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No.1184 ステキな作法

「中学生は、どんな言葉を心の拠り所にし、人生の指針にしているのだろう?」
そんな疑問に応えてもらおうと「私のおススメの言葉」を書いてもらいました。

「優しさは連鎖する」
小学校高学年の時の担任の言葉を今も覚えている人がいました。実際に、誰かのそんな言動を見かけると心が温かくなるので、とても好きな言葉だそうです。

「人生はチョコレートの箱みたいなもの。開けてみないとわからないから。」
アメリカ映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)の中の、母親の言葉です。何事もやる前から諦めずに、一度挑戦してみようという勇気を貰える言葉だとその生徒は受け止めていました。説得力のある言葉です。
 
 
「選んだ未来で笑っていたい。」
2021年12月にリリースされた「PRIDE」(Aぇ!group)という曲の歌詞です。
長い人生にはいろいろな選択があると思います。自分は「まぁ、いいっか。」で決めることがあるけれど、それは正しい判断ではないと思う。このままでは、未来で笑えないのではないかと思い、人生の生き方を教えてもらったと思っている歌詞だそうです。
 
 
「幸せの種はそこら中で配られているよ。」
2022年8月に公開された「Shiny Sunny Step」(甲斐田晴)という曲の歌詞の一部です。同じような日々の連続のように思えても、自分で気づけば、楽しいことが近くに溢れているのだと思い、前向きになることが出来た言葉そうです。遠くではなく、身近なことに目を転じることで得られる幸せの問いや答えは、確かにありました。
 
 
「頭は間違うことがあっても血は間違えない」
作家・中島敦(1909年~1942年)「光と風と夢」(雑誌「文学界」1942年5月号)の九章に見られる言葉です。実際は次の文章の中で使われています。

彼は殆ど本能的に「自分は自分が思っている程、自分ではないこと」を知っていた。それから「頭は間違うことがあっても血は間違えないものであること。仮令(たとえ)一見して間違ったように見えても、結局は、それば芯の自己にとって最も忠実且つ賢明なコースをとらせているのであること。」「我々の中にある我々の知らないものは、我々以上に賢いのだということ」を知っていた。

「青空文庫」より

生徒は、この名言をアニメ「文豪ストレイドッグス」(2016年、第20話)という物語の中で引用されていることに気づきます。そして、過ちをし、後悔することをやっつける言葉だと考えました。体には血があり、人には心がある。その弱い心をドン!と刺すような言葉だと感じたそうです。

「毎日やんねん ちゃんとやんねん
 体調管理
 そうじ・片付け
 あいさつ
 バレーボール
 『反復・継続・丁寧』は心地ええんや」
2012年から連載された『ハイキュー!!』(古館春一)という高校バレーボールの漫画です。北信介というキャラクターは、その言葉通りに毎日規則正しい生活をし、努力の末にキャプテンになれた人だそうです。その生き方を自分にも課しているようです。
「『反復・継続・丁寧』は心地ええんや」
のフレーズに心を震わせる若者にゆかしさを覚えます。毎日往生とでも言うのでしょうか。
 
以上のように、生徒たちの意見には、映画やアニメや漫画や歌詞などの中から心に響く言葉に出遭う体験が少なくありませんでした。どのような形ででも、自分の心にフィットして、人生や生活に取り込もうとする態度を好ましく思いました。渇いた喉をいやすように言葉を味わっている彼らの生き方は、私の学びでもありました。
 
 
しからば、お前のおススメの言葉は何なのかですって?
私は、詩人の吉野弘(1926年~2014年)が『吉野弘全集』(青土社)「自然渋滞」の中で述べた、次の言葉に強く惹かれています。
 「怏と快
 怏の中に快がある
 『怏』は、心楽しまぬこと
 『快』は、心楽しむこと」

「怏々と」とは不平不満を託つこと。人生の途上で、そんな気持ちにとらわれ滅入ることは誰にもあることだと思います。しかし、吉野弘は「怏」の中に「快」の文字が含まれることに注目します。「快」に気づけば、心を卑しくすることも、他者を呪うこともなく、むしろ心の自由を得られるのではないかと問うているように思うのです。ステキな作法です。


※画像は、クリエイター・◆ImageCreationLABO◆さんの、タイトル「早く春高バレー編が観たい。」の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。