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還暦過ぎの男が観た「虎に翼」あるいは「かかあ天下」という欺瞞

NHKの朝ドラ「虎に翼」がとにかく面白い
そしていたるところに散りばめられた、恐ろしく用意周到な「男の意見感想排除策」に幾度も唸らされ、それが一種の快感にもなっている(変態か!)

男の感想排除の最もたるは、寅子の「生理が重い」件で、たとえば僕だって、女性の生理については、当事者から振られた場合を除き、女性のいる席でその件に言及することは絶対にない、というかできない
女性からしても同じでしょ。生理に関して男から何かを(それが労いであっても)言われたくないでしょ

それにしても今週(第6週)は凄かった
兄のせいで(※)、父親のせいで、夫のせいで夢を諦めざるを得なくなる女性たち
翻って、果たしてどれだけの男が、姉のせい、母親のせい、妻のせいで何かの夢を諦めたことがあったのか

虎に翼は男のしたり顔の意見を排除しつつ、実は男に多くを語りかけているドラマでもある
金曜日の最後の寅子の台詞がまさにそれ
「そうしたいと思います、いえ、一緒にそうしませんか?(うろ覚え)」

しかし恥ずかしながら僕はとてもヘタレで小心者なので、公の場で声高に持論を述べることはできない
はっきり言ってしまえば怖い
せめて身近な場で、女性差別(蔑視)的な言動に意見するのが精一杯なのだけど、それだって「尾内は面倒くさいやつ」と煙たがせれているのはむろん承知してるのさ

さてタイトルですが、日本には「かかあ天下」という表現があって(西日本の方は知らないかなあ…)、家では妻が威張っていて実権を握っているような意味合いなのだけど、むもん実際問題そんなことは絶対になくて、男社会の単なる処世術、「いやあ、家じゃ妻に頭が上がらなくてねあはははは」という自身の寛容さをアピールするトークの一つに過ぎないのは、みな既にご承知のこと

そこに何度も何度も被せてくる挿入歌「モン・パパ」
まさにかかあ天下な夫婦関係を表したこの歌を唄うとき、何故か寅子は子供のように無邪気に振る舞う
無邪気に歌われるからこれがフィクションであることが皆に伝わる
フィクションだから男も喜んで踊る

でも「かかあ天下」が本当になったから?

梅子の夫が、試験当日に離婚届を突きつける
利口な男は女性が最もダメージを受けるポイントを心得ている

今はもうやってないけど、一時期DV被害者のサポート活動を手伝ってたことがあって、その際、男らの驚くべき悪知恵の数々を見聞きした

絶対に覆られないから笑って許せる「かかあ天下」
しかし男社会、つまりは家長制度を少しでも崩そうとするならば、男らは(女子供相手でも)全力で牙を剥く
司法試験に受かった寅子らを、待ち受けるのは桂場の言う通り、間違いなく地獄なのだろう、そう「男社会という地獄」

来週以降も楽しみだけど、たぶんとても辛い内容になるのだろうね


※ここは意見が分かますかね。国籍・侵略・国策のためとか
だけど妹を巻き込んでしまったのは事実だし、これが姉弟だったらあまり聞かないケースと僕は思ったので「兄のせい」としました

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