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国立西洋美術館「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」感想

国立西洋美術館で開催されている
「自然と人のダイアローグ」を観に行きました。

2020年末から長期休館に入っていましたが、
リニューアル後初の展覧会で楽しみにしていました。
展覧会概要と訪問状況は下記の通りです。

フォルクヴァング美術館と国立西洋美術館は、同時代を生きたカール・エルンスト・オストハウス(1874-1921)と松方幸次郎(1866-1950)の個人コレクションをもとに設立された美術館です。本展では開館から現在にいたるまでの両館のコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100点を超える絵画や素描、版画、写真を通じ、近代における自然に対する感性と芸術表現の展開を展観します。産業や社会、科学など多くの分野で急速な近代化が進んだ19世紀から20世紀にかけて、芸術家たちも新たな知識とまなざしをもって自然と向き合い、この豊かな霊感源から多彩な作品を生み出していきます。
足元の草花から広大な宇宙まで、そして人間自身を内包する「自然」の無限の広がりから、2つの美術館のコレクションという枠で切り出したさまざまな風景の響き合いをお楽しみください。自然と人の関係が問い直されている今日、見る側それぞれの心のなかで作品との対話を通じて自然をめぐる新たな風景を生み出していただければ幸いです。

展覧会公式ホームページより

【概要】
  会期:2022年6月4日(土)~2022年9月11日(日)
 休館日:毎週月曜日
開場時間:9:30-17:30
     毎週金・土曜日:9:30~20:00
     ※入館は閉館の30分前まで
  料金:一般2,000円、大学生1,200円、高校生800円
     中学生以下無料

展覧会公式ホームページより

【訪問状況】
   日時:日曜日午後(東京藝術大学美術館からのはしごです。)
 滞在時間:14:30~16:45 
 混雑状況:はっきり言って激混みでした。
      展示室に入るまでに30分近く並び、
      日時指定制の意味があるのかと思ってしまいました…。
感染症対策:入口で手指の消毒
 写真撮影:一部を除き可

展示構成は下記の通りでした。

Ⅰ章 空を流れる時間
Ⅱ章 「彼方」への旅
Ⅲ章 光の建築
Ⅳ章 天と地の間、循環する時間

(改めて文字にすると詩的なタイトルですね。)

自然というと風景画を思い浮かべがちですが、
風景画をクローズアップするというより画家が
自然をどうとらえてきたかに焦点をあてたところが
本展の特徴かと思いました。ところどころに
画家の自然観を表した言葉が紹介されており、
どのように自然からインスピレーションを得たかが
感じられ興味深かったです。

Ⅰ章では画家が知覚した自然をいかに絵に
再現しようとしたかが示されていました。
海辺、朝靄などの一瞬の光景を切り取ったものが多く、
画家が観察と表現の両方を重視したことが感じられました。
中でもピサロの「ルーヴシエンヌの雪景色」は
冬の静謐な空気も伝わるような作品で美しかったです。

カミーユ・ピサロ「ルーヴシエンヌの雪景色」1872年 フォルクヴァング美術館

Ⅱ章は一転して自然への畏敬の念を感じるセクションでした。
特にフリードリヒの「夕日の前に立つ女性」が印象に残りました。

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ「夕日の前に立つ女性」1818年頃 フォルクヴァング美術館

展覧会チラシで見て大型の絵を想像していたのですが、
小型の絵だったのが意外でした。壮大な自然賛美でなく、
むしろささやかな感動を込めた絵のかなと印象が変わりました。
このエリアはドイツ、北欧の画家の絵が多かったのですが、
フランス絵画の鮮やかさとはまた違う神秘性を感じました。

Ⅲ章では自然をより科学的に捉えようという
画家の探求心が感じられました。
レイセルベルヘの「ブローニュ=シュル=メールの月光」は
光の粒子のような点で表された月光が柔らかで美しく、
今回の展示で一番好きな作品となりました。
一方で続けて展示されていたシニャックの「サン=トロぺの港」は
ブロックを積み重ねるように長方形の点で描かれていて、
同じ点描でもアプローチの違いを感じました。

テオ・ファン・レイセルベルヘ「ブローニュ=シュル=メールの月光」1900年 フォルクヴァング美術館

Ⅳ章は「庭」、「祭り」、「農耕」など、
人と自然がかかわる場面を描いた作品がとりあげられていました。
ゴッホの「刈り入れ」は解説によると

麦を刈る人物に「死」を、刈られる麦のなかに「人間」のイメージを見た

展覧会公式ホームページより

とのことです。その横に展示されているピサロの「収穫」は
仲間との作業の喜びにあふれた明るい絵で、
農作業という行為に対して画家が見出したものの
違いに多少のほろ苦さがありました。

フィンセント・ファン・ゴッホ「刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール 病院裏の麦畑)」1889年 フォルクヴァング美術館

上記のように作品と作品の対比で気づきがあるような
展示の工夫もなされていて、「自然と人のダイアローグ」という
タイトルの通り作品間の"対話"も楽しめる内容になっていました。

後から思い返すと色々発見があるような、
好奇心に訴えかける展覧会でした!

ところで国立西洋美術館は企画展のチケットで常設展も
観られるので(というか企画展のチケットは常設展の観覧料も込み)、
余力があれば常設展も観てきます。
毎回「○○展で見た△△の絵だ!」とか
「この時代にこんな絵があったのか」と思うような作品があったりと
新鮮な驚きがあり、国立西洋美術館の懐の深さを感じます。
ふらっと常設展を観に行くようになれば大人だな~と思ったります。

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