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無知の知とソクラテス

 とある日に、デルフォイのアポロン神殿の巫女が、この世でソクラテスがいちばん賢いと言った。それを人伝に聞いたソクラテスは、なぜそういわれたのか不思議であった。

 というのもソクラテス自身は、自分は正義や善や美の意味など、なにも知らないのにという自覚があったからだ。それを確かめるために、ソクラテスは方々に行っては、いろんなヒトに論戦をしかける。

 最終的にはそれが原因のひとつになって、死刑判決を受けてしまうのだが、ソクラテスは自分がなにも知らないことを知ることが、本当のかしこさなのだという考えにたどり着くのである。

 ようは他のヒトによくみられるために、ハッタリこいたって意味ねえじゃんということだ。ただそれを自覚するだけならよかったのだが、他人のハッタリまで暴いてしまった。

 他のヒトによくみられたいと願うニンゲンにとって、ハッタリがヒトに露見されるということは大きな屈辱である。よくみられたいという思いが強ければ強いほど、その屈辱の大きさは増し、それにつれて恨みも大きくなる。

 ソクラテスは知に重きを置きすぎ、人情に疎くなり、ある意味で自滅してしまったのだった。

今日のところはこれまで。ごきげんよう。
この呼吸がつづくかぎり、僕は君のそばにいる。

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