海外MBA留学とは何か?海外のMBA留学の基礎的情報まとめ

こんにちは、Kentaroです。このnoteでは、海外MBA留学とは何かということを説明致します。
「海外MBA留学って何?」「よくMBA留学って聞くけどなんなの?」という疑問をお持ちの方に向けた解説記事です。MBAって何なのかを知りたい社会人の方や大学生の方などを対象としています。

なお、こちらの記事は、現在、現役海外MBA生としてマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院(MIT Sloan School of Management)に在籍している個人の見解をもとに書いております。

MBAって何?

MBA (Master of Business Administration) は、経営学の修士号です。要は経営学の大学院、修士課程を修了した、ということです。
欧米特有の学位取得の呼び方として、MBAを取りました、というのですが、これは資格を取ったという様な意味ではなく、経営学の大学院の修士課程を卒業しました、ということです。
なお、MBAは正確には学位のことを指すのですが、経営学の大学院の修士課程そのものをMBAとも言います。

特徴としては、理系、法学部、経済学の大学院など、大学の学部を卒業して直接入学する方が多い修士課程とは異なり、基本的に仕事を複数年経験してから入学するものです。入学の選考プロセスでも、学歴より業務経歴の方が重視される傾向にあります。

海外MBAとは?

海外の大学の経営学の修士号のことです。

日本と違い、海外においては、文系、とりわけ経営学において、学部の4年間だけではなく一定期間の勤務後に大学院までいくケースもよくあります。したがって、海外においては、MBA取得というのは日本と比べて一般的であって、世界の名だたる大学(ハーバード大、スタンフォード大や、私のいるマサチューセッツ工科大など)が経営学の大学院を設けております。

ちなみに日本においても、慶應大学が設けている慶應ビジネススクールのような、経営学修士課程が存在しますが、数は多くないと思われ、知名度は海外大学に比べて大きく劣ります。

MBAでは何を学ぶの?

MBAでは、経営者になるための知識全般が教えられるということになっておりますが、私の経験上、学業に勤しむために入ってくる人は多くないと考えております。

経営者になるために必要な知識と言ってもキリがないし、人それぞれ自分の足りない分野や学びたい分野は異なっているので、多くの大学においては多くの授業が選択科目になっております。選択科目の数も膨大なケースが多く、卒業までには大学側が用意している授業のほんの一部しか受けることができずに卒業します。したがって、経営に関連する分野の中で、自分の興味がある分野を学べる課程といえるでしょう。

私が通っているマサチューセッツ工科大学のビジネススクールの授業の一例を簡単に紹介します。

戦略論(Competitive Strategy):ケーススタディーという、ある企業が過去に行った経営判断について、英文15-30ページくらいの文章を読み、文章に関係があるデータをもとに、下された経営判断の是非を考えるというもの。この授業を教えている教授は元マッキンゼーのパートナー。

起業論(New Enterprises):チームを組んで、ビジネスとなり得るアイディアを考え、そのアイディアを実際にビジネスにしていく授業。教えている教授はシリアルアントレプレナー(連続起業家)で、スタートアップが成功するためには正しい道筋があるという理論をもとに、毎週アイディアのビジネス化の進捗を報告し続ける。実際に新規事業を生み出すプロセスをなぞっていく。この授業から生まれたアメリカのメガスタートアップ(例:HubSpot)も多い。

応用データ分析(Analytics Edge):重回帰分析やロジスティクス回帰から始まり、決定木、ランダムフォレスト、バギング、クラスタリング、基礎的な自然言語処理(Bag-of-words)をR言語を用いて実装する。統計学やプログラミングの経験がない生徒であっても、説明を受けながら全てコードで課題を提出しないといけない。これを行うことで、世の中一般でよく言われるAIとかデータ分析などが、どの様な方法(アルゴリズム)で行われているかというのが少し理解できる様になります。

・・・と、本当に様々です。

例えば、起業とか全く興味ない、という人で、将来的に金融業界で働きたい、と言った人は、高度な金融の授業ばかり履修しているし、持続可能な社会に興味がある人は、サステナビリティやインパクト投資に関連する授業ばかり履修していたりもします。なので、学ぶことはかなり多岐に亘っています。

私の所属するマサチューセッツ工科大学経営大学院では、必修授業として組織論、データ分析、会計、コミュニケーションスキルの4科目がありますが、それ以外は全て選択授業です。

