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浜ちゃんチャーハンをゆるく再現 高級店の味とまちがえるのもうなずける

おいしそうな情報が電子の糸にぶらさがり、私の目のまえにたれてきた。

いわく、芸能人が高級中華店が作ったチャーハンとまちがえたらしいぞ。

いわく、それを作ったのが、ダウンタウンの浜チャンらしいぞ。

いわく、そのチャーハンを実際に作ってみると、おいしいらしいぞ。

よし、作ってみよう。

浜ちゃんのチャーハンレシピをお家であるものでゆるく再現してみよう。

まずは、青ネギ。みじん切りにしておく。

はじめに青ネギを炒めるスタイルらしい。青ネギをあとから放りいれ、爽快な香りと食感をのこすのもアリだと思う。
はじめにいれるか、あとからいれるか、それは、あなたしだい。

鶏卵。
できれば、青白くなく、地をかけずりまわり、土をついばみ生きている鶏から生みだされた、土色と呼びたくなる殻の鶏卵をつかうとよい。
チャーハンの味が濃くなる。

ラード。
西洋のバター、和食のカツオ節、中華のラード。
むかし、あの肉屋のコロッケは、ラードで揚げているからウマイんだぜ、と聞いたことがある。
たしかに、おいしかった。

紹興酒。
中国のお酒。熟成されクラフトされたコークのような色をしており、ほがらなか甘味が特徴のお酒。
浜ちゃんは、高級な紹興酒をいれるそうだ。高級な紹興酒は、そのままお口にINさせる派である。
ほどほどのお値段の紹興酒を用意しよう。
ちなみに、紹興酒といっしょに角砂糖を提供する中華料理がある。
この店で提供する紹興酒は、二級品デスと宣伝しているようなものですゾ。

ほぼカニのかわりに、ほぼカニに似たカニカマ。
ここで、ひとつ、こぼれ話を。
アメリカで提供されたカニを食べ、そのカニの味をえらく気にいった旅人がいた。このカニは、どこのカニかねと旅人は尋ねる。
カニを提供した人間は、日本のカニだと答えた。
そのカニをたっぷりと食べてやると意気込み日本へとやってきた旅人。
カニカマをたらふく食べ満足したそうな。

ほぼエビのもと。

浜ちゃんは、ほぼエビをいれるそうだが、近場のスーパーで売っていなかったため、ほぼエビのもとをつかう。
暴論と言われるかもしれないが、中華料理の味を濃く厚くしたければ、乾物をいれるとよい。
ただし、乾物は高い。

ほぼホタテのもと。

これまた、ほぼホタテをいれるそうだが、ほぼホタテが売られていない。
なので、代用品としてほぼホタテのもとをいれることにする。
ほぼホタテのもとに、紹興酒をふりかけ、万年肩こりのような繊維をほぐしておいた。

飯がなければ、炒飯は作れない。
日本の米でなく、日本とアメリカ以外でよく食べられている米をつかう。
ぴよーんと細長い米は、頭からっぽのまま炒飯を作ったとしてもパラパラになる。
関税の関係なのか、高いのがネックだが、パラパラの炒飯を作りたいけど、作れないとお嘆きのかたは、細長い米を使うという選択肢もある。
そして、細長い米は、香米と呼ばれていわれている。
細長い米からは、ちいさい白い花のような繊細な香がただよっている。
その香りは、中華料理やスパイスとの相性がよい。

まずは、米を調理しよう。

たっぷりのお湯を沸騰させ、米を静かにいれる。
鍋底に米がくっつかないように、木べらなどで静かにかき混ぜる。
ガチャガチャとかき混ぜると米が割れ、ベトベトになる恐れがある。

3分ほど米をゆでる。そして、ザルなどに米をだし、水気をきる。

3分ほどゆで、水気をきった米を蒸す。
底から水分がぬけるザルなどにいれて米を蒸す。
水分が底にたまる器で米を蒸すと、軽い食感にならずよろしくない。
蒸す時間は、11分ほど。

米を蒸しているあいだに、炒飯の具の用意にとりかかろう。

ラードを中華鍋にいれる。火をつける。ラードが溶けたら、青ネギとほぼエビのもと、ほぼホタテのもとをくわえ炒める。火力は中火から弱火。
ほぼカニに似たカニカマは、あとでくわえる。
カニカマのやわらかい食感と、ほのかな香りと甘味をのこしたいので後からくわえるが、先に焼いてもらってもかまわない。
また、青ネギなどをしっかりと炒めるか、ほどほどに炒めるか、それもまたお好みで。
炒めた青ネギなどは、中華鍋から別の容器(炒飯をもる器)などにとりだしておく。

