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まとまらない企画会議、のち、寝かす。


上長: こんな案件相談があったから、ブレストしよっか?

メンバー: おもしろそうっすね!! やりましょうっ!!


2時間後。

上長 : とりあえずいろんなアイディアが出たけど、各自持ち帰ってブラッシュアップして、改めて詰めようか。出し(提案日)が7日後だから、明後日もう一回集まろう。





はい、こんなやりとり結構あります。


私は元々SIerにいたのですが、沖縄移住後にお世話になったデジタルエージェンシーや現職の広告代理店では、こんなやりとりが多々あります。

で、さっきのケースだと、次の会議でメンバーが一同に会しても、、十中八九、纏まらないんですよね。しかも、これといったブレークスルーするアイディアも出てきません。


挙句、期限が迫ってくるので、最終的には、予定調和で皆が納得できるゴールに当て込む作業がひたすら進みます。そんな経緯で生まれる企画書ってやっぱり、何かときめかないんですよね。


「あぁ、これね。」 みたいな。




なんなら、これで勝てるとか、そのアイディアの説得力・インパクトみたいなものを、関係者で言い聞かすような雰囲気・納得感の強制が暗黙の内に始まります。。これはこれで、組織で一つの成果物を出す、有限の中で何かを生む成約上、必要なものかもしれません。



ただ正直、こういったプロセスが続くと、質も然ることながら、時間ばっかり食って、すごい不効率なんですよね。


質も悪い、時間もかかる、ってこれ最悪じゃないっすか。



当初、「おもしろうそうですねっ!」ってなってたメンバーのモチベーションも下がってきて、こんな類の会議を重ねていくと、精神衛生上もよろしくないわけです。結果、いいアイディアなんか出ように出ません。


まさに、負の企画スパイラル。こういうのがコンペとかで連敗が続く時の理由だったりするんですね。




さて、話を元に戻します。

上長は当初、「ブレスト」と言ったので、一発目の会議には【結論】を求めてなかったのかもしれません。端からアイディアを出し切る目的でしょうから。


しかし、いわゆる、寝かした後の2回目の会議に何か意味はあったのでしょうか??



おそらく、上長が考えているフローはこんな感じ。


1回目でブレスト、出し切る

1回寝かす。各自ブラッシュアップ、持ち寄る

2回目の会議で企画内容を詰めて、方向性FIX。

アウトラインを描いて、各自役割分担。

企画書作成



この流れ自体はごく自然と言えます。

しかし、この負のスパイラルの要因は、1回目のブレストを始める時点にあります。


それは、メンバー間における、ゴールと当事者意識の欠如です。


つまり、ブレストの前提意識の問題ともいえます。


しかし、ブレストってお題も周知せず、結論を出すのではなく、様々な意見を出し合う、みたいなのが前提でした。


かなり粗い定義でしたので、まず、ブレストのおさらいです。


ブレインストーミングの4原則 

①判断・結論を出さない(結論厳禁)

自由なアイデア抽出を制限するような、批判を含む判断・結論は慎む。判断・結論は、ブレインストーミングの次の段階にゆずる。ただし可能性を広く抽出するための質問や意見ならば、その場で自由にぶつけ合う。たとえば「予算が足りない」と否定するのはこの段階では正しくないが、「予算が足りないがどう対応するのか」と可能性を広げる発言は歓迎される。

②粗野な考えを歓迎する(自由奔放)

誰もが思いつきそうなアイデアよりも、奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアを重視する。新規性のある発明はたいてい最初は笑いものにされる事が多く、そういった提案こそを重視すること。

③量を重視する(質より量)

様々な角度から、多くのアイデアを出す。一般的な考え方・アイデアはもちろん、一般的でなく新規性のある考え方・アイデアまであらゆる提案を歓迎する。

④アイディアを結合し発展させる(結合改善)

別々のアイデアをくっつけたり一部を変化させたりすることで、新たなアイデアを生み出していく。他人の意見に便乗することが推奨される。

※wikipediaより抜粋 「ブレインストーミング」



やはり、(結論厳禁)が前提のようです。
てか、研修とかでもそれって教わりますよね。なんか新しいアイディアを生むときにはみんなで思いつく案を出し合って、そっこから作ろう~っ♪ みたいな。