なお、自身の経験だと、海外MBAで学ぶことのほとんどは、日本に売っている書籍で学ぶことができます。

日本の大学との大きな違い

私は、大学の学部4年間を日本の大学の経営学科で過ごしておりますが、日本の大学とは以下2点で全く違います。

①大学の授業を行う形式が異なり、勉強をすることが求められる雰囲気であること日本の大学の授業は、講義型が多かったです。
私が所属していた大学の経営学科は、「チャラ経」と呼ばれており、講義型の授業を頻繁にサボる人が続出しておりました。宿題もほとんどなく、何も学ぶことなく4年間が過ぎていきました。勉強をしなくても良い雰囲気が蔓延していました。
一方で、こちらの大学では、宿題が多く勉強をさせられる点はもちろんですが、授業において多くの質の高い発言を行うことが求められます。
従って、事前に授業の予習をしっかりと行い、発言ができる様に準備する必要があります。授業はインプットというより、アウトプットが求められる場所です。

②産学連携が行われていること
日本の大学の経営学科の教授は、経営学という分野の教授であるにもかかわらず、アカデミアに閉じこもっており経営の経験が無いような教授が多いと思います。良い論文を書くことが教授のゴールで、授業に対する熱意が低い教授も多い様な気がします。特に、経営学という分野では、会社の経営を行うための理論なので、実際に経営を行った人が教えられる実務面・マインド面での部分はかなり大きいと思うのですが、私がいた大学にはその様な経歴を持っている経営学の教授がほぼいませんでした。
一方で、私の所属するマサチューセッツ工科大の教授は、アカデミアの分野に閉じこもっている教授はほぼいません。経営学の教授は、自ら起業して組織を大きくして大金を得た人や、大企業での幹部経験者ばかりで占められています。一例としては、私のプレゼンテーションの授業の教授はUberの北米オペレーションを統括していた方ですし、ベンチャーキャピタルのパートナー、連続起業家、マッキンゼー等のコンサルティングファーム出身者など多種多様なピカピカな経歴の方々ばかりです。もちろん、こういう人を教授として雇うために、数千万円以上の高額の給与を払っております。また、質が低い授業を提供した教授は、生徒からの多大なクレームを受けて授業スタイルを見直さざるを得ない状況になるため、質の高い授業を行うことが求められます。
加えて、さまざまな企業のリーダーが授業に現れ、自らの経験を話してくれる点も特徴です。私の経験している中でも、マイクロソフトの元会長などの上場企業幹部や、ノーベル賞受賞者や、スタートアップの創業者などの素晴らしい経験をされている人が、1週間に1人以上は来て、自らの経験を語ってくれます。

MBAの疑問①:入るのは難しいか?

学校によりますが、欧米トップスクールに入るのはかなり難しいです。
入学難易度を見る上で、各校MBAプログラムの出願者数と入学者数のデータを以下にまとめました。

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合格者数ではなく入学者数のデータしか取得できなかった為、実際の合格率がどの程度かを比較することは出来ていないのですが、辞退の数は各校ともにそこまで多くないと考えると、欧米のトップ校に入学するのはとても難しいと考えられます。実際に私も入学試験のために複数年勉強するなど、とても苦労しました。

入学の選考では、主に①経歴(職歴、学歴、課外活動)②テストの点(GMAT・GREという超難関テスト、英語圏以外の大学卒業者はTOEFL・IELTSといった英語のテスト)③エッセー④面接にて入学可否が判断されます。欧米のトップ校の場合は、出願している人たち自体も世界中のトップ層のため、合格は至難の業です。

MBAの疑問②:入った後の授業は難しいか?

学校によって差はあれど、どこの学校も授業について行くのにそれなりの労力を要します

海外のMBAのプログラムでは、かなりの量の宿題が出ます。さらには、日本の大学のような座学の授業ばかりではなく、発言の質によって成績がつく授業が多い為、一生懸命予習して授業を行う必要があります。

私が在学しているマサチューセッツ工科大学経営大学院は、一年生のはじめの学期はとても忙しく、夜中までかかって宿題を行う日々が続きました。しかし、選択科目のみとなる2学期目以降は、忙しさを加味して時間割を考えることができるので、忙しい人もいればそこまで忙しくない人もいるといった感じでした。
しかし、日本の文系の大学学部を卒業した私としては、それでも宿題が多くてだいぶ忙しいという感想を持っています。


MBAの疑問③:いくらかかるのか?どうやって学費を払うのか?

