「命売ります」読んだよ!

三島由紀夫著の「命売ります」読みました。実は二度目だったりします。三年くらい前に初めて読み、三島由紀夫って面白いじゃ~んと思った記憶があります。
最近何かでこの本を見かけて、面白かった記憶はあるけれどどんなお話だったっけ?と思い出せなかったので、再読しました。

主人公の羽仁男(はにお)が自殺未遂をしたところから物語は始まります。
ある日カフェで新聞を読んでいたところ、羽仁男はゴキブリが新聞の文字に紛れ込む幻覚を見ました。それから何もかもが無意味に思えてしまい、自殺を企てたのです。
これ、ゴキブリが新聞の文字に紛れ込んで何もかも無意味に思えて自殺しようってなるの、え?!って感じでしたね。いや、生きていることも何もかも無意味に感じられ、生きている意味も無いのではないか?と感じられて自殺を思い立つのはまだ分かります。ですが、ゴキブリが新聞の文字に紛れ込んで…?!という点が意味不明でしたね。ゴキブリが新聞の文字の羅列の中に消えていった、有象無象と同一化してしまった、世の中何もかも所詮そんなものだ、という意味だったみたいです。後ろの方で、「最初から意味あることと思っていて後に無意味と悟って傷付くのは実に無意味~」みたいなことが書いてありました。何はともあれ、羽仁男はこの現象から人生に意味のあることなど無いと悟り、自殺してしまおう、となったのでした。

一度自殺を試みるものの、幸か不幸か助かってしまった羽仁男。それでも生きる気分にはならなかったらしく、誰かに殺してもらおう!みたいな感じで自分の命を売り始めます。
とある組織のボスと浮気している恋人を殺してくれだの(その過程で羽仁男は死ぬかもしれない)、毒薬を飲む不可思議な実験に参加してくれだの、吸血鬼(ホンモノ)である母の食料になってほしい、だの。
様々な依頼が飛び込んできますが、羽仁男はどの依頼でも生き延びてしまいます。
莫大な報酬を抱えた羽仁男は、商売を一休みするために家を借りて静養を試みます。
その借りた家にて、ある女性と懇意になります。
ところが、その女性が羽仁男との将来を語っているのを聞き、羽仁男はこんな凡庸な、無意味な未来を歩むなんて耐えられないみたいなことを思います。
…まぁ、ゴキブリが新聞の文字に埋もれていく幻覚を見て自殺を企てるような人ですから、そう思うのも無理はありません。
そしてその晩、女性に毒を盛られて心中を図られますが、羽仁男は一歩手前で勘づき未然に防ぐことができました。
昔の「命売ります」なんて広告を出してまで死にたがっていた頃と矛盾していることに気付くのでした。

心中未遂を機に女性は段々と気がおかしくなってしまい、羽仁男は恐怖を抱き、女性から逃げたいと思うようになりました。
ひょんなことをきっかけに羽仁男は逃亡に成功し、後ろから付けられていないかと気にしつつ、居場所を転々とします。
同時に、逃亡先のホテルの部屋に不審者が訪ねてくることが度々あり、ひょっとして自分は本当に命を狙われているのではないか?と恐怖を抱きます。
彼曰く、本当に生と死の瀬戸際をさ迷っているからこそ、死への恐怖を抱くのだとか。
めっちゃ生きたいやつやん…ですよね。

追いかけられているのは羽仁男の思い過ごしでは?と思っていたのですが、本当に追いかけられていました。
結局、羽仁男は謎の組織に捕まえられてしまいます。
それはなんと、一回目の依頼の時の恋人の浮気相手の組織なのでした。
その組織は、羽仁男が「命売ります」の広告を出した頃から、こいつはこの広告でカモフラージュして我々の組織に潜入しようとしている人間(警察とか)なのでは?と警戒していました。
こじつけも甚だしいですね。
一人目の依頼主はこの組織の手下だったようです。
そこからこの組織はずっと羽仁男を監視していたのですが、なんせ強い先入観があるので、羽仁男の何気ない行動でも「こいつは上手く隠しているけど実は…」みたいな感じで勘繰り、妄想を広げていました。
この妄想具合が現実と上手く噛み合ってて面白かったです。

謎の組織は羽仁男に正体を明らかにするよう脅しますが、謎の組織の言い分は全て幻想です。
羽仁男は、「実は今爆弾を持っている」(実際には持っていません)と、正体を暴露するくらいなら謎の組織を道連れに自分も死ぬとハッタリを仕掛けます。
それを恐れて謎の組織が逃げ出した後、羽仁男は一人で脱出するのでした。
命からがら逃亡した後、羽仁男は近くの交番に駆け込み、命を狙われているんだ!と助けを求めます。
交番は一応警察署に引き継いでくれますが、誰も羽仁男の言うことを信じてはくれません。
結局、羽仁男はイタズラをしていると勘違いされ、匿ってくれとの頼みも聞いてもらえず、放り出されます。
途方に暮れた羽仁男は空を見上げ、涙で目が滲み、数々の星が一つに見えた、という描写で物語は幕を閉じるのでした。

自殺未遂から始まり、自分で死ねないのなら誰かに殺してもらおうと自分の命を売り始めたものの、物語中盤以降は命が惜しくなり、最終的には殺されたくない、死にたくないと生にしがみつく羽仁男でした。
死にたがってた癖にいざ本当に殺されるとなったらやっぱり怖い、みたいな話なのかなと思ったのですが、一時は死にたいと思っても時が経てば気も変わる、という話なのかな?とも思いました。
解説に答えが書いてあると思うのですが、読めてないんですよね…。
何はともあれ面白い本でした。
所々読めない漢字はありましたが。

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