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日本のストロングポイントを打ち消す、非プレッシングな森保采配

 オーストリアのグラーツで行われる国際親善試合対メキシコ戦(現地時間11月17日)を数時間後に控えた段階で、この原稿を書いているが、4日前のパナマ戦(11月13日)の残像は依然として、脳裏に焼きついたままだ。ピッチに描かれたその好ましくないデザインを払拭できずにいる。

 好ましくないデザインとは、特に前半、日本の最終ライン付近に描かれた相手との、人数の関係だ。相手FWより+1人ではなく、+2人以上で構えることになった、後方に人員を必要以上に割いて守ろうとする消極的な姿勢だ。

 相手が強すぎて、そのパワーバランスで自然に下がってしまったのならやむを得ない面もあるが、相手のパナマはさして強くない、言うならば格下だ。にもかかわらず弱腰になった。日本が自ら進んで意図的に引いたこと。さらに言えば、この種類の好ましくないデザインを描くのは、これが初めてではないこと。こうなることは予想されていて、その通りに事態が進んだこと等々に、問題の根の深さを感じさせる。

 森保監督が3バックを採用すれば、サッカーは守備的になる。森保式3バック(3−4−2−1)に、そうした傾向が強いことは、彼が代表監督に就任するずっと前、かれこれ20年以上前から、この世界では常識になっていた。後方に引いて構える守備的サッカー=非プレッシングサッカーを、それでもあえて行いたいのなら、そうはっきりと口にすればいい。古典的な手段を用いる理由を雄弁に語ればいい。

 だが、それを避け、曖昧な言葉を用いて濁している森保監督。臨機応変な……、柔軟な……、一つのやり方ではなく……と言って、4−2−3−1と3−4−2−1を試合によって使い分けている。プレッシングと、古典的な非プレッシングを、だ。

 後ろに多く人を割けば、前に人は少なくなる。マイボールに転じても、攻撃陣へのサポートは遅れる。攻撃は彼らの個人能力頼みになる。3−4−2−1は4−2−3−1に比べ、前線の人数が1人不足しているので、5バック(5−2−2−1)の状態が長く続けば、前線は孤立する。カウンター狙いといえば聞こえはいいが、攻撃は魅力的になりにくい。

 しかも、パナマ戦で先発した前線の3人(1トップ=南野拓実、2シャドー=久保建英、三好康児)の3人は、そうした縦に速いカウンター狙いのサッカーに適した人材ではない。典型的な技巧派だ。さらに久保と三好はドリブラーであるにもかかわらず、ウイング然とタッチライン際の高い位置にポジションをとっていたわけではないので、彼らの足元になかなかボールは収まらなかった。ドリブル得意な技巧派が力を発揮する環境ではなかったのだ。

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