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創作小説『僕と犬のハチ』

※微グロ注意 ーーーーー 母さんが階段を降りていく音が、僕の部屋に重たく響く。 今日のご飯は一階の居間で食べなきゃいけないそうだ。 僕と母さんの間を隔てていたドアを肩で押し開けようとした。ギィギィと言うばかりで動かない。全体重を乗せても少したわむだけ。 こんな風にドアを壊したのは兄弟達だ。彼らは大きな体をドアに擦りつけては、低い声で吠えて、僕を脅した。 彼らは僕を嫌いだった。生後一年で自立して家を出て行く彼らにとって、十歳になっても母の腕の中に甘える僕は、醜い出来損ないだ

    • 【創作】クリスマスと野暮男と自己嫌悪

      前に1度行って、すごくいい感じだったイタリアンレストラン。 また行きたいなーと思っていた。 今日、やっとその機会を得て、楽しみにお店へ行った。 ランチ時を過ぎていたけれど、以前より少しお客が多かった。 私を出迎えたのは、男性の店員だった。それがなんだか喋りかたも佇まいも野暮ったくて、見た瞬間に(ちょっといまいちだなぁ)と思った。 テーブルでの案内もなんか乱雑というか、やっぱりいまいちなのだ。 料理を持ってくるタイミングも、なんか合わない。 私の後にもお客さんがちょこちょ

      • 10年前の憧れに会った話

        たまたま観た駅前プロレスがけっこう面白かった。 きっと本物の試合はもっと面白いはずだ!と思った。 それで、昔に興味を持っていたドラゴンゲートという団体のプロレスを、後楽園へ観に行くことにした。 先ず、チケットの買いかたが難しかった。 座席の位置の案内がなかった。分かるのは値段の違いだけ。上からRS・S・A・B・C… チケットの手配をする夫から「どの席にしようか。A席かB席かな」とメッセージが送られてきた時、先ず私は「どうせなら一番良いRS席にしよう」と返信した。 RSって何

        • シリーズで一番、情報量が多かった

        創作小説『僕と犬のハチ』

          人は他人に影響を与えることで、自分の存在を確かめようとする。 だけど影響を受けた人は、その瞬間に今までの自分が消えることになる。 むごいね。 だから私は、優しい人、豊かなもの、清らかなことからの影響を受けて、次の自分へ変わっていきたい。

          人は他人に影響を与えることで、自分の存在を確かめようとする。 だけど影響を受けた人は、その瞬間に今までの自分が消えることになる。 むごいね。 だから私は、優しい人、豊かなもの、清らかなことからの影響を受けて、次の自分へ変わっていきたい。

          創作小説「僕らの」

           僕はその日、自分にグロテスク耐性が無いことを知った。兄貴秘蔵のスリラー映画を無断で見た結果、ベッドの上で盛大に吐いてしまったからだ。  殺人鬼が女の肉体をちぎって貪る光景がショックだった。しばらく女は見たくなくなった。特に大人の女は。柔らかな肉体が裂かれる場面を思い出しそうで。  それで僕は、となりで一緒に映画を見ていた太郎に今夜泊めてくれって頼んだ。母さんを見ないようにするためだ。太郎んちの親はうちと違って、思春期の息子にウザ絡みしてこない。いちいちご機嫌伺いしてくるこ

          創作小説「僕らの」

          2023.6.16(白昼夢)

          路は山へ続く。 私の右側に寄り添うピノキオと足並みを揃えて、暗闇を歩いた。 相変わらず地面はうるさい。木々の狭間から視線も感じた。赤い眼があちらこちらから私を見ているような気がした。 心臓がドキドキして苦しい。 だんだん赤い目が近づいてくる気配がする。周囲を取り囲まれている。 恐ろしくて、私は 「ピノキオ」 を呼ばずにいられなかった。 ピノキオは私の声に応えて、足を踏み鳴らす。蹄が踏んだ地面がキラキラと輝く。明るい緑と、小花があった。 ピノキオの輝きは、私の手の輪と同じ

          2023.6.16(白昼夢)

          2023.6.12(白昼夢)

          しばらく行くと、遠くに山が見えた。 山頂に赤いマグマが湧き立つ、黒い火山だった。火山口からは今にもマグマがあふれそうである。その赤さに、私はさっきの実を連想した。 「あそこへ行くの?」 鹿に問うた。が、鹿は黙して答えない。 ただ私に付き添うだけの生き物のようである。 私は子鹿を地面に降ろし、両手で三角の輪を作って火山を眺めた。 森は明るい林に変貌したが、火山は黒と赤のままだった。 そして鹿を見やると、なんと鹿も黒い体に、マグマと同じ赤い目をらんらんと不気味に光らせていた

          2023.6.12(白昼夢)

          2023.6.11(白昼夢)

