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あの就活相談がなかったら、ライターの道を閉ざしていたかもしれない

2020年12月某日。平日にも関わらず、私は布団にくるまっていた。正しくは、布団にくるまりながら、ある質問票に回答していた。

後輩からの就活相談だ。

大学を卒業してから3年も経っているのに、仕事をほったらかしてなぜ就活相談にのっていたのか説明したい。

さかのぼること、2020年10月下旬。当時の私はWEBメディアを運営している企業で、コンテンツライターとして働いていた。しかし、業務量の多さ・ちょっとした取引先とのトラブル・人間関係の悩み…そんなことが積み重なって、仕事に行けなくなってしまったのだ。

もともとハードワークが得意なほうではなかったのに、無理に無理を重ねてしまったのが原因かもしれない。胸の痛みをはじめとした体の症状やメンタル面でも不調が目立つ。心療内科を受診すると、「不安障害」の診断を受けた。

「しばらく仕事を休んだほうがいいですね。」とお医者さんは言う。こうして、2020年10月後半から3か月、休職期間に入ったのだった。

いざ休職をしてみると、予想以上に何もすることがない。2人暮らしの家事はすぐに終わってしまう。散歩に出かけるも30分が限界。読書をしようとしても集中力が続かない。

結果的に、1日中なにをするわけでもなく家でじっとしている毎日。まぁ、何もしないのが体にとっていいことなんだろうけど…

退屈な日中はある意味疲れるが、夜中は夜中で精神的につらかった。考えなくてもいいことをぐるぐると考えてしまい、なかなか寝付けない日々。「あんなに憧れていたWEBライターにせっかくなれたのに…」「なんでこんなに体力がないのかしら…」と自分を責めたりもした。

しばらくは文章を書くのも嫌だった。3年間欠かさず続けていた日記も億劫になるほど。文章を書いていると、嫌でも仕事を思い出してしまうから。

そんなある日、一通のLINEが届く。2つ下のサークルの後輩からだ。

「お久しぶりです。実は1個下の就活生がどうしても青さんに就活相談したいと言っていて…青さんが以前勤めていた企業を志望しているみたいなんです。お時間あれば、就活相談にのってもらえませんか?」

このLINEを読んでいるときも、たしかベッドの上だったはず。「就活相談か…キラキラしている大学生が私なんかに相談して大丈夫だろうか」と心配になったのを覚えている。

ただ、このときは本当に時間があり余っていたのも事実。「参考になるかどうかは本当にわからないよ?」としつこいくらい念押しして、就活相談にのることになった。

就活相談といっても、就活生と実際に会って話すのではなく、就活生が作成した質問票に回答するというもの。すっかり顔を合わせるものだと思っていたので、ちょっとびっくりした。

質問票に目を通すと、「仕事のやりがいはなんでしたか?」「若手社員は活躍できますか?」といった質問がずらり。当時のかすかな記憶を頼りにしながら、質問票を埋めていくことにした。

質問票を書き進めているうちに、思ったことがひとつある。当時勤めていた会社を懐かしむ…のではない。「文章を書くのって、こんなに楽しかったっけ…」驚き6割・喜び4割の気持ちだった。

頭の中に書きたいことがどんどんあふれてきて、タイピングが追いつかない。「こっちの表現のほうがわかりやすいかな?」「でもこうしたほうがいいかも?」と独り言が止まらない。時間を経つのも忘れるほど、質問票の回答に没頭した。

質問票を書き終えたあとに、書く仕事を続けたいと心から願う自分に気付いた。この質問票に回答したところで正直1円にもならないけれど、私の文章が誰かの役に立っている。こんなに素晴らしいことをここで終わらせるわけにはいかない、と強く思った。

書くことが嫌いになりかけていたけれど、就活相談のおかげでまた書くことを好きになれた。再び、ライターとしてのエンジンがかかったのだ。

それから、WEBメディアの会社は休職期間が明けたあとに退職。現在は、フリーランスのWEBライターとして日々書き仕事をしている。

仕事をするうえで、どうしてもやる気が出ない日もある。そんなときは、あのときの就活相談を思い出す。「私の文章が誰かの役に立っているなら、やるしかないでしょ」と自分を奮い立たせているのだ。

#エッセイ

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