友達以上恋人未満の話

「恋人」という関係だったことは一度もない。


それに近い、それ未満の関係はずっとそうなのかもしれない。

こういうのをたぶん「友達以上、恋人未満」っていうんだと思う。

私のイメージだと、その言葉ってなんかもっとネガティブで未練たらたらであきらめの悪い感じだったんだけど。
でも彼はかなり私のことをわかってくれているし、なによりもこの人は彼氏でもないのに全部ばれる。隠し事をしようとも思わないけれど、大体のことは読まれている。逆もそうだ。
本心は言葉から捕まえられるし、話していれば調子が良くないことも察しがつく。



出会いは大学のサークル。仲良くなるのに時間はかからなかった。みんなのたまり場となった彼の家に私もよく遊びに行っていた。
関係が変わったのはその年の冬で、彼の前で初めて私が泣いたことがきっかけだと思う。けど私たちは一度も付き合ったことはない。


理由はたった一つ、「タイミングが合わなかった」こと。
私の大親友が、彼を好きだったから。彼女は当時PTSDを患っていたし、いつ崩れ去ってもおかしくない様な脆さだった。
「私がここで横取りをしたらどうなってしまうかな」
とか、
「そこまでしてこの手をつかまなきゃダメかな」とか考えてしまって身を引いた。
あとになって気がついたんだけど、恋か友情かで友情を取るタイプだったってことみたい。
まぁ、結局彼女も彼とは付き合わなかったけどね。


私たちの関係に名前がついたのは、そこから2年経ったクリスマス。もともと都合のいい関係ではあったけど、別の意味で都合のいい関係に堕ちたのだった。いつも通り、友達でもいられる。でも二人になれば関係が変わる音がする。そんな関係を卒業までの1年半続けていた。


近くにいなくなった今も、精神的な関係は変わっていないように感じる。男女の関係がなくなっただけで、毎日続くわけではない必要な時だけ手に取るような関係。徹夜明けの朝にエナドリを飲むような、処方薬のような。不思議な関係だよなと、赤い甲羅を投げながら一人で考えた、そんな夜だった。

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