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ベンチャーに飛び乗ってから6年が経った

こんにちは!

dely, Inc.でプロダクトマネージャー (PdM) をしている奥原拓也 (@okutaku0507) といいます。入社当初はサーバーサイドエンジニアをしていました。

少し時間が空いてしまいましたが、2022年9月1日で、ベンチャーに飛び乗ってから6年が経ちました。毎年、1年を振り返っているので、今年も継続してこの1年を振り返っていきたいと思います。ベンチャーに興味を持っている方、一緒にベンチャーで闘っている方の何かお役立ちできたら幸いです。

レバレッジをかける

繰り返しになりますが、ベンチャーに飛び乗って、気がつけば6年もの歳月が経ちました。元々、社員数で一桁だったところから考えると社員数は数百を超えていき、常に今が自分の人生の中で大きな組織になります。当たり前かもしれませんが、プロダクトの規模や数、組織が変化していく中で、自分の役割も変わっています。最初の2 ~ 3年はエンジニアとして、ここ4年程度はプロダクトマネージャーとして、プロダクト開発に向き合ってきました。直近の1年は、2019年から立ち上げている新規事業がようやく軌道に乗り始めてたというところです。

その中で、考えてきたことは「レバレッジをかける」ことと「レバレッジにこだわりすぎない」ことの二点です。レバレッジをかけることの強さと気をつける点についてです。

まず、レバレッジを"掛ける"という点では、キャリアもプロダクト設計においても、既存アセットを活かすことで圧倒的な強みをつけることができます。むしろ、既存アセットを活かすことができていないということは、常に0から戦うことを意味するため、不利な戦いになってしまう可能性があります。これは新規で事業を立ち上げる時にも同じことが言えて、既存アセットがある中で、それを活かさずに、ゼロからプロダクトを創るとなると、どうしてもイノベーションのジレンマの構造になってしまうために、伸ばそうと思っても思い切って投資をすることができずに、それだけを死活問題として向き合っているスタートアップなどに負けてしまいます。よほどパワーがある采配をしなければ、勝つことは難しいことは歴史が教えてくれています。これは、キャリアにおいても同じことが言えます。むしろ、プロダクトマネジメントにおいては複数の領域を掛け算していくことこそ真骨頂のように思います。例えば、僕は社会に出る数年前からエンジニアとしてアルバイトという形でしたが働いていました。そのため、エンジニアxプロダクトマネージャーが僕の強みであり、レバレッジをかけるということになります。そのことについて、詳しくは下記のnoteで言語化しました。

結論から先に書けば「解くべき課題が明確である」という前提条件において「実現可能性が高い解決策を正しい順番で、素早く造ること」ができるのがエンジニアからプロダクトマネージャーになるメリットであると現時点では考えています。

プロダクトマネジメントにエンジニアをしていたノウハウを掛け算することで、上記のようなバリューを発揮できるようになり、全てのフェーズやプロダクトとは言わずしても、成果につなげることができると考えています。このように、今まで自分が持っていた強みを新しい領域に持ち込むことで、より特異的な強みを発揮できるようになります。

そのため、レバレッジを効かせるためのファーストキャリア、セカンドキャリアは一定の期間をかけて身につける必要があります。この時の注意点として、個人的にはレバレッジを効かせることが目的として先行してしまわないようにする意識することだと思います。例えば、後々役立つからエンジニアリングを学んでおこうという気持ちでエンジニアリングに向き合っても、本当に活きたノウハウが身につくのか懐疑的だからです。もちろん、人によると思うのですが、個人的にはその領域でNo.1になるくらいの意気込みと行動をしていかなければ、練度やそこに到達するための期間が長くかかってしまうなどのデメリットが生じてくると考えています。

