2023年のベスト本
年が明けてしまったが、2023年に読んでよかった本を1冊紹介する。
「やがてすべては旅になる 壊れた自転車で行く四国一周」小林みちたか著
正直、もし本屋さんで普通に並んでいても、手に取らないジャンルの本だ。
なぜ読むことになったかというと、仕事中、上司に最近読んでいる本のことを尋ねたとき、大学時代の後輩が本を出したんだよ。オレもちょっと登場してるんだ。と言うからである。私の上司がどんな描写をされているのか、それだけが気になって、手に取った本であった。
上司が私の思っている通り、情に厚く、優しくて、ちょっと個性的な風に描かれていたのは、何だか嬉しかった。あぁやっぱり学生時代も今も、変わらないんだなと。
と、そんなことより、内容が深かった。
概要としては、自転車四国一周旅の体験を軸に、過去の1人旅や、朝日新聞記者から始まった社会人人生、親の死などを回想しつつ、四国一周を達成するというタイトルどおりのお話である。
自転車で四国一周だなんて、さぞかしタフで屈強な男なんだろうと思っていたら、意外と「元来、人の目が気になる性質だった僕は、常に監視されているような緊張感に発狂しそうだった。動きがどんどんぎこちなくなり、サイドブレーキを引いたまま、アクセルを踏みつづけるようなフラストレーションを抱えた状態で生きていた。」と語っている。
旅を通して著者は、他人からの評価や数字に惑わされて生きていくほど人生は長くない。人生は複雑だからこそ、自分の心に素直に従い、人にどう思われようと自分にとって意味のあることを素直に求めることで楽に生きられるという境地に至る。
私は最近、本を何冊読んだ、何個資格を取った、何件実績をあげた、こんな資料作りました、すごいでしょう!ほら、私をもっと見て!評価してください!こんなことで頭がいっぱいだった気がする。求め始めるとブレーキが効かなくなり、身体の発するSOSなんて聞こえないふりして突っ走ってしまう、それで苦しかった。限界だった。でも、著者の経験が物語るように、「命はいつ潰えるかわからない。いつかやりたい。いつか行きたい。いつか会いたい。そのいつかは、訪れないかもしれない」のだ。それなら、自分の欲望をもっと優先して生きていくほうが、楽だし、幸せだ。
自分を大切に。自分の欲望に素直に生きる。
今のタイミングでなければ、刺さらなかった本かもしれない。
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