小さいのは-24LKFSの納品ラウドネス値にする為で、大体この音量で作れば仕上がります。
音楽がオリジナル作曲の場合は音量差をつけられることが多いです。(詳しくは後述)

画像4

WebCM広告ミックス

Web向けになると全体が平坦になるのです。小さいスピーカーやイヤホンで聞く為ですね。
音楽が著作権フリーになることが多いので、音量差が付けにくいです。(ここも後述)

画像5

YouTubeミックス

YouTubeはミックス作業をしてないものが多く、編集時に音量調整して終わりが多いですが、イヤホンで聞く分には問題ないです。
ちなみにNHKの番組でもMAしてないものが多くありまして、このようなバランスが多いです。

画像6

作曲と著作権フリーの音楽

ミックスバランスを大まかに書きましたが、作曲した音楽と著作権フリーではBGMバランスが違う事を書いておきましょう。
映像作品での作曲は、映像やセリフ、ナレーションのタイミングに合わせて作曲していきます。例えばオープニングで盛り上がり、Aメロで静かに。この時にセリフやナレーションが入ります。ナレーションが終わりかけると、エンディングで音楽が盛り上がって来るのです。
このように、映像作品を作り慣れた作家とエンジニアが作る場合では、仕上げのミックスの時にフェーダーを上げ下げしなくてもよい事が多々あります。
著作権フリー音源の場合は違ってきます。音楽音量が全体的に一定が多いので、フェーダーを上げ下げするか、そのまま一定か。という選択になります。
イヤホンチェックになると音量差を必要としなくなるので、一定で良くなってくる訳ですね。

実例紹介

ここで実例をご紹介します。この作品シリーズを担当させて頂いてますが、自社スタジオでダイナミックレンジをWebMovieの形でミックスしましたが、「イヤホンで聞く人が多いので、TvShowミックスで修正お願いしたいです」と修正ミックスをしました。


その逆をもご紹介します。映画志向の監督で、ダイナミックレンジ広めに求められました。ウェブ公開ならば、TvShowミックスが良いのではと提案しましたが、WebMovieでミックス修正しました。


この映画「WE ARE LITTLE ZOMBIES」の場合は予算が一般映画規模だったので、MovieミックスとWebMovieミックスを作りました。
アマゾンプライムはWebMovieミックスです。

画像7

こちらのFM999もWebMovieのバランスです。

スクリーンショット 2021-08-14 16.06.35

まとめ

このように、その作品で、「音楽がどこまで語っているか」で音楽音量が変わってくる訳ですね。このようにミックスバランスだけでも、これだけの方向がありますので、ミックス前には打ち合わせが必要でしょう。
弊社では、お客様が必ず納得行くものを納品しております。音が大好きなマニアックな方からの発注をお待ちしております!


追記

とある映画をみて(聞いて)驚きました。音楽やBGMが全くダッキングされておらず、ずっと小さいままなのです。
なにかの事故でしょうか?それとも予算がなかったのでしょうか?
しかしエンドロールには大勢名前がでて、ダビングミキサーも出ておりました。謎が深まるばかりです。
アフレコも音の馴染みが下手(失礼します)だったので、恐らく技術レベルが低いポストプロダクションに任せたのではと想像しております。
みなさんも悪い例としてこの映画を聞いてみてください!


それでは記事はここまでです、ハートマークのクリックとXのフォロー、投げ銭など頂けますと喜びます!!是非よろしくお願いいたします!

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 500

サポート頂けますと、書くスピードが上がります、 皆様是非よろしくお願いいたします。 これからも、より為になる記事を書かせて頂きます。