見出し画像

終わった恋の話

初めて先輩と話した日

大学生の時に好きだった人は、友達のサークルの先輩だった。

私はその友達といつも一緒にいたから、その先輩を見かける機会もとても多かった。
犬っぽい顔をしてて、背が高くて、笑うと目尻がシワシワになる人だった。
いつも2人が話しているのを見るだけで、直接話したことはなかった。

だけど、なんとなく、この人のこと好きになりそうだなあと思っていた。

そうは思っても、相手は私のことなんて眼中にないだろうし、実際にどうこうなることはないだろうなと思っていた。
だから好きになってくれた同級生と付き合っていたし、自ら先輩と関わろうとはしなかった。

ある日、図書館で勉強していると、たまたま目の前の席に先輩が座っていた。
いつもは友達と一緒にいるときだけ会える先輩。
初めて1人の時に会えたから、なんだか嬉しかった。
さっき買ったばかりのチョコを口実に、初めて先輩に話しかけた。
チョコを受け取った先輩は、いつもと同じように目尻をシワクチャにして笑った。
その笑顔が私に向けられたのは初めてだった。

初めて先輩と話せたのが嬉しくて、その日は一日中気分が良かった。

すれ違ったら話す関係

それからは、たまたますれ違ったときに話す関係になった。

なぜか私たちは、びっくりするくらい偶然会うことが多かった。

よく会うものだから、立ち話の時間もどんどん長くなっていった。
お互いのことを色々と知るようになった。

先輩がアルバイトしていたアパレルショップに行ってみたいと思った。
メンズのお店だったから、そのとき付き合っていた彼氏を連れて行った。
利用してごめんね、心の中で彼氏に謝った。

同じ気持ちだった

初めて話した日から一年近く経った頃に、私たちはようやくラインを交換した。
その頃には、私はもう彼氏と別れていた。
ずっとメッセージのやりとりをして、毎晩電話もした。

先輩には彼女がいた。

知っていたけど、「実は少しいいなと思っていたよ」と伝えた。
「僕もずっと思っていた」と言われた。
「いつから?」と聞くと、「図書館でチョコをくれた時から」と答えた。

まさか先輩も、そんなに前から好意を持ってくれていたなんて思いもしなかった。

嬉しかった。
先輩も驚いていた。

お互い同じことを思っていたと知ってからは、すぐに会う約束をした。
良くないこととはお互いわかっていた。
それでも会いたい気持ちを抑えられなかった。
会う日まで待ちきれなくて、あと何日だねって毎日言い合った。

毎日連絡を取る中で、同じ本を好きなことがわかっていた。
趣味も似ていた。
初めてのデートでは美術館へ行き、好きな本の話をした。

2回目のデートで初めて関係を持った。
「慣れていないし、彼女ともまだしたことがない」
そう言っていたけど、すごく優しかったし上手かった。
全身にキスをしてくれた。
すごくすごく幸せで、時が止まればいいのにと思った。

それから何回かデートをした。

でも、結局先輩は彼女と別れなかった。

連絡も来なくなった。

私のこと好きだって言ってたのに。
彼女とは別れるって言ってたのに。
彼女よりも好きって言ったじゃん。

先輩が上京してから一年後、私も上京した。

今は、大好きな彼氏がいる。結婚しようねとも言われている。

それでも、またどこかですれ違わないかなぁと、たまに考えてしまっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?