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【勉強会報告】婦人科がん・乳がん患者さんへのセクシュアリティ支援②

【勉強会報告】婦人科がん・乳がん患者さんへのセクシュアリティ支援①
からご覧ください。

11月16日に行った「明日から使える基礎知識!がん患者のセクシュアリティを支援する」の第2部の講義の内容です。
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●性交痛の成り立ち
性交痛は不安や恐怖、痛みなどで性反応が抑制され、潤滑液が欠乏したり、膣壁が伸びないことで生じます。痛みがあると性的興奮が抑制され、さらに潤滑液が減っていきますし、痛みの記憶が性欲を抑制するという負のスパイラルが生じるのです。エストロゲンが欠乏すると外陰も薄くなり傷つきやすくなりますし、血管が減少することで膣潤滑液が減少してしまいます。
不安や恐怖などに対しては、器質的な原因を探るとともに精神面でもアドバイスすることが必要です。

●HRT(ホルモン補充療法)
卵巣機能欠落、治療による卵巣機能抑制による性機能障害を根本的に治療するのは、「ホルモン補充療法」ですホルモン補充療法によって血流が少ない白い膣が、約1ヵ月でしっかり色づきます。一般的にホルモン補充療法はエストロゲン補充を指しますが、テストステロンという性欲をつかさどる男性ホルモンも補充することもあります。
乳がんでは原則禁忌で、エストロゲンができない場合の対策は先ほどもお伝えした通り、潤滑ゼリーやゼリー付きコンドーム、シルデナフィル(これは男性のED治療に使われるお薬ですが、男性の勃起と女性の膣潤滑は同じ機構なので、女性に対しても使われることがあります)の使用です。そのほか症状が強ければがん治療医師と相談の上で膣内エストロゲン療法を行います。ある研究の結果ではアンドロゲンを加えることで、乳がん再発を増加させず性機能を改善されることが分かりました。また、海外で行われた研究では乳がん治療後の性機能障害への介入法の比較では、レプレンズ(乳酸入りゲル、市販で売っています)とエストリオール膣坐剤との組み合わせで性機能の改善を認めたという結果もあります。膣に入れる局所療法は血中への移行が極めて少ないので、基本的に乳がんの再発率増加はないと考えられます。4~12週間ほどで状態の改善が図れます。

婦人科悪性腫瘍では45歳未満の閉経は死につながる心血管系・骨粗鬆症のハイリスクとなるため、少なくとも平均閉経年齢まではホルモン補充療法が推奨されています。手術操作によって突然に閉経することで、更年期障害や精神的障害が重症化しやすいことがあるため、適切にホルモン補充療法を行うことが必要です。

しかし婦人科悪性腫瘍でもホルモン補充療法の禁忌があります。それは血栓塞栓症既往、エストロゲン依存性腫瘍の担癌状態(治療前でがんがある状態や進行期)、その疑い、低悪性度子宮内膜間質肉腫です。卵巣顆粒膜細胞腫や子宮肉腫、膣腺がんに関しても慎重に投与する必要があります。

テストステロンは男性ホルモンの一種ですが、卵巣から分泌され、性欲だけでなく、活気などを保つ役割があります。女性でテストステロン補充を行う研究は少ないですが、本当に卵巣機能を補うのであれば、本来は含むべきです。しかし日本ではあまり行われていないかもしれません。

大川先生_1

●性機能障害への支援について
ここまで性機能障害についてお伝えしてきました。されそれでは支援の話にうつりたいと思います。Shoverによると性機能障害についていつ話をするか、というのは初期治療が経過観察に入る前がよいとされています。しかし治療開始前にがんや治療のためにセックスができないことにならないことを伝えることが大切です。治療によって知らず知らずのうちに性生活をきっぱりやめてしまう人がいるからです。一般的な注意として化学療法中は感染と避妊に十分気を付けましょう。

性機能障害への対策は心理的社会的ケアももちろん大切です。まずは聞くこと、女性は特にパートナーシップの視点が重要です。男性パートナーも女性のがんで精神的ダメージを受けていることを忘れないようにしましょう。

PLISSITモデルは性相談モデルの基本です。P=Permission(性について相談を受けますという医師表示をすること)、LI=Limited Information(基本的な情報提供)はどの医療者にも求められています。ぜひ今日の勉強を生かしてください。

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PLISSITモデルの表

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