見出し画像

映画『うみべの女の子』にやられて半日寝込んだ

やられすぎて、苦しすぎて、こんなん夜中に一人でみるもんじゃないわ。と思った。

実写化が発表されたときは不安しかなかった。あの内容がどう映像化されるのか。
原作の漫画は、必須科目みたいに読んだけど、"青春の一冊"というほど読み込んでいたわけでもなかったから、「観に行くかー」となんとなく思っていたら、ぬるっと上映期間が終わっていた。

口コミも原作ファンの評判もSNSでちらっと見かけても深くは触れずにいたので、実写化が成功に終わったのかどうか分からないまま月日が経っていた。

あれから一年。
なんの巡り合わせなのか、絶対にみよう/みなくてはと思うまでに至った。

きっかけはドラマ『マイファミリー』の主題歌『それを愛と呼ぶなら/ Uru』のMVだった。(『マイファミリー』めちゃくちゃ面白かった)おすすめに表示されて見始めると、ストーリー形式のMVで、メインの役を演じている俳優さんから目が離せなくなっていた。
まず、顔立ちが、人生で一番好きだった人にそっっっくりだった。それに加えて演技もうんっっまくて、わずか5分間のストーリーにぐっと入り込ませてくれた。終わり頃にはびっくりするくらい胸が苦しくて、え???MVで???と戸惑った。

ビデオの時代だったら擦り切れるくらいには、何度も何度もMVをみた。
その後、名前から事務所、過去の作品などネットに挙がっている情報は調べ尽くした。(青木柚さんという方だった)

過去の出演作は、すでに売れっ子と言ってもいいくらい有名な作品にバンバン出ていた。私が見ていた朝ドラにも。そして、出演作品のひとつに目が留まった。

「え、うみべの女の子の磯辺????」

改めて、一年前に見かけていたはずの『うみべの女の子』(実写版)のビジュアルを見て驚いた。
MVでは短髪のシーンが多かった彼が、長くてモサっとした前髪に、ずっと同級生たちを見下しているような目つき。線の細い身体。完全に、あの、磯辺だった。

調べたところ、たぶん撮影時期の青木さんは19〜20歳くらい。おかしい、おかしすぎる。完全に中学生の、厨二病の「磯辺」だった。
(そして小梅役の石川さんもバッッッチリ小梅すぎた)

これは、、、みなくては。みたい。
でも、、、、心配なことがあって躊躇していた。

この俳優さんにガチ恋してしまうのでは???

まず、UruのMVすら、数日後には胸が苦しくなりすぎるからという理由でもうみれなくなっていた。
これまでアイドルや芸能人にガチ恋したことはないし、情報を調べたり作品をみているだけで苦しくなったり、過去のインタビューを全部漁ったり、インスタの投稿をぼーっと眺めてしまうことなんてなかった。

とりあえず、とりあえず一旦寝かせよう。
本当は今すぐにでもみたいけど、週末にゆっくりみよう。
そう決めてからはすぐにTimeTreeをひらいて金曜日の夜23:00に「うみべの女の子」と予定を入れた。

今思えば、本当に正解だった。
次の日が平日だったら、仕事なんてできなかったと思う。そのくらい、現在の私(土曜日)はやられている。

そして金曜日。
友達と2杯だけお酒を飲んで帰ってきて、ほろ酔い状態でパソコンとハイボールを用意した。

部屋はオレンジ色の小さな灯りだけにした。
準備は完璧だ。


ここから感想(ネタバレあり)

教室にいた小梅はあのままの小梅で、小梅が磯辺と目が合うと、画面の外にいる私まで胸がギュンッとなった。
いるいる。こういう男子、いる。
磯辺は「そこらへんにいそうな男子」なのに、目線とか寡黙さとかがあいまって「ちょっと他の男子とは違う男子」でもあって、胸をギュンッとさせる。

実写化が決定したときに一部(?)ざわついたのは、やはり性描写がメインともいえるほど重要な要素だったからだと思う。(しかもメインの登場人物は中学生)

