藤井風の花を聴いて思うこと

今年2023年もあと少しで終わります。
今年発表された藤井風さんの「花」は大きな話題を呼んでます。この歌、またはこの歌のMVについて思うことを、まとめてみました。


1.藤井風さんの歌の世界観と「ソングライン」


昨日の12/17インスタ、TikTok、YouTubeでの「寝そべり配信」で、ご本人が「花」について語ってましたね。
「このMVのイメージは、ある日突然『砂漠を霊柩車が走って行く光景』が頭に浮かんだ。すぐに免許を取りに行った。そのイメージを多くのスタッフさんが形にしてくれた。」と。

前から思ってましたが、藤井風さんは、意識と無意識、生死を超えた魂の浮遊している場所みたいなところを知ってる気がします。
いつも、ご自身の歌の中で、そのお名前に、「風の時代」に相応しく、魂の自由を高らかに歌い上げてますね。だからこそ、多くの人の心が揺さぶられるのだと思います。
国境とか宗教とかの小さな枠を飛び越えて、生命の儚さと魂の解放を美しく歌い上げてます。
この歌は、ある意味2023年の大事件です。

もう一つ気になったのが、MVの撮影地っていうのがオーストリアの砂漠地帯っていう事実と歌の世界の奇跡的な、運命的な符合についてです。

ご本人の「突然頭に浮かんだイメージ」として「霊柩車が砂漠の中を疾走」の舞台として、たまたまオーストリアのロケ地が選ばれたのだと思われます。

私はオーストリアの砂漠地帯と聞いて、イギリスの作家ブルース・チャトインが世の中に発表した「ソングライン」を思い浮かべてしまいました。

「ソングライン」とはそもそも、オーストリアの原住民アボリジニが、部族間の土地の共有の為に、紙の地図代わりに歌にあらゆる情報を込めて、昔から伝わる自分達の部族の土地を渡り歩いて旅して生きてた「歌による地図情報」、いわば「歌で築かれた世界観」を紹介しています。
歌には土地の情報、生活の知恵だけではなく、民族の歴史、文化、死生観も込められていました。もちろん、渡り歩く土地と自分達が唯一携える歌の中に、ご先祖の魂も生きていました。
ブルースチャトインの著作の中でも紹介されてますが、民族の魂が宿る土地は砂漠地帯であっても、歌と共に通らずにはいられないのです。
1960年から1970年代に盛んに行われたオーストリアの砂漠地帯での原爆実験下でも、立ち入り禁止とされた荒涼地帯をアボリジニのいくつかの部族が強硬に通り抜けて何人も命を落としたそうです。それを欧米諸国は、地図もない、文字も読めない頭の弱い原住民として、差別し「保護」という言葉を掲げて「保留地」に閉じ込めたのです。

でもオーストリアの荒涼地帯と思われる土地には、アボリジニのいくつもの部族の人々の魂の拠り所、聖地があります。
いわゆる「歌の道」、「ソングライン」があるのです。

今の世の中は、パレスチナのガザ地区への攻撃等、欧米列強国が中世から始めた、土地や資源の奪い合いによる醜い争い事で溢れかえってます。

その世の中で、魂の自由を高らかに歌い上げる藤井風さんは、ソングライン、すなわち歌の道に導かれ、選ばれし者って気がしてしまうのです。

だから、昨日の寝そべり配信で、ご本人が語っていた、「オーストリアのおじいちゃんおばあちゃんに優しくしてもらって…」ってエピソードも深く頷けてしまうのです。
もちろん私の勝手な推測ですが。

アボリジニの方達の特別な場所、魂が宿る土地にも、迎入れられたんだろうな💐✨って思ってます。私の勝手な推測の域を出ませんが。


2.咲かせに行くよ、内なる花を

この歌詞を聴きながら、なぜかガザの子ども達のことに思いを馳せてました。
あのひどい内戦下で、多くの子ども達は、ささやかな欲望、ささやかな希望、ささやかな夢を咲かせる時間とか場所とか物資とかが絶対的に不足してる今、気持ちを押し殺して何も要求することしかできない状況だと思います。
ましてや明日の生命の保証もない。

昔、NHK看板アナウンサーだった宮崎緑さんがポルポト政権下のカンボジアの子ども達を取材した時の思い出話を、講演会で聞いたことがあります。その時はNHKを離れフリーアナウンサーになられてました。

その当時(1980年初期でしょうか?)カンボジアに取材に行った宮崎さんは、小さな子達に「何が望み?何が欲しい?」ってインタビューしたそうです。
すると、「欲しいものはありません!ポルポト政権の政策に満足してます!」って口も回らぬくらいの幼い子達が答えたといいます。
宮崎緑さんはたまらなくなって、報道事務所駆け込んで「報道の仕事辞めて、ここで子ども達の為に働きます!」って国際電話で会社に訴え、「馬鹿野郎❗️」って一喝されたそうです。
号泣しながら事務所を出てきた宮崎さんを見た、さっきの子どもたちが、宮崎緑さんの側にそっと集まって来て「私はね、ホントはね、かわいいスカートはきたいの」とか「僕は将来たくさん勉強して先生になりたいんだ」とかコソコソ話してくれたそう。

どんな地獄の中でも子どもたちって前見て生きて行く気持ちは大人より強く胸に秘めてるんだと思います。

どんなことでも良いから内戦下の子ども達が、少しでも多く心に秘めてる花を咲かせて、世の中が明るくなりますように。

1秒でも早く、ガザへの攻撃が終わりますように。

心の花を咲かせられる子ども達がたくさんいますように。

新しい風が吹いて新しい時代が来ますように。

藤井風さんの花を聴きながら、そんなふうに祈りました。

世界中に、この歌が広まり、一人でも多くの人が内なる花を咲かせてくれますように。

改めて藤井風さん、素敵な歌をありがとうございました。

拙文お付き合い頂き、ありがとうございました🙇🏻‍♀️

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