過保護な二人

君は仕事柄あちこちへ行く。ある日は房総半島の端っこへ、ある日は富士山の山頂へ。
君から「無事帰ったよ」の連絡がきて胸をなでおろすのもようやく慣れてきた。
私のことを「幼稚園児だから心配」と君はよく言うけれど、私だって君のことは心配だ。
仕事はきっと君のことだからそつなくこなしているだろうなと思うけれど。
君はうっかり無理をしてしまうタイプだし、不摂生ばっかりだし(私が思うに)。今日はちゃんとご飯食べたかなとか、よく眠れたかなとか、気圧低いみたいだけど頭痛いの平気かなとか、床でばたりと寝てしまっていないかなとか。あげたらきりがない。

「過保護だね」と君は笑っていたけれど、そばにいて見える暮らしじゃないから仕方がないじゃないか。今日だってまた、多少無理して仕事にいっているのを私は知っている。そして君は何よりも人を頼ることが下手だし、マルチタスクになるとあれこれうまくいかなくてイライラを募らせていることも知っている。だから私は、ちょっとでも異変に気付け
るように生きていきたいし、あれもこれも心配するし、いろいろ言うけれど。
それだけ君のこと大切だって思っているんだよってことが、どうか少しでも君に伝わっていますように。



「あの幼稚園児を野放しにしていて大丈夫だろうか」と、帰すときはいつも思う。たぶん、意外としっかりしているはずだから、仕事はそつなくこなしているだろうと思う。でも彼女がそつなくこなせる一番の理由が猫かぶりなことを俺は知っている。彼女がしんどい時ほどヘラヘラごまかすのは昔からの癖だ。その反動ですぐ体調に出るのに、それが彼女
なりのかわし方なのだろうな。彼女の場合心配なのはストレスの捌け方だ。昔から下手だなと思っていたけれど、うまくなっている様子はない。前に「ハグはね、ストレスの3割を溶かすらしいよ!」と言っていたことがあったけど「あ、でも君近くにいないや、ダメだ」とストレスの捌け方としては不採用になっていたっけ。結局一番心配なのは溜めこみ
癖のある彼女の近くにいられないことかもしれない。
「君はそこの管理上手にしてくれてるよね」と笑ってくれていたけれど、どこまでできているもんか不安なのも事実だ。俺にできることなんて電話とかで話を聞いてやるとか、時間が取れるときに会ってハグしてあげるとか、そんなことしかない。「君だって過保護だね」と彼女は笑うけれど、君の痛みに一番に気付いて寄り添いたいと思う俺は変なのかな。
たぶん、久しぶりに「大切」を見つけてしまったから、「過保護」になってるのかもな。






まぁでも、それで君が毎日笑って少しでも元気に過ごしていけるのならそれでいいかな

おわり。

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