百合は夜
百合には夜が似合います。
暗闇の中にぬぅと現れる白い肌に、蜜で濡れそぼった突起。俯きがちな視線も腰をくねらせたような茎も、さながら女体のように見えます。
その官能的な様子から、以前は百合が娼婦のように見えていました。どうして聖女の象徴なのかしら?なんて疑問に思ったり。
感じ方が変わったのでしょうか。今は娼婦ではなく、健気な市井の娘に見えます。切実に誰かとの愛の交わりを求めているただの女に。そのために彼女は自身の蜜をつまびらやかにみせているのではないかと。
娘が切なげに蜜を垂らしているその隣で、別の百合はすでに受粉期を終え、ひっそりと朽ちてゆこうとしています。そしてそのまた隣では若く溌剌とした百合が新たに花開いたところです。
同じ一本の茎から咲いている三者三様な彼女たちの表情はまるで女の一生を物語っているような。はたまた一人の女の持つ多種多様な顔を見ているような。
深夜にそんなことを考えていました。
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