海外のトップスクールでMBAを取るためには、常軌を逸するほどのお金がかかります

以下は、私が所属しているマサチューセッツ工科大学経営大学院が発表している留学コスト一覧を加工したものです(元データ)。

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ご覧になると分かるように、日本円で計3,000万円をオーバーしています。この数字は現実的な費用で、みんなこの費用を払って入学してきている印象です。
家族帯同となるとさらにコストがかかりますし、上記の試算の家賃は良いアパートでない前提なので、良いアパートを契約するとさらにお金がかかります。

こんな大金を生徒たちはどうやって準備しているのでしょうか。以下が私が感じた留学コストの支払い方法です。

① 貯金
このようにお金がかなりかかる留学なので、生徒のバックグラウンドも、留学前の仕事が高級取りの仕事だった人がかなり多く、貯金でコストの一部又は全部を賄っている人が多いです。業界としては、コンサル、投資銀行、テック(Google、Amazon等)が私の同級生には多い印象です。テックの場合は、株価が上がり続けているので、給与の一部として払われるストックオプションを活用している人などもいました。海外の一部企業は、日本の企業より給与水準が大幅に高いケースが多いので、貯金で学費及び生活費の大部分を賄うという人が結構います。
日本からの留学生も、コンサル、投資銀行、大手銀行、総合商社という、給与水準が高い企業からの留学が多いです。

② 借金
私のいる大学院では、他のMBAプログラムと同様、学校提携ローンとして、大学と提携している銀行から学費+生活費全額を借り入れることができます。但し、日本と異なり海外は金利が高いので、卒業後の金銭負担を考えると全額借金という人は少ないと思います。この借金という手段があるので、貯金が全然ない人も留学自体は出来るようになっております。

③スポンサーシップ(社費)
留学前に働いていた企業が、卒業後に一定期間はその会社で働くという約束で学費や生活費を企業のお金で肩代わりする制度のことをいいます。
同級生だと、大手コンサルティングファーム出身者はこの制度で留学してきている人が多かったです。彼らのスポンサーシップの内容は、学費のみ全額会社が負担するが、その代わりに卒業後2年間は会社に戻って働かないといけない(その前にやめたら学費全額を会社に返金しなければいけない)というものです。
日本人は、この社費によって留学している比率が高いです。日本の大手金融機関、総合商社などはかなり昔からこの社費制度がある会社が多いです。日系企業の社費の条件は会社によって異なるものの、特徴としては、学費+生活費を全額支給する代わりに、卒業後5年間は会社に戻って働かないといけない(やめたらお金を会社に返す)という内容の社費負担が多いです。
しかし、日系企業の企業文化はMBAで目にする海外の企業文化と大きく異なっており、閉塞的であり年功序列制度も根強く残っている為、多くの日系企業社費留学生が5年間という期間を待たずに辞めます。留学後の退職率の高さ、インフレによる留学コストの高騰、留学後人材の日系企業での活用難もあり、日系企業の社費留学の継続には企業内で見直しの意見が強く、多くの企業の社費制度は給付内容の削減が行われております。

④奨学金
奨学金には、大学側が設けているものと、奨学金団体が設けているものがあります。
大学側が設けている奨学金は、need-basedという必要に応じてお金がない人が申請できる奨学金と、merit-basedという実力に応じた奨学金(入学時の優秀さによるもの、入学後の成績優秀者を対象としたもの)など、大学によって様々なものがあります。
奨学金団体が設けているものとして、日本人が申し込めるもので有名なのは、フルブライト奨学金などです。これ以外にも様々な奨学金があり、日本人の出願者で社費制度の資金援助がない人は、奨学金を複数組み合わせ、さらに貯金も取り崩して留学している人が多い印象です。

⑤投資
同級生で時々耳にするのは、投資収益で学費の一部を賄っているケースです。
特にアメリカ人の場合は、家を買って、数年後に値上がりした家を売り、その収益のみで留学しているという人が複数人います。

⑥親からの資金援助
世界のトップMBAに集まる人は、高学歴な大学を経て高収入の職を経た人ばかりです。そのような人は、高学歴な大学に進学できる教育水準の地域で育っており、親もお金持ちなケースが多いです。私の同級生にも、親がForbesのBillionaire Listに載っている人だったり、親が数百億以上の規模の資産を持っている人が複数います。
アメリカは日本と異なり、貧富の差が顕著であり、MBAにいる生徒の親はかなり金持ちの人が多い印象です。そのような親から資金援助を得ている人も中にはいるとのことです。

⑦元軍人の学費免除
アメリカのMBAプログラムには、元軍人が多数在籍しております。私の大学院の同じ基礎クラス60人中、10人程度が元軍人でしたので、元軍人の比率はかなり高いです。
彼らは、アメリカ軍で働いたことにより何らかの仕組みで大幅な学費のディスカウントが得られるみたいです。


MBAの疑問④:MBAって意味あるの?

私は、かなり意味があったと思いました。「MBA留学には何の意味があるのか」ということテーマについては、長くなってしまったので、次のNoteに書きたいと思います。

お読みいただきありがとうございました!

- Kentaro


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