omame

猫をよくかくかもしれない。 よくわからない。

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猫をよくかくかもしれない。 よくわからない。

最近の記事

angry

楽しいときはわかりやすい。うれしいことがあったら、うれしい。楽しかったら楽しい。かんたんだ。 悲しいときは涙がでる。でないときは、よくわからない。涙がでるまで、自分が悲しいかなんてわからない。 怒っているときは、よくわからない。おなかをこわして、何もできなくなった。どうやら、あの出来事が嫌だったみたい。そうしてやっと、自分が怒っていたことを知る。怒っていたのかもよくわからない。でも、嫌だったことだけは、おなかが教えてくれる。 おなかは、最初はきらいだった。どうしてこんな

    • 讃美歌

      讃美歌が歌えなくなった。 口も身体もうごかせない。おかしいな。 会場の隅に座って、じっとみんなを見つめよう。みんながゆれて、わたしもゆれる。みんなは聖霊にみたされたようで、とてもきもちよさそうだ。 わたしがゆれたのは、きもちかったからではない。怖くてしかたなかったからだ。 その声たちが、ゆれが、今もこだまする。 わがままだ よわっちくてどうしようもない いわれたこともできない ああ なんてわがままな子 何をしても、この讃美歌は消えてはくれない。もうわがままでもいい。好

      • わたしが話したこと

        話せば、わかってもらえると思った。話したことはうそじゃなかったんだ。でも、うまくいかなかった。 その言葉をどう受け取るかなんて、相手次第なことはよくわかっているじゃないか。ただ話したことが、ちがうわたしを作りだしていくだけだろう。 納得いかないわたしは、いやそうじゃなくて、と口をひらいた。さらにちがう自分ができていくだけだった。 そのうち、ちがうわたしにそぐわないことを言うと怒られるようになった。もうそれでいい。口をつぐんだ。 そうじゃないんだけどなぁ そうつぶやいて、ほ

        • わたしの花

          花を家にかざりたいと思った これでいいだろうか あまりにわびしくはないか 必死に探したんだ。 自分のまわりには、いちおう植物が生えているから。 でもあたりにはまっくらで、花があるのかわからない。 フェンスの向こうには緑が広がっているのだろうか。わたしにはあまりに高くて、遠くて、行けそうにない。 冷たい風がふいているから、はやくこの花をもって帰ろうと思った。 小さな花ともいえるかわからない、わたげの花をもって帰る。 雨が降ってきた。雨風でわたげも飛んでいく。いそげばいそぐ

          善意のあとには

          あなたのために用意したの あなたは若いからわからないんだよ あなたならわかってくれると思ったのに あなたのために言ってるのよ どうして わからないの どこまでも重くてどこまでも正しいひと あなたの笑顔はきれいなはずなのに わたしにはどこまでもうそくさく どこまでもおそろしくみえます どうして 耳を傾けてくれないのですか あなたがみているのは いったいだれですか わたしはそこにはもういません あなたの善意のあとに わたしの居場所はありませんから

          善意のあとには

          夜の顔

          昨日は夜に出かけなければいけなかった。 夕暮れどきには外に出たくないのに。仕方ないとはいえ、これから夜がくるのをどうしてみていないといけないのか。 夜は、人間が元気になる。 日々の鬱屈をはらそうと、ギャハハと笑う集団がちらほら。1人で荒ぶって人に当たっているやつもちらほら。 あとはそれを横目に死んだ顔をして急ぎ足で帰る人。わたしである。 車もミサイルかと思うほどぶっ放して通っていく。 豊かな夜はどこにも見えない。どこにでもあるはずなのに、わたしの目には豊かさを入れる余裕さえ

          夜の顔

          くもりの日には

          今日はくもりの日だ。 これから雨になっていくかもしれないし、晴れていくかもしれない。でも大抵、雨になるだろう。ゆううつだ。天気に左右される自分も、所詮は人間かとぶつくさいいながら、スマホにうつる自分をみる。 二重顎のむすっとした顔。 でもこのあいまいとした天気が案外好きかもしれない。 湿っているのか、風がないのか、嵐の前の静けさなのか、カラッとしているのか、冷たい風が強く吹いているのか。これからどうなるんだろうかと、肌で考える。 ときどき当たって、たまに外れる。笑顔はない。

          くもりの日には

          札をさげて

          おまえはわがままだ どうしてそんなにわがままなの わるいことをしたのかもしれない。でもなにがどうわるいのかを教えてはくれない。なにがいけなかっただろうか。 わたしは、こう思った。わたしは、そうは思わない。ウソをつくのは罪だって、先生が言ってた。だからまじめに話したんだ。 返ってきたのは、わがままということば。だれかを傷つけたのなら謝りたい。いい子でいたい。でもなにがわるいのか、ばかな自分にはわがままだけじゃわからない。 わたしは学ばないので、また口を開こうとした。平手打

