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ゴルフ場のサブスク「Tee Rex」成功するか?

こんにちは、思考力特訓中の恩田です。

本日は以下を取り上げます。

記事によると、

・株式会社オフィスワイズ(本社所在地:東京都港区、代表取締役社長 山田敬三)は、2021年4月8日(木曜日)より、世界初のゴルフラウンドサブスクリプション「TeeRex(ティーレックス)」を開始

・TeeRexは、年会費59,800円(税込)を支払うと平日の4人ラウンドならプレー費無料という、対象ゴルフ場のプレー枠をメンバーがシェアするサブスクリプションサービス

・土日祝特定日、さらに2or3サムラウンドについても、一定の追加費用をお支払い頂くことでラウンド可能

・昨年からのコロナ禍において、ゴルフは密を避けることができる数少ないスポーツとして注目が高まり、若者の参入や休止プレーヤーの復帰など、プレー人口増の兆しも

・しかし、一過性のブームとなることが懸念されているほか、特に若者の新規参入には移動手段の確保や費用の軽減などの課題が多々あります。

・もっと多くの方々に、素晴らしい知的スポーツであるゴルフの魅力を伝え、いつでも気軽にプレーできるボウリングのような国民的スポーツにしたい


ゴルフコースのサブスクサービス。

果たして成功するのでしょうか?


1.ゴルフ場は儲かるのか?

本サービスを見た第一印象は、

「ゴルフ場は儲かるの?リピーターがサブスクに移っちゃうんじゃない?」

リピーター、ヘビーユーザーからすると、都度払いよりも年額59,800円の方が割安であればそっちへ移行したい。

そうなると、ゴルフ場は客単価が下がり減収になる可能性が・・・。

以前の紳士服AOKIやラーメン店のサブスク失敗例が頭に浮かびました。

AOKIの場合は若者をターゲットにスーツのサブスクを始めましたが、実際に利用したのは40代で、この年代はAOKIでスーツを購入していた層。「購入客」が「サブスク客」に移行してしまい、(スーツが売れなくなり)売上が落ちた。

ラーメン屋の場合も同様で、「都度払い」で食べていた客に「サブスク(割安)利用」されてしまい一杯単価は落ちた。

今回のゴルフラウンドし放題もこれらと同じ匂いがします。

売れたら売れただけゴルフ場の経営が悪化してしまうのでは??

どうなんでしょう?


2.ゴルフ市場とサブスクの整合性

上述したようにヘビーユーザーのサブスク移行による収入減は懸念されますが、それ以上にこのサービスによって新規コース利用者が増えれば、収入増になるかもしれません。

その可能性はいかに?

ゴルフ市場から紐解きます

①ゴルフ人口

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予想通り減少してますね。

レジャー白書2020によると2019年のゴルフ参加人口は580万人で2001年の1,340万人から6割減。

人口減ということは新規ゴルファーの割合は恐らく少ない。

そうなると、ヘビーユーザーの減収分を新規ユーザーの獲得でカバーすることは難しいでしょう。

また、仮に若者の参入により新規ゴルファーの割合が高まっているとします(可能性は低いが)。

ただ、そうであってもこの層がいきなり年額59,800円を支払うか?

それこそ敷居が高いでしょう。


②ゴルフ場市場

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オレンジの折れ線がゴルフ場売上の推移です。

17,000億(96年)→13,500億(01年)→9,650億(10年)→8,540億(18年)

減収で推移しています。


ちなみにゴルフ場の数は、

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これはびっくり。

あまり減っていません。

私はてっきり経営難で廃業、減少と想像してました。


市場全体の売上は減少、ゴルフ場の数はそのままということは、1ゴルフ場当たりの収益は悪化している(はず)。

収益悪化に先行き不透明。

現状打破のために何かしなければと思案している中でサブスク案が浮上し、

「やらないよりはやった方がマシ」

といった半ば背に腹は代えられない的な状況でスタートしたのかもしれませんね。

引用
・レジャー白書2020
https://www.ikki-web2.com/archives/5603
・令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(個別スポーツの需要喚起策可能性調査)報告書
https://www.meti.go.jp/policy/servicepolicy/20200331_kobetsusports_chosa.pdf



3.ヘビーユーザーにとってどうか?

最後に既存ゴルファー、ヘビーユーザーにとって本サービスはどうなのか?

先のレジャー白書2020によると、

ゴルフコースでのプレー回数は前年比0・9回減の13・4回、年費用は300円増、0・2%増の14万3600円となり、消費税増もあり費用増に繋がったものと見られるが、人口・回数とも減っている。

年間13回利用で143,600円の費用が掛かっている。

単純に1回平均11,000円。

Tee Rexは年額59,800円なので、仮に13回利用するとしたら4,600円。

かなりお得に感じます。

(もちろんプレー代以外にも費用は発生するでしょうが)

あとは、プレーできるゴルフコースはどうなのか?

現段階では関東近郊で11コース用意されています。
(こちらは順次拡大予定とのこと)

ちなみにいくつかのゴルフ場の平日料金を見てみると、

・修善寺カントリー:4,000円~
・ミルフィーユ:5,400円~
・アローエース:5,450円~
・埼玉国際:7,000円~
※ゴルフダイジェスト・オンラインが運営するゴルフの総合サイト「GDO」で予約した場合

コースによってサブスク1回単価(年13回利用として4,600円)よりも都度払いの方が割安な所もありますが、同じコースばかりより色々回りたいでしょうから、TeeRex利用者はメリットを享受できていると言えるでしょう。


今回の学び

市場の成長、売上増は

「①新規顧客の獲得・増加」と「②既存顧客の単価・LTVの向上」。

このいずれか、もしくは両方によってもたらされます。

今回のゴルフ場サブスクは新規獲得、LTV向上のどちらのための策であるのか?

私的にはどちらにも該当しない、どっちつかずな印象です。

新規顧客獲得・増加であれば継続課金による値下げより、未経験者の需要を喚起すること。

需要がないのに継続利用はあり得ないでしょう。

次に既存顧客向け。

サブスクは理に適っていますが、企業側からするとそれはLTV向上が前提であり、そうならなければ単なる値下げになってしまいます。

本サービスは客観的に見ると「単なる値下げ」。

ユーザーにとってはありがたいのですが、ゴルフ場からするとさらなる経営難に陥いる可能性を孕んでいます。

そういう意味から本サブスクがゴルフ場経営の業績改善に繋がるか?

あくまで私見ですが微妙な気がします。


最後にゴルフとサブスクの親和性。

これは「ある」と思います。

ゴルフはヘビーユーザー、リピーターが多いスポーツ。

「ヘビーユーザー」に対して「継続課金」で「LTV向上」を図る。

これを成すための方向性は、ヘビーユーザーに対象を絞り、価値の高いサービスを付加する。

その上で単価を適正にまで高める。

つまり、単価減ではなく利用価値を高める。

今回取り上げたサブスクサービスとは真逆な方向になります。


本日の教訓、

「施策は対象ありき」


最後までお読みいただきありがとうございました。

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