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No.733 この世なる間(ま)は楽しくをあらな

「バロンドール」(Ballon d'Or)は、1956年(昭和31年)に創設された「世界年間最優秀選手賞」のことで、「黄金の球」の意味に相応しく受賞者には黄金のサッカーボールをかたどったトロフィーが贈られています。
 
過去最多の7回を誇るのはリオネル・メッシ(2009年・2010年・2011年・2012年・2015年・2019年・2021年)です。驚くのは、2位の年が5回(2008年・2013年・2014年・2016年・2017年)もあったことです。アジアの選手にもノミネートされた人はいますが、男性の受賞者は一人もいません。正にメッシのためのバロンドールと言えそうです。調べていて、眠気が吹き飛びました。

2022年カタールW杯で、メッシ率いるアルゼンチンは、13日、準決勝でクロアチアと対戦しましたが、彼のPKで先制するや、その後も圧巻のアシストを披露し3-0と勝利しました。

メッシは、ワールドカップで通算11ゴールを記録し、アルゼンチンの選手としては史上最多だそうです。また、先のクロアチア戦で、ワールドカップ25試合目の出場となり史上最多記録に並ぶそうですが、決勝で出場すれば、単独で史上最多出場選手となる見込みだといいます。 さらに、ワールドカップの4試合(2006年のセルビア戦、2022年のメキシコ戦、オランダ戦、クロアチア戦)でゴールとアシストの両方を記録した初の選手でもあるそうで、記録更新ずくめと言える世界的プレイヤーです。
 
11月22日、グループCの初戦となるサウジアラビア戦を前に、メッシは、
「おそらく、これが僕にとって最後のワールドカップであり、自分の夢を実現する最後の機会になるはずだ。本当に幸せで、心から興奮しているし、このワールドカップを楽しみたいと思っている」
と言っています。また、
「年齢によっても物事の見方が変わると思う。以前はそうしなかったけど、今は細部をより重要視しているのかもしれない。今はより細部にこだわって、今日を楽しむことが大事だと思うようにしているんだ」
とも語りました。サウジ戦には敗れましたが、1次リーグを突破して、決勝リーグに入ってからは接戦をものにし、決勝にまで進出しました。細部には神も宿って、彼の偉業を助けているのでしょうか?
 
メッシの言葉から、孔子(紀元前552年~紀元前479年)とその弟子たちの対話のことばを集めた『論語』「雍也第六」にある言葉を思い出しました。
『子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者』
「子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」
(孔先生は言われた。「学ぶことにおいて、その知識を知っているということは、勉強を好きな人間には及ばない。勉強を好きな人間は、勉強を楽しんでいる人間には及ばない。」と。)
 
勉強とは、狭義で言う学問にこだわらず、何の世界にも通じる意味でしょう。「知る」とは、知識の獲得・集積でしょうが、「好む」となると積極的な学ぶ意志であり、その上に置かれた「楽しむ」には、そうせずにはおられない内なる要求や感情を言うのだと思います。
 
35歳で迎えた5度目のW杯で、「楽しむ」ことをキーワードとしたメッシは、代表チームとして結果が出せず、厳しい批判にさらされ、悩み苦しむことも少なくなかったようです。長年重圧と戦い、重責を担ってきた彼が行き着いた思い、それこそが「楽しむ」の言葉に集約されているように思います。
 
今朝の準決勝で、フランス 2-0 モロッコという結果となり、決勝のアルゼンチンvsフランス戦は19日の午前0時(18日の24:00)キックオフの予定だそうです。又、アルゼンチンのメッシとフランスのエムバペは、今大会共に5得点を挙げています。こちらも決着がつくかもしれない楽しみの一つです。勝っても負けても「楽しみ」、「楽しませる」戦いであってくれることを大いに期待しています。
 
「生(い)ける者 つひにも死ぬる ものにあれば この世なる間(ま)は 楽しくをあらな」
大伴旅人(665年~731年) 
『万葉集』巻3・349番歌

※画像は、クリエイター・fm23🍦さんの、タイトル「W杯記事の振り返り記録【見出し画像と要約】」をかたじけなくしました。お礼申します。