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私を救ってくれた言葉

2年前、好きな人がいた。
その人とはもう会えない。
だけど、その人のある一言だけはずっと覚えてる。その言葉に、私は何度も救われてる。

その人は大学が同じで、私の親友の先輩だった。
直接話したことはないけど、何度も見かけてた。
彼に挨拶する親友の隣で、黙ったまま、なんとなくこの人のこと好きになりそうだなと思っていた。

「僕も同じこと思ってた」

私たちが同じ気持ちだったことを知ったのは、お互いの存在を認識してからかなり時間が経った頃だった。

それからは、毎日電話するようになった。

でも会えなかった。
彼には彼女がいた。

「前に付き合っていた人に復縁を迫られて、気持ちはないけど情が湧いてヨリを戻してしまった」
「もっと早く、両思いだって気づいていれば・・」

彼はそう説明した。
彼女がいることはショックだったけど、私に気持ちがあるって信じてた。

「彼女とは別れる」「彼女よりも好きだ」「でも、すぐには別れられない」

今なら、よく不倫している人が言いそうなセリフだってわかる。
だけど、別れるって言ってくれたことが素直に嬉しかった。

「別れたら、会おうね」

別れる前に会うのは彼女に対する罪悪感からできないと思った。
だから、彼に「今は会えない」と伝えた。

その後、もっと知りたいから一度だけ会おうと言われ、結局2回会った。
美術館でデートした。


彼は、結局彼女と別れなかった。

未練タラタラだった私は、その後も何度か連絡してしまった。それも、長くは続かなかった。


結局、彼と私の間には何も残らなかった。

と、思っていた。

私は今年、社会人になった。
初日から在宅ワークで、会話もすべてオンラインで行われる。

そんな中、たまに自分の声が反響してスピーカーから聞こえる。

うわっ

瞬時に嫌な気持ちになる。

私は、自分の低い声が嫌いだ。
ずっとコンプレックスだった。

でも、そんなときに、好きだった彼の言葉が頭に浮かぶ。

毎日電話していた頃のある日、私は「自分の声が低くて苦手なんだよね」と彼に漏らした。

彼はこう言った。

「そうかな、落ち着いてて、僕は好きだよ」
「あんまり高い声だとうるさいしね」

他を貶して褒める手法はあまり好きじゃないけど、このときは特別だった。
高い声が羨ましい、低い声なんて、と思っていた私に対する思いやりだと分かったから。

今までも、あった。
「ハスキーボイスがかっこいい」とか。
「歌うまそう」とか。

でもそれらの最後には全部(笑)が付いているように聞こえた。

こんなに真っ直ぐ、私の声を、私のコンプレックスを褒めてくれる人は初めてだった。

だから、自分の声にうってなることがあったときは、「僕は好きだよ」って、彼の言葉を思い出す。

これからも、この言葉が私のコンプレックスを支えてくれるはず。

今はもう会えないけど、ありがとう。









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