アイスが溶けて、夏が終わる
棒から滑り落ちて、食べかけのガリガリくんがアスファルトに痕を残した。
地面に落ちたアイスは、なぜか溶けるのが遅く感じる。
まるで落とした私を責めるみたいに。
棒を咥えて、木の味を噛み締めると夏の終わりを感じる。
何もできなかった夏。
誰もいなかった夏。
水族館も花火大会も足が痛くなって大嫌いだけれど、
水族館の帰り道に電車から観た海と、火薬の匂いは好きだった。
あの頃、毎日のように『夏が終わる』、と後ろを振り返った。
いつの間にか、夏が終わるって感じなくなったな。
ひとつひとつの出来事が、無意味に感じて、特別じゃなくなって、どうせ終わってしまうのになって、虚しくなる。
わたしは小さな特別を数えられなくて不幸になった。
この瞬間を見つめなきゃ、幸せは感じられないって、あの頃のわたしはなんで知ってたのかな。
アイスが溶けて、夏が終わる。
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