次に、レバレッジに"こだわりすぎない"ということについてです。これは、レバレッジを掛けることが目的にならないように気をつけることなのですが、例えば、僕はエンジニアリングが強みであると先述しましたが、それは4年も前の話です。日進月歩で技術は進歩する中で、1年も最前線から離れていると、すぐに陳腐化してしまうと思われます。つまり、常に先頭を走っている人たちと比較すると、その領域で戦おうとしても到底勝てない、あるいは逆に下手にノウハウがあるが故に、それが思考の足枷になってしまうということもあると思います。この、先頭で走ることから遠ざかることが、さらに期間が続くと、極端な話、20年後に、僕はエンジニアリングに強みがあるプロダクトマネージャーです、でもエンジニアは24年前に数年間やっていました、みたいなことを言っても強みでもなんでも無くなってしまうためです。つまり、レバレッジすることには賞味期限があるということで、今の僕の最大の強みはプロダクトマネジメントそのものに寄ってきていることを意味しています。まだ、これからのキャリアについて明確な道は描いていないですが、プロダクトマネジメントのノウハウが武器になると思われますが、職種によっては、次のステップでエンジニアリングを掛け算するのは厳しくなるかもしれません。ここで、こだわりすぎていると、自分が発揮できるバリューと求められることにギャップが生じてしまうため、誰も幸せにならない結果に帰着してしまうかもしれないので、なんでもかんでもレバレッジをかければいいというのは違うだろうというのが今の考えです。

常に長期視点に立つ

これまでは、数年前までは細かい施策において、短期的に数値を追うだけの施策は後々になって、効果は薄いがプロダクトの様々な負債を残してしまったりとしくじりをしていたので、身をもって感じていました。この1年は、それがプロダクトレベル、そしてキャリアにおいても、もっと言えば全ての行動や思考が長期視点であるかが重要であると考えるようになりました。ITプロダクトを開発、運営している会社であれば、プロダクトの長期視点は会社の存続にも影響してくるため、非常に重要です。

そもそも、長期視点に立つというのはどういうことかについて書いておきます。必ずしも、短期視点で物事を捉えることが良くないと言っているのではなく、長期と短期、両方の視点で物事を進めるバランス感覚が非常に重要であると考えています。なぜなら、長期視点で考えていても、現実は1mmも前に進まないからです。理屈や遠くのより良い未来の話をどれだけしても、現実世界はちっともより良くならないので、目の前のことを少しでも前に進めることが重要であると考えている中で、長期の視点を持たないとどん詰まりするということがわかってきました。

以下の3つの記事、書籍あるいはツイートから着想を得ています、長期視点に立つということは、人間本来が持っている欲求に根差し、本当に価値があることをテクノロジーの進化を見据えて考えることです。

「10年後も変わらず求められるものに注力しろ」

@masatootake on Twitter

「TikTokが世界最強のSNSとなる5つの理由」を解説していきましょう。1つ目の理由は、TikTokが「テキストから動画へ」という長期トレンドに適合していることでした。今回はそれと同等に重要な、「検索からレコメンドへ」という長期トレンドを紹介します。

TikTokが世界一の機械学習で実現させた「レコメンド」という革命

テクノロジーは急速に変化する一方で、人間は変わらないということです。そしてそれは機会なのです。

アンドリュー・チェンがtoCスタートアップに求める条件

まず、プロダクトの成功とは最終的にモノが売れるとかプロダクトが使われるとかだとすると、機能的価値はほとんど満ち足りた世界において、当たり前ですが、最終的にプロダクトを選択するのは人間です。人間であるが故に、どれだけ論理的な思考ができたとしても、意思決定の中には個人の主観が入ってきます。しかしながら、僕たちは今現在も当たり前のように生活が成り立っていて、便利だと無意識的に様々なプロダクトを使っていたとしても、100年前も僕ら人間は普通に生きていたわけで、日常生活の中の必須な行動の上にプラスで成り立っている部分や、今までかなり遠回りして解決していた課題が一瞬で解決できるようになっていく、世の中はより便利な方向に進んでいくわけです。この本質が、長期的視点だと思っています。

例えば、自分に当てはめると、ドラム式洗濯機を導入したら、今まで選択が終わったら洗濯物を干す手間であったり、干し忘れて匂いが気になり、また選択するみたいな課題が解決されて、もう前の生活には戻れなくなったり、もっと前ではAmazon Primeの明日届く価値であったり、Kindleの本を持ち運びしなくていい価値であったり、もう戻れなくなってしまった価値が沢山あります。人間が本来ある生活をより便利に、さらに抜けられない付加価値をつけていくこと、圧倒的に便利だとほとんどの人が思うような価値を社会実装していくことが大切だと考えています。

