あの頃

僕が中学生だった頃の父の年齢になった

あの頃父は毎朝仕事に出かけ、
夜遅く酒を飲んで帰ってきて
家でまた酒を飲んで、
家族が寝たあとに寝て
また朝になると仕事に出かけていった

優しい人だった
時々、酔っ払って、
学校はどうだ?頑張れ
大人になったら何するんだ?
なんでもやりたい事をやれ
父親のマニュアルに書いてありそうなセリフを
いうことがあった

それが嬉しかった

でも時々は、
会社で嫌な事でもあったのだろう
ベロベロに酔って
上司や同僚の悪態をついたり、
子供に絡んだりすることもあった
それは、めんどくさいなと思っていた

本当にたまに父に時間ができると
一緒に出かけた

神保町の古本屋
秩父宮ラグビー場

ウイスキーの小瓶をポケットに入れて
ちびちびとやりながら
口数は少なかった

いつもは入らないような
洒落た喫茶店に連れていってくれた
コーヒーが800円もして
ケーキ頼んじゃって
ほんとにいいのかなと思った

今なら、彼の気持ちが
少しはわかるような気がする

日々忙しくて、時間がなくて
穏やかでありたくても
できないこともある
いつも疲れている

不安だらけだけど、前に進むしかない

彼の歳に追いつく頃
また何か見えるのかもしれないと思う

見守っていて欲しいとなんとなく思ってきたが、確かに見守られているなと今は思ってる

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