結論からいうと、R15指定で、原作にほぼ忠実な頻度でセックスシーンがある。
でもこれ、すごいのが、ぜんぜん興奮しない。
小梅と磯辺がしっかり中学生に見えるからというのもあるし、みている人を興奮させようとしている撮り方でもない(と思う)。うみべの女の子をみたことがない人に言いたいのは、あらすじだけでやめないで!!!描かれているのはただのエロじゃないから!!!ということ。

磯辺に対して気持ちがあるのかないのか。なんでこんなことをしているのか。小梅本人も分かっているようで分かっていない。そんな気持ちの曖昧さが、雑すぎず、でも愛情を感じすぎないセックスシーンから伝わってきた。

小梅が磯辺に冷たくされると、私まで胸が痛んだ。
小梅の言動や心の動きには心当たりがあった。

自分が一番可愛くて、雑に扱われたら悲しくてむかついて暴れ回りたくなって、身体は大人になりきれていないのに色々知りすぎていて。
私は中学生の頃なんて本当に子どもで、小梅みたいな経験なんて全くなかった。笑
それでも、誰がみても自分の人生のどこかのシーンに重ねてしまうような"心の動き"が描かれている。

磯辺は、"磯辺側の人間"と"小梅側の人間"で分けている。私も磯辺側になりたかった。背負いきれない何かを抱えていて、"小梅側の人間"を馬鹿にするような人。

でも、そんな磯辺も、実は可愛いところがある。たくさん。小梅と仲良くなりたくて告白したり、小梅に「なんでも話してよ、力になるから」と言われて嬉しくなってキスしようとしたり。
こんなことしちゃだめだ、許されない。と思いながらもいつも小梅とセックスしてしまうところも。

そんな磯辺の一番可愛いところであり、私が一番好きなシーンは、小梅が磯辺の家に泊まった日の夜中、2人の会話。
(セリフは曖昧、正確に知りたい人はぜひみてください)
「一年生の時、なんで告白したの?」と小梅に聞かれた磯辺は「あの頃の佐藤は、ちっちゃくて大人しそうで真面目そうで、仲良くなりたかった」と答える。
「ごめんね、こんなんで」と答える小梅に「悲しいよ」と返す磯辺。

「何が悲しいって、お前はきっと高校へ行ったら今日のことなんてすっかり忘れて、それなりの男を見つけて初めてみたいなセックスするんだ」

うわーーーー、忘れてほしくないんだ。
あんなに小梅に冷たい態度とったり怒ったりしてたけど、小梅の記憶に残りたいんだ?!?!
か、可愛い。。。

そして分かるよ、小梅はちゃっかり次々に新しい男みつけるタイプだし、磯辺のことなんてすぐ忘れそうだと思うよね。
最悪な言い方すると"メンヘラビッチ予備軍"っていわれるような女の子だもんね???
でもね、磯辺、大丈夫よ。
何人としても、いろーーーんな人に出会っても、小梅は絶対磯辺のこと忘れないよ。わかる。

小梅は高校生から大人になって結婚するまで、絶対そこそこモテるし、彼氏作ろうと思えばいつでも作れるタイプ。それは絶対そう。
でも、だからこそ、自分のことを突き放した大好きだった人のことは忘れられないから。
あの頃、磯辺の部屋でみたパソコンとか本とか音楽を手がかりにずっとぼんやりと磯辺のこと探し続けるから。磯辺の趣味っぽい喫茶店に行って「たまたま会えないかな」って思いながらはっぴいえんど聴いたりしてるから。地元に帰ったときは、磯辺みたいな髪型と体型の人を見つけては目で追って「違った」って毎回落ち込んでるから。
その間、彼氏も旦那もいるけど、磯辺は別枠だから。磯辺だって、それを望んでたよね???

磯辺、あなたの去り方、めちゃくちゃ正解だよ。一生忘れられない去り方してる。


映画がおわったのが朝の4時。
外はピンク色になっていた。
自然と「今頃、小梅と磯辺はどうしてるかな?」と素で考えていた。物語に入り込みすぎていたんだと思う。

ピンク色の空をスマホのカメラで撮って、インスタに載せる。たった一人に見てほしくて。

ちょっとだけ出た涙をティッシュで拭きながら、まだ少し残っていたお酒をシンクに流した。

夜中に一人でみてよかった。

この記事が参加している募集

おすすめ名作映画

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?