しかしながら、人間が圧倒的に便利だと思っているものなど、今の世の中からするとほとんど残されていないかもしれません。新しく自分たちの手で、さらに便利なものを発明し、グロースさせていくのは至難の業です。10年後、僕ら人類はどういう生活を送っているのか、人間が本質的に感じる利便性の中で、今の社会構造が故に歪みが生まれているところはないか、何か技術的なイノベーションが起こって、その歪みが解消されようとしていないか、そこに不確実性が高く、誰もが勝てるような勝負ではないものはないか。長期的視点は、短期では非合理的だけれども、後から辿ってみたら、そりゃそうだよねというようなものに潜んでいると思います。その短期の非合理さを受け入れることができるか、不確実性をうまく飼い慣らすことができるかが鍵だと考えています。

何を信じるか

思考の出発地点は、論理的な思考を鍛え続けて、優秀な人が多いのに、誰もが成功できる世界ではないというところにあります。真似されやすいインターネットの世界に身を置いていると、同じようなプロダクトが一気に乱立して、ほとんどがクローズを迫られて、数個が残るというような領域を何度か見たことがあるかと思います。もちろん、運という要素もあると思いますが、仮に同じ情報を与えられたとしても、結果は全てが一律に同じ結果になるというような世の中ではないとすると、何が差異を生んでいるのでしょうか。僕はそれが「何を信じるか」と「どの未来が来ることを信じるか」なのだと思います。遠い先の未来がどうなるかなんて誰にもわからないわけで、論理的な思考をどれだけしたとしても、世界的なウイルスがあと2年で蔓延しますというような予知はできないわけです。これは不確実性の性質上、そうである一方で、世の中沢山の人がいるわけで、予言を的中させてしまい、生存者バイアスが働くということもあるわけです。

もっと詳しくいうと、未来には不確実性が多少なりとも存在するわけで、AとB、どっちに転ぶかは可能性でしかありません。論理的考えたら、Aが95%の確率で起こり、Bが5%の確率で起こるとすれば、ほとんどの人はAが起こりうる未来であることを信じる一方で、なぜかわからないけどBが来そうと思う人もいます。そして、実際にBが来たるべき未来だった時に、Bを選択していた人は成功をするのですが、一方でAが未来だった時はほとんどの人はやっぱりな、Bが来る未来だなんて考えた人はおかしい、といったように考えるかもしれません。これは、確率が低い方に賭けろと言ってのでもなく、論理的思考を放棄してどっちか直感で選べと言ってるのでもありません。論理的思考は、僕ら人類がここまで発展してこれた最大の武器であり、これから未来を創ってために必要な思考方法です。

だからこそ、どんな未来を実現したいのかというビジョンが何よりも重要で、出発点だと考えています。ここがズレていると、戦略、戦術レベルでの大きなズレにつながり、勝てるものも勝てなくなるし、来たるべき未来を見誤っていると生き残っていけないと思います。そして、それは意思決定者に依存するというのが僕の考えです。意思決定権を持っているというのは、同時に責任も負っているわけで、下した意思決定に対して責任を追うので、最終的には自分の考えを通す必要があるためです。そのため、常に自分がより良い意思決定ができる状態、あるいはチームや事業部、なんなら会社レベルでもより良い意思決定ができるようにアプローチをすること、この状態を高いレベルで保つことが非常に重要で、難易度が高いことだと思います。

個人とチーム

これまでの僕の考えでは、すべてのチームが正しい戦略、正しい戦術が論理的に導きだすことができたと仮定しても、全てのチームのプロダクトが成功するわけではないと述べてきました。これをさらに考えを進めると、チームに所属する一人一人の行動、つまりカルチャーがプロダクトの成功に起因していると考えるようになりました。

