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豊かな夜

夜は豊かなものらしい。あたたかくて小さな光の下で、本を読んで、ティーをして。お話しして。時には涙をながして。こうして過ごすのが夜なんだって、あなたが言う。
そのとおりと言ったけど、本当のところよくわからなかった。夜は戦場だ。いつも備えていなければならない。朝が来るのをじっと待っていたそのときは、あなたがちがう世界にいるように思った。

いまは小さな家に一人住んでいる。
わたしは相変わらず、耳をそばだてて、何かに備えている。
でもニーナ・シモンのアルバムが、まどろみの中流れている。淹れたメープルティーの香りがただよう。
これはもしかしたら、豊かな夜かもしれない。そう思った。

あなたの言ったことは、同じ世界のことだった。とても大切なことで、そしてとてもすてきなことだった。

ありがとうを込めて

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