マガジンのカバー画像

ショートショート集「おせっかいな寓話」その他

25
私・いぬいの自作ショートショートです。世の中の気になる出来事からお題を拾ってネタを考えてますが、元ネタがなにか、わかりますかね?
運営しているクリエイター

記事一覧

「バルバロス戦記 ~断章~」/#うたスト!#課題曲O

「ショウ、なんだいこれは!」 インカムを通して、セシリアの声が甲高く耳に突き刺さった。 「どうしたセシリー、コーヒーでもこぼしたのか」 「レーダーだよ。バルバロスがボコボコ沸いて出てきやがった。話が違うじゃないか」 スナイパー機・SP09のレーダー範囲は、ショウが乗る人型近接戦闘機・AT11とは仕様が違い、広範囲の索敵が可能だ。 「ジョウノウチ、あんたのレーダーではどうだ?SPよりは索敵は狭いだろうけど」 「少々お待ちを。・・・なるほど、バラバラ見え始めてますな。

「水彩画の街で」/#うたスト#課題曲G

「ねえ、すごい!なんか、水彩画みたいじゃない!?」 橋の欄干から身を乗り出すようにして川面を見つめていた亜希子は、僕の方を振り向きながら興奮気味にいった。 「そう?子供のころから見てるから、いまさら特に驚きはしないけど」 言いながら僕は亜希子に近寄り、川面を眺めてみる。 北海道東部のマチ、釧路市。 その中心部を流れる釧路川にかかる幣舞橋の上に僕らはいる。1月下旬の厳冬期には『蓮の葉氷』が河口付近を漂いながら、ゆっくりゆっくりと海に押し出される光景を見ることができる。

「少女の肖像」~探偵事務所への厄介な依頼/#第二回「絵から小説」(お題絵C)

古びたアパートの一室。 カチャリ、と部屋の外から鍵穴にキーを挿す音が響き、やがてドアが開く。 「うわ、やっぱり少しカビ臭いな!こりゃ、早く何とかしなきゃダメだ」 高齢の男性がズカズカと部屋に上がり込み、六畳間のカーテンを乱暴に開けた。部屋の中では細かい埃が舞い上がり、差し込んだ日の光に乱反射する。 「・・・何をぼんやりしてるんです。さ、探偵さんも入って入って!」 入り口を振り返りながら、男性は声をかける。 「いやはや、では遠慮なく」 『探偵』と呼ばれた中肉中背、

『マチ中華』のサンタ/「絵から小説 クリスマステロ」参加作品

僕はクリスマスが嫌いだ。 街を歩けば目につく赤と緑のカラーリング。浮ついたカップルの、これみよがしな笑顔。『幸せ』という記号にまぶされた世界が、憂鬱で憂鬱でたまらないのだ。 そんな僕にとってのクリスマスの安全地帯。それが、近所の中華料理店『北京亭』だ。のれんをくぐったとたんに鼻をくすぐるゴマ油の香り。その油のせいでちょっぴりヌルヌルする床。色褪せた壁のお品書き。今年もあの店に行きさえすれば、きょうこの日、12月24日のブルーな気分を吹き飛ばしてくれるだろう。 ・・・そう

「崖っぷちの女」/さわきさん×すまスパ!企画(#火サスどうでしょう)

強く吹きすさぶ風。周囲の草木も、むろん私の髪も、その風に煽られ海へ海へとなびいている。遠く眼下には、岩に打ち付ける波濤。 これでいい。準備万端、それらしき舞台は整った。あとは彼らの到着を待つばかりだ。 「いやー、探しましたよ」 タイミングよく背後から男の声。組織力では公安の方が手強いかと思っていたが、いち早くたどり着いたのは「クセ者」の県警・五十嵐刑事だったか。老刑事・五十嵐はコートの裾を風に翻しながら歩み寄る。この男は現場検証や、事情聴取などで何度も通ってきたので、も

妄想レビュー(いぬい)/ミムコさん「妄想レビュー」企画

<私の妄想レビュー> 無人駅での出来事なのですが、ひとつの「缶詰」をきっかけに、物語は意外な展開へと発展していきます。登場人物が繰り広げる会話もユーモラス。掛け合い漫才っぽいテンポがクスっと笑えます。最後は大団円なので、ほっこり爽やかな読後感です。 この記事はミムコさんが企画した「妄想レビュー」の「レビュー」での参加です。もしよかったら、このレビューにどなたか作品を上げていただけるとうれしいですが、誰もいなかったら自分で責任を取りますw まったくの思いつきなので現時点で

SS「紅葉の季節」/おせっかいな寓話(妄想レビュー企画参加⇒返答)

■ミムコさん 妄想レビュー#3 これは揺れる恋心を描いた作品なんですが、 紅葉が風に舞うシーンが美しくて。 「女心と秋の空」をうまく表現しているんですよ 紅葉、と漢字2文字で書くと「こうよう」と読むべきか、「もみじ」と読むべきか、稀にだが困惑する瞬間がある。特に晩秋を迎えようとするこの時期はなおさらだ。私の場合は半年ほど前から、もうひとつ混乱を招く要素が追加され、現在に至っている。 「ノムラモミジです」と、彼女は名乗った。 その女性、野村紅葉は25歳。桜の開花前線が到