マンガ『キングダム』に学ぶ、組織のリーダーが心に刻んでおきたい言葉――大事なことは全部マンガが教えてくれた

不朽の名作「キングダム」に「戦は“数”じゃねぇ、“人”だ。」という名言があります。これはサービス創りにも同じことが言えます。あえて、"サービス"と書いているのは、開発だけではなく、セールスやマーケティング、すべてについて個の重要性が言えるためです。キングダムでは、主人公の信が個の武で窮地を突破するシーンが非常に心を熱くしてくれます。今はチームの時代と言われている通り、チームで戦うことで圧倒的な成果を残せるは確実でしょう。もちろん、そういう領域もあると思いますが、少数の天才が個人でゴリゴリ進めていくよりも、チームで目標を決めて連携を取って進めていく方が成果につながり易くなっていて、それはサービスを創る上での複雑性や不確実性がかなり高まっていることに起因しています。また、サービス規模にもよりますが、高い山を登ることを目指し大規模サービスにスケールしていくためには、チームで物事を進めることが非常に重要です。しかしながら、個人的には戦略や戦術がどれだけイケていても、最終的なアクションを起こすのは、各チームメンバーです。マネージャー層がすべての意思決定に対して細かく見て判断するという意思決定プロセスでは構造的にスピードが出ないのと、意思決定に必要な情報が複雑化しているので、良質な意思決定は情報を一番持っている人がすべきだとすると、やはり個々の細かいアクションに対して意思決定をしている一人一人が非常に重要になっていると思います。

そのため、論理的な思考ができるかみたいな素養も大事ではありますが、自分達のカルチャーに合うかどうか、そしてカルチャーを浸透させることに常に脳や時間のリソースを割くことをサポってはいけないと思っています。カルチャーは広い概念ですので、ここでは日々起こるアクションの場面における、行動指針と定義しましょう。何か、考えてアクションを起こす必要があり、且つ複数の選択肢があった時に、どう振る舞うかという思考様式です。有名な行動規範にGoogleの「Don't be evil」があります。2018年に行動規範から外され、「Do the right thing.」になったようですが。解釈が難しいかもしれませんが、要するにGoogleほどの力を持った企業では、利益追求のために周りから邪悪だと思われるような行動もやろうと思えばできてしまうわけです (超短期的な視点に立脚していても) 。もはや社会インフラを創っている会社だからこそ、正しくあろうということを社員に求めているのだと思います。このような行動指針が、日々の意思決定の際や何か不確実性が高いことに向き合った時、プロダクト創りの過程で自分の在り方を見直す時、何か新しいことを始める時、すべてに影響をしてきます。

優れたプロダクトが長期で使われている裏には、優れた組織カルチャーがあると思っているのですが、素晴らしい人たちが集まったとしても絶対成功するとは断言できないのが難しいところですが、根底には素晴らしいカルチャー、個人の武とチームとしての結束が不可欠だと思っています。

勝ちにこだわる

最後に、最もこだわっている「勝つ」ことについてです。結局、どれだけ頑張って、どれだけ周りへの説明が上手かったり、仕事の進行がお手本だったとしても結果が伴ってなければ何の意味もないと思っています。もちろん、全てにおいて勝つということではなく、学習する組織で最終的に勝利を収めればいいと思っているのですが、最終的にも何も成果が出ない、あるいは今までの戦況を大逆転するようなものではないと、勝ったとは言えないと思っています。今までの自分は、普段周りにどう見られているかとか、言語化の度合いとか、仕事の進め方について結構気にしていたのですが、結果的に何も残せないと何も恩返しできていないと考えるようになりました。自分に意思決定を委ねてもらった分、圧倒的な成果で返すべしと思っています。もちろん、全てを完璧にこなして、華麗にゴールを決めるというのも一つだと思いますが、どれだけ泥臭くゴールに執着してみっとも無かったとしても、ゴールはゴールだろう、むしろ無失点で勝てませんでしたというのは避けたいです。

全打席ヒットを打つ、起用されたら必ずゴールが取れるという野球選手、サッカー選手は一人だっていません。そのため、全ての機会に対して、勝つというのは無理があります。しかしながら、全ての機会において学びを得ることはできます。学びを得て、次に活かして最終的な成果に結びつければいいと思っているので、無理やりにも勝ちにこだわってしまうのは勝率は高いけどパッとしないという状態になってしまうため危険です。

そして、自分が目指している姿としては「奥原がいるプロジェクトはなぜか上手くいく」という価値であり、働いているみんなが活き活きとして、自分達も成長していける在り方です。ここには、プロダクトの成功、成長が欠かせないと思っていて、成長しているからこそさまざまな課題が出てきて、難易度も上がっていき、打席に立てる回数も増えると思っています。

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