残った汚れを万能ふきんで、ササッとふきとっておく。

中華鍋にラードをいれ火をつけ溶かす。
さてさて、ここで、問題になるのが火力ではありませぬか。
炒飯といえば、猛烈な勢いの火力で米を空中に飛ばし、サーカスのバイクが、金網で作られた球体のなかを縦横無尽に爆走するように炒める。
そのようなイメージをお持ちではありませぬか。

火力は中火。もしくは、弱火。

猛烈な勢いの火力で米を炒めず、病人のようにじっくりと米と具を炒める。

ラードが透明になり、中華鍋から白い湯気がたちのぼれば火力を落とす。

そして、お箸などでといた卵液を中華鍋にながしいれる。
スクランブルエッグをつくる。そして、スクランブルエッグを炒め水分をとばす。
ポロポロとした状態になるまで炒める。

蒸しあげた米を中華鍋にくわえる。
こびりつく心配のある中華鍋をおつかいのかたは、米に油をまぶしておくとよい。
焦げないように、米や卵が中華鍋から飛びださないように、かき混ぜながら水分をとばす。

炒めておいた青ネギや、ほぼカニに似たカニカマも中華鍋にくわえる。
青ネギなどからも水分がでるようであれば、しっかりと炒め水分をとばす。

日本人であれば、醤油をいれたくなるところだが、とりいだすのは紹興酒。
醤油の香りは、炒飯には、すこし重くうるさいように常にかんじていた。
読者のみなは、どう思われるだろうか。
紹興酒をいれる量は、小さじ1~2ほど。
そして、紹興酒をそそぎいれる場所は、米や具にかからないように、中華鍋のむきだしの黒い部分にそそぎいれる。
紹興酒をいれる、ジュンと熱せられる。液体が微細な泡になり、泡がはじけ、甘い微粒子が舞う。
その微粒子の香りと風味を、米と具にまとわりつかせるように混ぜあわせる。
色が透明なので、なんとなく水気がなくなるまで混ぜあわせる。

水分がとんだころあいを見計らい、ごくごく弱い火におとし塩で味をととのえる。
コショウは皿に盛りつけてからかける派だが、この段階でコショウをかけてもらってもかまわない。
いっきに塩をいれずに、すこしずつ塩をくわえ味をととのえる。
薄味は、調整できる。濃い味は調整できない。
あとは、器に盛りつければ出来上がりだ。

幾多のグルマンな芸能人をうならせてきた伝説の一品の出来上がり。

あまりにパラパラすぎて、形をたもっていられない、それほどに水分がない。
狼の息吹でふきとばされかねない炒飯。

炒飯の香りは軽い。香米と紹興酒の甘い香りが精妙に混ざりあっている。
温かい国に咲く白いジャスミンのような繊細な香りのように感じられた。
その繊細な香りと戯れているのは、ちいさい赤いエビのこうばしい香り。

棒倒しゲームであれば、すぐに負けそうな山のような炒飯をすくう。
スプーンからこぼれた炒飯は、蜘蛛の糸が切れたように、ハラハラとお皿に落ちる。

熟成された楚々としたはんなりとした甘い香りが、鼻の細胞にとどく。

口中に炒飯をかきこむ。
炒飯の重さを舌で感じない。淡雪が手にのったように軽く、はかなげな思い出のようにほろほろしている。
すぐにうまい、と感じることはない。
くにゃりとカニカマがしなり、ネギがシャッキと踊り、エビがこうばしく跳ね、白く軽い舞台ともいえる米を飾りたてている。
炒飯を噛むたびに、じわじわと、悠遊と、帆をたてたホタテの旨味が勃興し、旨味の地図の空所をうめていく。
食感は軽い、けれども、海鮮食材をミルフィーユのように重ねあわせた旨味は重い。
食感は軽くパクパクと食べられる、けれども、幾重にも重ねられた旨味成分は、脳と舌を満足させてくれる。

中華料理のなかでも、広州あたりの日本人に好まれる淡い味付けの炒飯。

高級店の味とまちがえたとしても、しかたのない炒飯でございました。


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