うどんはドーナツとマリアージュできるのか
いつだったか、イオンモールでブラブラしていた時のこと。
賑わう休日の昼下がりに、食事でもとろうかとフードコートを散策していた。
進行方向を向く視線が4人掛けテーブルに着席する若者のグループを捉えたとき、驚くべき光景を目にした。中高生くらいの男子4人組が、ラーメンや丼など各々好きなものを食べていたのだが、その内の1人がなんと、
ドーナツをおかずにうどんをすすっていた。
正確に書くならば、ミスタードーナツのシュガーレイズドをおかずに、きつねうどんを食べていたのだ。
一体お前はどんな家庭環境で育ったのだ。お父さんはミスド勤務で、お母さんはうどん屋勤務の家庭なのか。それとも逆なのか。
いや、家庭環境はどうでもいい。というかおそらく普通の家庭だろう。そもそもお父さんがミスド勤務でお母さんがうどん屋勤務の家庭はいたって普通の家庭である。しかしお前は異常だぞ。左手にドーナツ、右手にお箸て。お前が右利きなことだけはわかった。
さも当たり前のようにドーナツを頬張り、その勢いでうどんをすする姿は、ハンバーガーにかぶりつきコーラを流し込むような、ピザにかぶりつきビールを流し込むような、もしくはブルーチーズをひとつまみしてフルボディの赤ワインを口に含むような、いわゆる食事のマリアージュを楽しむような、そんな手つきだったのである。
僕が知らないだけで、最近の若者の中では流行りの食べ方なのか、とも考え、残りの3人の様子を伺ってみたところ、
全員、引いていた。
やっぱりお前は異常だよ。完全に浮いてるじゃないか。仲間を見てみろ。顔引きつってるぞ。
仲間の視線もどこ吹く風で黙々と食事を続けるその男子は、ついにドーナツもうどんも平らげ、満足そうな顔を湛えた。
一部始終をずっと見ていた僕は途中で、あることに気がついた。彼は小脇に、ミスドの持ち帰り用の箱を隠し持っている。つまり、箱の中にはまだシュガーレイズドがいくつか入っていて、家に帰ったあと、ミスド勤務のお父さん、うどん屋勤務のお母さん、弟と妹の家族5人で、ドーナツ片手にうどんをすするつもりなのだ。こんなことが許されてもいいのか。
食文化というものはまことに種々様々である。自分の固定観念だけで判断して、他所の文化をみだりに批判していいものではない。とは言え、とは言え。
ここで本稿のタイトルに立ち返りたい。
「うどんはドーナツとマリアージュできるのか」
みなさんはどう思いますか。僕なんかはこう思います。
いや、無理だろ。
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