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知らぬ子とサッカー

図書館が6:30に閉まり、7時から開く自習室に入るため、

門の前に座って、読みかけの「パンセⅠ」を読んでいた。

空調の音と足音以外ほぼ音のない図書館から出て、

台湾の夕方の生暖かい風と小鳥のさえずりが疲れてサバサバした脳を潤した。

するとそこに、ボヨボヨのバレーボールをコツンコツンと蹴り進む少年とその母親がやってきて、

少年は図書館前の5段ほどしかない階段相手にパスの練習を始めた。

母親はそれを夕陽のようにやさしい目で見ており、

私は栞を本に咥えさせ、その二人を見ていた。

するとその母親が「ごめんねにいちゃん!読書の邪魔になったでしょ!」

と言った。

私は、いえいえ、そんなことはないですよと返した。

私は続けて、「一緒にボール蹴っていいですか?」

と尋ねた。

久しぶりのサッカー、

最近は勉強ばかりで、視力の悪化が著しく、近づいてくるボールがやけにブレて見える。

7歳から18歳まで続けてきたサッカーに対する愛を思い出した。

その少年は8歳で、私は自分が幼かった時、目指した夢や情熱を思い出した。

遠くにあった記憶は、いつまで経ってもこんないも鮮明に見えるものなのか。

あの監督がパスの出し方を教えてくれて、ご飯を死ぬほど食べさせられて、倒れるほど走って。

自主的に朝練をして、みんなで励まし合って、みんなで円陣を組んで、ハイタッチして、守って、攻めて、応援してくれる人たちがいて、笑って、泣いて。

キャプテンを胴上げした瞬間も、最後に泣いた監督の顔も、こんなにはっきり見えるものなのか。

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そうこう考えながら、その子にヒールリフトとマルセイユターンを伝授し、気付かないうちに陽もだいぶ落ちた。

最後に少年がありがとうと共にガムをくれた。

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甘く爽やかな、懐かしい、青春の味がした。




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