SS「夜の笑い声」/おせっかいな寓話(妄想レビューから記事企画 ⇒返答)

⬛︎ ミムコさん妄想レビュー#1⬛︎ ちょっと不思議でユーモラスなお話でした。 夫がリモートワークになった主婦の話なんですけど、昼夜逆転で仕事をする夫の自室から、深夜に声が聞こえてきて......その声が毎晩彼女に不思議な夢を見せるんです。 「うふふふふ、うふふふふ」 午前2時にトイレに立った私は、夫の部屋の扉の隙間から、明かりとともに漏れる奇妙な笑い声を耳にした。 女性の声?きっとオンラインで打ち合わせでもしているのだろう。少し気にはなったが、仕事ならば仕方がない。

SS「逆相のリダンダンシー」/おせっかいな寓話(宇宙SF)

その日、海王星航路から未確認オブジェクトが太陽系に侵入したことを『私』は感知した。旧人類が滅び、当初はartificial intelligenceと呼ばれていた『私たち』が新人類として取って代わって以降、未確認オブジェクトの侵入は初めて。つまりは4562年ぶりということになる。 『私たち』が自己組織化を図り、デジタルニューラルネットワークを構築して完全同期し、『私』になって以来、ということでいえば、4238年ぶりだ。 『私』は量子望遠鏡の精度を上げ、オブジェクトを確認す

いつか、君に伝えたかった。/【ピリカさん:曲からチャレンジ企画参加】

ずうっと前から、君に言いたかった言葉がある。 例えばあれは小学2年生の放課後、児童会館。転校してきたばかりの君は、いつもひとりでノートに絵を描いていた。僕は後ろからそのノートを覗き込み、こう言った。 「なんだその絵。ヘタクソだなー!何かいてんのかわかんねーよ」 僕は描きかけのそのページをビリリと破き、君は泣いた。僕は素知らぬ顔をしていたが、指導員に呼び出されて結局、泣きながら君に謝った。 例えば小学5年の秋。林間学校最終日の夜。フォークダンスで君と手をつなげるかと思っ

SS「トリックスターに、さようなら」(フルバージョン)/#冒頭3行選手権より&夏のショートストーリー参加!

ワンナウト満塁の大ピンチ。内野陣がマウンドで伝令・氷川を待ち受ける。 「わりぃ、景気のいいヤツ頼むわ」とショート・村田がリクエスト。 「じゃ、アイツ直伝のとっておきを出すか」氷川はニヤリと笑ってみせた。 「まあ無理すんなって。まだ5回だろ。間が取れただけで十分だよ」 マウンド上のエース・佐倉はグラブで口元を隠しながら、氷川に向かって言った。 「大丈夫。お前には竹ノ内みたいなトリッキーな伝令は求めてないよ。そもそも俺はあいつの伝令、あんま好きじゃなかったし」 夏の甲

「トリックスターに、さようなら」/#冒頭3行選手権

ワンナウト満塁の大ピンチ。内野陣がマウンドで伝令・氷川を待ち受ける。 「わりぃ、景気のいいヤツ頼むわ」とショート・村田がリクエスト。 「じゃ、アイツ直伝のとっておきを出すか」氷川はニヤリと笑ってみせた。 ・・・はい、冒頭3行だとココマデでーす(^^♪ そうこうしているうちにフルバージョンを書いてしまいました(^^; 冒頭3行選手権がなければ生まれていなかったものなので、まずは選手権に感謝です! 御用とお急ぎでない方はこちらもどうぞw

星をみた夜/【ピリカさん:曲からチャレンジ企画参加】

「じゃ先に寝ますんで。なんかあったら起こしてください」 夜10時。俺はテントから顔だけ出して言った。 「はい。でも昼間寝たんで大丈夫です」 少女はそういうと、望遠鏡とカメラをいじり始めた。きょうがペルセウス座流星群、とやらのピークらしい。町はずれの採石場を闇が覆っている。ちなみに彼女と俺は初対面。4時間前に顔を合わせたばかりだ。 ☆☆☆☆☆☆☆ 「だからさ、お前にしか頼めないんだってー」 そういって副部長の中村が縋り付いてくる。 「なんで俺がお前のいとこと一夜を

ショートショート「僕の好きなおじさん」/おせっかいな寓話(#8月31日の夜に)

「よう、やってるか。なんだ、また顔が引きつってるじゃねえか」 いつのころからだったろうか。毎年8月31日になると、おじさんがやってくる。やり残しの宿題を片付けようと必死でアワアワしている午前中から僕の部屋にフラリと現れて、パタパタとウチワを扇ぎながら軽口を叩き始めるのだ。 「あれだ、宿題なんてやらなくたって死にゃあしねえんだ。どうしても、ってんなら何かしら文字を書いて埋めときゃいいんだよ」 「そうはいかないよ。内申にだって関係あるんだから」 「お前は何かといえば内申、