ちちんぷいぷい童貞
ちちんぷいぷい童貞を奪われた本を思い出した。
今日は、運営拠点の現場に立つ最後の日だった。そんな感慨深くも、春休みの子どもたちの溢れ、じっとしにくい日に荷物が届いた。図書室に買い足した本だった。段ボールを開封し、計20冊ほどを並べる。その中に『じごくのそうべえ』があった。
実家にあって4~5歳のときに読んだ、えらく記憶に残ってる絵本だった。落語演目『地獄八景亡者戯』を題材に描かれた作品で、死んで地獄に送られたそうべえたちがあばれて、鬼たちにあきれられ、地獄から追い出されるトンチ話である。パラパラめくって中身を確かめると、あるページに書かれた言葉がハッとした。
「ちちんぷいぷい」
地獄の釜湯の灼熱がこの呪文によって、ちょうどいい湯加減の極楽湯に変わってしまう。「ちちんぷいぷい。この単語と意味の怪しさについて知ったのは、じごくのそうべえだったのか」ビリリと自覚した。痛いときのおまじないとしてではなく。
大人になると見知ってるものが増えすぎて、その新鮮さを忘れてしまう。はじめてを奪ってくれるものが世の中にはたくさんあったはずなのに。そこにあるのが当たり前のように大人AIが処理してしまう。よろしくはない。
自分が変わったとしても、名作という呼ばれるような作品は微動だに変わらない。変わらないものを目の前にすれば、変わったものを量ることできたのだった。
ちちんぷいぷい ケガレよケガレよ 飛んでいけ。
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