          札をさげて

          よわいものは

          ただじっとして ただ見つめる ただ立ちすくんで ただ涙をながす ただ隠れて 時がすぎるのをまつ どこまでも弱くて小さい人 小さな人は見続けている ずっとずっと目を逸らさず、逸らすこともできず、目撃し続けている こんな強い人がほかにいるだろうか

          よわいものは

          ういている

          ういている。どこにいても、どんなときも。 うくだけでも、浮き輪がなければういていられない。必死に、なんとかういている。 じいちゃんが死んだ。ずいぶんと前のことだ。義理の父は少しずつ弱っていった。葬式の日には涙がでた。でも彼は、いたはずなのにいないようだった。 彼はそのあとに、人が死んでいくのはこういう感じなんだと思った、と言った。まわりはざわつき、水は乱れ、あなたの妻はひどく傷ついたと言った。 わたしは、何がいけないのかわからなかった。わたしも、そう思っていた。 そんな彼は

          ういている

          豊かな夜

          夜は豊かなものらしい。あたたかくて小さな光の下で、本を読んで、ティーをして。お話しして。時には涙をながして。こうして過ごすのが夜なんだって、あなたが言う。 そのとおりと言ったけど、本当のところよくわからなかった。夜は戦場だ。いつも備えていなければならない。朝が来るのをじっと待っていたそのときは、あなたがちがう世界にいるように思った。 いまは小さな家に一人住んでいる。 わたしは相変わらず、耳をそばだてて、何かに備えている。 でもニーナ・シモンのアルバムが、まどろみの中流れてい

          豊かな夜

          不在

          わたしはあなたに会わないと言った あなたは、無表情のまま、なんにも言わず去っていった わかっていたことだった ずっとそうだったじゃないか わたしは、何もないところに向かって、ことばを出しただけだ わたしには準備が必要で、準備ができた日には、あなたに会えるかもしれない あなたはその日まで待っていてくれるだろうか そのとき微笑んでくれるだろうか そうだとしても、なににもならないだろう そうだとしたら、とっくの昔に応えてくれただろう でも、それはあなたが決めればいい わたし

          空気がゆれるとき

          空気がゆれる、わたしがゆれる。自分がゆらす、まわりがゆれる。楽しいな。うれしいな。小さいころは、そう思っていた。 ある日、わたしは空気をゆらすのはこわいと思うようになった。大きくなったからなのかもしれない。 攻撃的になっている人間は、遠くにいても空気をゆらしてズンズン進む。感情的な人間は、空気がゆれるのを今か今かと待っている。 大きな声も、大きな音も、大きな感動も、空気をガラリと変えてしまうだろう。その場が、その人の空気に変わるだろう。 それがとてもこわい。それまで落ち着い

          空気がゆれるとき

          あさ

          彼は朝方に目を覚ます。顔を洗って、湯加減をみながらお湯をはる。バスソルトをふりかけて、浴槽のふちに腰掛ける。足湯が彼の日課のようだ。お湯があたたかいと思った。でもその程度のことだ。 今日はふっと、鏡にうつる姿が目に入った。いつもの無表情だと目を逸らそうと思ったら、おどろいて鏡をよく見た。 彼がこっちを見て、静かに微笑しているように見えた。こんなことはあまりない。 彼は足湯をしてきもちかったのだ。

          わたしの木は、木のくせに根をはらないでひん曲がっていて、誰も近づこうとしない。 まわりの木々は根を張っているかのようにまっすぐ立って、みんなが下に集まっている。 でもいいんだ。あなたがいいんだ。 昼がすきだ。あなたが地面に放りだしている根っこに座って、あなたの木陰から、あなたの見る景色を一緒に見れるから。 夜はきらいだ。夜になると木々はどこかにいってしまうだろう。嵐がやってきて、雨が肌にあたって痛い。でも別に何もない。その様をただ見ているだけだ。 夜明けもきらいだ。嵐が去

          ことば

          言葉にならないこともあるが、 言葉ににするのは大切だ 言葉にしてみないとはじまらない  そういう人はすでに歩いていて、ついでに言葉にしているだろう。言葉にしたらうごめく何かしかないなんてことにはならないんだろう。  ことばは自分を座らせる。そいつはあんたを睨んで離さないだろう。それでは、あまりに風がない。 倒れていても息をしたいのに、動けなくても立っていたいのに、歩いていたいのに。 ことばに殺されるとは思わなかった。

          ことば