企画がまとまらない最大の要因は、ここですよ。



つまり、ブレストという合議制をとってまでして到達したい、ゴールや成果物、課題に関するイシューを事前に共有できていないことです。


これがそもそもの、スタート時点でのミスと言えます。



「いや、オリエンシートや仕様書は関係者に共有してるよ!?」


ってそうじゃありません。



いわゆる正しいイシューの定義が必要不可欠になってきます。


イシュー定義の必要性

この課題や問題を解決することにより、クライアントの経営課題の解決に最も大きな影響・インパクトを及ぼすことができるか、という正しいイシューの設定ができていないと、企画会議で何かが決まっても、弱い企画になってしまうわけです。


また、このイシューが、既視感のあるものや常識的なものだと、やっぱり弱い企画に着地します。

とはいえ、ここはある程度仮説に基づくものですし、解決策が常にぶっ飛んでればいいとも限りません。






このように、到達ゴール・イメージを共有する前に、オリエンを聞いてきた上長やメンバーがまず、このイシューを最適な状態まで定義している必要性があり、その上で、ゴールの共有という流れが理想的です。


なんなら、イシューが定まらないのであれば、ブレストの前に、イシューを考え抜くことが必要です。



このフローを事前に行うことで、「寝かす」の持つ効力も大きく変わってきます。



「寝かす」の意味

事前にイシュー、ゴールの共有ができていることで、ブレストの時点で出てきた、バラバラかつロジックを欠くアイディア達(これはブレストなので、当然歓迎します。)が、“寝かす”工程を経ることで、

自然とメンバー間の頭の中で、「このアイディア、どうやったらゴールと結びつき、イシューの解決につながるのか」と思考することができます。


そりゃそうだろって、て話です。

但し、これができているのとすっ飛ばしているのでは大きく生産性と成果物の質に違いが生まれます。


そもそも、“寝かす”という工程は往々にして、加熱した脳をクールダウンしたり、時間という力で新たなアイディアなどが生まれることを期待する行為です。


要するに、通常の“寝かす”工程は、実に他力本願で、砂漠で一夜を明かして、誰かが助けてくれるべ、みたいなスタンス・行為といえます。



つまり、本質的なイシューを理解して、ゴールが分かってないと、“寝かす”という時間を無駄にしてしまうということです。

逆に、このフローを経ていれば、“寝かす”ことで、ブレストという作業を経て出てきた、ダイヤモンドの原石を、より輝く価値のあるものにまで昇華させることができます。


とはいえ、“寝かす”という工程自体が無駄では?と思うかもしれませんが、

アイディアは熱が必要ですが、ロジックには冷静さが必要です。


したがって、この寝かす工程は、ロジックを立てて、アイディアとゴールを結びつけることを意識することが重要です。


原石だった石ころも、ゴールへの結びつき、ロジックが見えてくれば、その価値がクライアントにも伝わり、ダイヤモンドがダイヤモンドたる価値になるのです。


それでは、改めて“寝かす”を効果的にするフローを纏めます。



「寝かす」を活かす、企画会議フロー

①オリエンを聞いて、イシューを設定。このイシューを解決することで、最も影響があるか否かの意識。

②イシュー及び企画を通しての到達ゴール、イメージをメンバーへ共有。

③前提意識、進むべきゴールをイメージした上で、ブレスト(但し、非ロジックや粗野なアイディアを歓迎)。

④各自、ブレストアイディアとゴールの結びつきを意識して、寝かす。

⑤2回目の会議でアイディアとゴールのつながりを持ち寄り、企画内容を詰めて、方向性FIX。

⑥アウトラインを描いて、各自役割分担。

⑦企画書作成


この流れをとれば、2回目の会議はあくまで、ゴールまでの結びつき、ロジックを踏まえた、アイディアのブラッシュアップを共有する場、つまり実現可能な範囲まで精度を高めた議論ができるということです。






とはいえ、上長にそんなこと言えねーよ!!


って思う方は、心がけてあなただけでもこのスタンスで企画会議に挑んでください。2回目の会議の時にはあなたは、会議自体のイニシアチブを握ることができます。


なぜなら、皆が見えない着地点が見えているから。

しかも、効果的・インパクトのある、納得感のあるアイディアを持って。


それでは、また。

いや、むしろ僕が好きです。