ビートルズ解散の原因は税金!?

●名曲「タックス・マン」は税務署員への皮肉


世界でもっとも売れたバンドであるビートルズ。
 
実は彼らは「税金」に非常に悩まされていました。
「税金問題」が解散の原因の一つにもなっているのです。
 
あれだけ売れたのですからビートルズには莫大な収入が入っ
てきました。
もちろん、その収入に対して、巨額の税金が課せられました。
当時のイギリスの税制では、労働党政権のもと、個人の所得
には高い税率が課せられていました。
ビートルズのような高額所得者には80%以上の所得税が課
せられ、さらに付加税もあったので、90%以上が課税され
ていたのです(この高税率は1979年のサッチャー政権に
よる税制改革まで続きます)。
 
戦後の先進国の所得税というのは、だいたいこれくらい高い
ものでした。
日本でも、バブルくらいまで高額所得者の所得税率は80%
前後あったのです。
 
当時は、東西冷戦真っ盛りのときであり、共産主義革命を恐
れて、西側諸国では富裕層に高額な税金をかけていたのです。
そのバチをもろにかぶったのがビートルズだったというわけ
です。
 
ビートルズは苦労を重ねてやっと手にした富の90%以上が
税金で持っていかれたわけです。
筆者は「金持ちはそれなりに税金を払うべきだ」と考えてお
り、昨今の先進国の税制は金持ちを優遇しすぎていると思っ
ていますが、この時代のビートルズの税金に関しては同情す
べき点があると思われます。
 
ビートルズのような芸能ビジネスというのは、当たり外れが
大きいものであり、今売れていても、いつ売れなくなるかわ
かりません。
だから、他の高額所得者と同じように、高い税率を課せられ
ると、かなりシンドイことになるのです。
 
食うや食わずの生活をして、やっと売れても、ほとんどを税
金に持って行かれる、そして売れなくなったからといって返
してくれるわけではない、となると、芸能人にとって“税金
対策”は、緊急課題となります。
 
ビートルズのアルバム「リボルバー」には、「タックスマン」
という曲が収められています。
これは、当時のイギリスの税金の高さを皮肉ったものです。
 
もちろんビートルズは、考え付く限りの方法で節税を行ない
ました。
アップルというレコード会社の設立と失敗、メンバー同士の
裁判沙汰など、ビートルズの歴史の後半には、不可解な点が
多いですが、税金問題を通してみるとその謎が解けてくるの
です。
ビートルズの後期の活動は、「節税」が軸になっているのです。
 
ビートルズはデビュー後すぐに高額所得者になっていました。
ビートルズはデビュー3年目の1965年の時点で、ジョン
とポールが400万ドルずつ、ジョージとリンゴは300万
ドルずつの資産を持っていたとされています(ジョンとポー
ルは作曲印税があったので、100万ドル多かった)。
 
当時の日本円換算で、ジョンとポールが14億4千万円ずつ、
ジョージとリンゴが10億8千万円ずつ持っていたことにな
ります。
当時は今より物価は安かったので、相当な資産だったといえ
ます。

●映画「HELP!」がバハマ諸島で撮影された理由


マネージャーのブライアン・エプスタインは、かなり早い時
期からビートルズの節税に関しても非常に気を配っていまし
た。
ジョンとポールが受け取る楽曲の著作権印税も、ジョンとポ
ールが直接もらうのではなく、レンマックという会社を通じ
てもらう、という仕組みにしていました。
 
ジョンとポールが、著作権印税を直接もらうと高額の所得税
がかかります。
そのため、著作権印税は一旦、レンマックという会社に入り、
レンマックからそれが配当という形でジョンとポールに支払
われるようになっていたのです。
普通の収入よりも、配当金収入の方が税率は低かったからです。
 
レンマックというのは、ジョン、ポール、ブライアンの三人
で作られた会社で、株はジョンとポールが40%ずつ、エプ
スタインが20%持っていました。
 
またこのほかにも、ジョンはハンプシャー州のスーパーマー
ケットを買ったり、リンゴは建設会社に投資したりしていま
した。
 
1965年ごろからマネージャーのブライアン・エプスタイン
はビートルズの収入を課税率の低い外国の口座へ分けて振り
込むようにしていました。
 
また映画「HELP~4人はアイドル~」は、バハマ諸島でロケ
が行われましたが、これは節税策も兼ねていたのです。
ビートルズは、主演映画も制作し、大成功を収めていますが、
この「HELP」というのは第2作目です。
アイドル的で、コメディータッチの映画ですが、全編にビー
トルズの演奏シーンがちりばめられています。
 
この映画の撮影場所となったバハマ諸島は、“タックスヘイブ
ン”と呼ばれ、税金の低い地域です。
 
ビートルズは、バハマで映画の仕事をしたことにして、収入
もここで貰い受けるようにしたのです。
そのため映画「ヘルプ!」の収益は、バハマの会社キャバケ
イド・プロダクションズに支払われました。
キャバケイド・プロダクションズは、ビートルズと「ヘルプ
!」のプロデューサーが共同出資した会社です。
 
そして映画の出演料をバハマのナッソーの銀行に預金するこ
とにしていました。
そうすれば、イギリスの税務当局から文句を言われなくても
済むのです。
~ビートルズ解散の原因は税金?2に続く~

※この記事は拙書「お金の流れで読み解くビートルズの栄光と
挫折」(秀和システム)から抜粋したものです。
よかったら手に取ってみてください。
 

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