          路はあっという間に真っ暗闇になってしまった。足下も見えない。 そんな中をどうして歩いていけるかというと、鹿がぼんやりと、淡い光をたたえているからだ。 それに鹿の足元には明るい影が伸びている。普通、影は黒いのに、暗闇にいる鹿の影は白く明るい。 それで、私は地面に何が在るのかを知った。 私の足を滑らせるのはヌルヌルとした草で、足の甲の上で蠢いていたのは甲虫で、ザザッと音を立てるのは正体不明の黒い何かであることを、私は、鹿の明るい影の中に見て、知ったのである。 子鹿も光ってい

          2023.6.11(白昼夢)

          2023.6.10

          島へアルバイトに行くために、商業施設で服などを買う。 娘が以前(の夢で)買ってやらなかった、誕生日由来の雑貨を売る店を見つけ、「今度こそ買って欲しい」とねだってくる。 しかし売り切れているものが多く、娘が欲しかったデザインノートも無く、希望の日にちの雑貨にはイマイチ惹かれない様子。結局買わないことに。 ところでクレジットカードで支払うたびに、カードリーダーにポイント抽選動画が流れて、それを見終わるまで決済が完了しない。 遠方の店へ来たため、私はポイントを貯めておらず、にも拘

          2023.6.9(白昼夢)

          ふくろうは脇から赤い実を出して、私のほうへ落とした。 丘で食べたのと同じ、きれいな赤い実だった。 私にはこれが「賑やかなナニカ」から身を護る、神秘的な手段なのだと感じられた。 かたい実を手で細かく割って、三分の一を鹿に、三分の一を子鹿に与え、残りを私がしゃくしゃくと食べた。 手に残った果汁は、鹿達が余す所なく舐めとった。私はますます自分の予感が正しいと察した。 頭上で翼のはためく音がした。ふくろうが高く飛び去っていった。 行く先の路を見やる。木々に囲まれて鬱蒼としている。

          2023.6.9(白昼夢)

          2023.6.5(白昼夢)

          静寂を破ることを嗜めらているのだと思った私は 「静かに行きますよ」 と答えた。 ふくろうは笑った。 「そんなのは無理だね。周りが放っておかないさ」

          2023.6.5(白昼夢)

          2023.6.5

          上野駅から家まで、長々と歩いて帰る道程がある。(※1) 子ども時代に仲の良かったHさんと、一緒にその道程をたどっている。「ずっと昔から一緒に歩いている道」だと、私は言う。「ずっと一緒に歩いていこう」 民家に囲まれた下り坂へさしかかった時、スマホに着信がある。 別の古い友人、Oさんからのものだった。 OさんはDさんと仲が良かったが、大人になってからは空々しい関係になっていた。 私はOさんからDさんの悪口を聞いて、それを真に受けていたが、後にDさんからOさんの虚言癖について教

          2023.6.3(白昼夢)

          穏やかに見えた谷間の道は、歩いてみるとひんやり冷たい。 鹿は私の左側を歩いた。子鹿は右側を歩いていたが、私は寒かったので腕の中に抱いて歩くことにした。 子鹿はつぶらな瞳をパッチリと開けて、辺りを見ている。 私と鹿は道を歩いていく。道は、ゆっくりと下っていく。木がうっそうと茂り始めた。 ふくろうの鳴き声がした。 木の上に、灰色のふくろうが一羽とまっている。 ふくろうが「何をしているんだね」と問うてきた。私は「この先へ道を進んでいるのです」と答える。ふくろうは鹿達を見やって、「

          2023.6.3(白昼夢)

          2023.6.2(白昼夢)

          鹿は地面に落ちていた赤い実をかじり、その半分を私に差し出した。実は、手のひらに置いた。きれいな実だった。 鹿のかじった跡を、私もかじった。甘酸っぱい。 全てを食べるには少し多く感じたので、2口、3口だけ。残りの実は子鹿にあげた。子鹿は何度もよく噛み砕いて実を食べ、周りにこぼれ落ちた欠片は鹿が食べた。 夜だが、芝は明るい緑色をしている。足元が明るい。小さな虫たちが光り、飛んでいる。優しい光。風のそよぐ音が聞こえ、虫達の耳障りな羽音は聞こえない。うるさくない。虫たちの囁くような

          2023.6.2(白昼夢)

          2023.5.31

          夢① 娘1と劇場にいる。満席。私たちは中央の席群の最後部、左端の席に座る。 開幕して間もなく、席が二人がけの小さなコースターに変化した。 娘1と前後で乗り合わせており、最前部まで滑り降りる。 後部、端席だけの特別な仕様だったらしいが、劇場内の誰も予期しない展開だった。どうも居心地が悪く、私は「どういうこっちゃ」と苦笑い。 夢② (空想上の)秋葉原の駅前。 ビルの2、3階で食事をしていると、窓の下を芸人さん達が歩いていく。深酔いしていて、ファンに囲まれてご満悦の様子。 私は「