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R・マドリーの左サイド対PSGの右サイド等。「サイドを制するものは試合を制す」が該当する試合の数々

 直近の5シーズンで4回優勝した川崎フロンターレは、その前に一時代を築いたサンフレッチェ広島(2012年〜2015年シーズンの間に3度優勝)とは、サッカーのスタイルが決定的に違っている。

 現在J1で川崎と首位を争う横浜F・マリノスも、近しい関係にあるのは川崎だ。

 広島の前に一時代を築いた鹿島アントラーズ(2007年〜2009年シーズンを3連覇)は、川崎的でも横浜FM的でもなかった。広島的でもないが、川崎、横浜FMに比べれば、広島に近い。

 J1の覇者が実践するスタイルは当然のことながら、近年ほど世界的な視点に立っても今日的なものになる。高い位置からボールを奪おうとするサッカー。それが連続して決まれば、サッカーは自ずと攻撃的になる。

 プレッシングを意識すれば、その出鼻をくじきたくなる。4バックを布くチームなら、2人のセンターバック(CB)が間隔を広げながら、同時にサイドバック(SB)を押し上げてくるので、そこを潰しに掛かるのが効果的とされる。相手SBに対峙するようにウイングを配置するスタイルの流行が、プレッシングの流行と重なる理由だ。サイドを制するものは試合を制する。当時、欧州サッカーを取材すれば、多くの監督や評論家から、そうした概念を聞かされることになった。

 サイドを有効に活用するサッカー。サイドの特殊性を活かしたサッカーでもある。サイドの特殊性とは、そこがボールを奪われにくい場所であることだ。片側はタッチライン。ボールコントロールを誤り、ボールがタッチラインを割れば相手のスローインで再開されるが、少なくともそこで一呼吸入る。攻守が即刻、入れ替わり、ピンチを招くことはない。あるレベルに到達した選手にとってサイドは、相手に奪取される危険が低い、いわば安全地帯なのだ。

 両サイドのスペースを使ってボールを運ぶ行為をサイド攻撃と言うが、それはリスクの少ない攻撃と同義語である。サイド攻撃を重視すべき理由の一つであることは言うまでもない。

 川崎は家長昭博というキープ力の高いウインガーが右サイドに張る。そこへ右インサイドハーフ、脇坂泰斗、右サイドバック(SB)山根視来がサポートに入り、3角形が成立すると、狭い局面でもパスがくるくると回る。

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