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人生初の遠征!@岩手県

こんにちは。今年から入会させていただいております、会員のはっしーでございます。

この度は、私が日頃から応援させていただいている阪哲朗さんの演奏を聴きたくて、8/3に岩手県南部の一ノ関文化センターにて行われました公演、「ベートーヴェンの夕べ」に行ってまいりました。曲目は、序曲「コリオラン」、交響曲第5番、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」でした。ですが、写真を撮ってくるという意識に欠けていたので、文字ばっかりの投稿になってしまいますが、どうか最後まで読んでいただければ、と思います...

8/3の昼過ぎに東京駅を出発し、東北新幹線に乗って約4時間、17時過ぎに一ノ関駅に到着しました。駅の改札を出てまず、豊橋駅の西口(新幹線の改札側の出口)がフラッシュバックしました。駅前にぽつりぽつりとお店が数個あり、真ん中に大通りがあって、かなーりさびれた商店街が続いていて... と私の高校時代を思い出す風景がそこには広がっていました。私の高校は蒲郡とかいう街で寮生活をする学校でして(知る人ぞ知る)、よく部活の大会後に豊橋駅から歩いて15分くらいの焼肉屋で食べ放題コースをエンジョイした覚えがあります。最後の〆で、なぜか勢いで杏仁豆腐を30皿注文し、ぎりぎりで完食するものの気持ち悪くなって帰寮したものです...

と私の高校時代の回想は置いといて、一ノ関駅を出まして真っ直ぐ行った先の右手に、一ノ関文化センターがあります。センター付近にSLが展示されていたかなり目立つホールでした。

文化センター付近で食事をしまして、18:00に開場。ホールの収容人数は約1200人ほどで、サントリーやミューザと比べるとやや小さめ。壁は後部がタイルばり、そのほかはコンクリートの打ちっぱなしという内装でした。また、一階席は13列目と14列目の間に通路があり、15列目の両端と17列目の中央からは上部に2階席がせり出しておりました。音響という点では、そもそも収容人数が少ないということもあるかと思いますが、音を良く跳ね返しそうな内装もあってか、音の聞こえは良かったです。しかし、音が反射するときに、楽器から発せられた音がそのまま反射しており、結果として音色がやや乾燥気味といいますか、かなりデッドな響きとなっていました。首都圏のホールですと、反射するときに音に柔らかさが加わって豊かな音色になるんですが... しかしその一方で、音量そのものは良く届いていたと思います。

18:45からはプレトークがありました。阪哲朗さんは京都生まれ京都育ちですが、両親が山形県出身という事でゆかりのある方なのだそうです。また彼は鉄道好きらしく、若い頃はよく福島駅から色々な路線で北上してから南下してみたりしていたという情報をいただきました。加えて、ソリストの小山実稚恵さん(岩手県出身)も登場し、お二人のデビュー当時の様子を相互に語っておりました。

また、久々に地方の小さなホールでの演奏を聴きに行ったのですが、首都圏の大きなホールと比較して色々と違う点がありました。まず、首都圏のホールではチケットをちぎる時に小さい方の紙切れを回収しますが、昨日は大きい方に名前と電話番号を記入して回収し、小さい方を持って入場しました。また、やはり地元住民と思われる方々が多く、鑑賞時の雰囲気も首都圏と比べると緩く、自由な雰囲気でした。特に、運命の3楽章が始まって数十秒後に、一階席右手の鈴をつけたお爺さんが突然立ち上がり、鈴をちゃりちゃり鳴らしてなぜか左側の出口まで歩き、会場を出て、そのまま帰ってこなかったのは結構びっくりしました。

ちなみに、今回初めて山形交響楽団の演奏を生で聴かせていただいたのですが、かなり全楽器にわたって技術的にしっかりしているオケだと思いました。特に、ファゴット、クラリネット、そして弦楽器全般が非常に上手でした。また、私は打楽器の経験がございますが、ティンパニ奏者の演奏が素晴らしかったように思います。といいますのは、僕の主観ですが、普通のオケの演奏ですと、ティンパニの音色というよりも大編成のオケに負けない音量、言い換えれば叩く(さらに言えばマレットを振り下ろす)ことのみに集中している演奏が多いのです。ですが、この方(平下和生さんというそうです)の演奏は、ティンパニの繊細な音色(かなり繊細な手の動きが必要)を引き出し、さらに中編成のオケの音量に合わせて自在に音量も変化させるという、素晴らしい演奏でした。有名なティンパニ奏者に、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン)出身で一時期N響にも首席客演奏者として参加していらっしゃったペーター・ゾンダーマンという方がいるのですが、その方の演奏と近しいものを感じました。ちなみに、彼の演奏はブロムシュテットがドレスデンで首席指揮者をやっていた時代の録音などで聴くことができます。

加えて、阪哲朗さんの指揮についてですが、歌劇場出身であるからかもしれませんが、オケの各楽器の扱い方が熟練していると思います。といいますと、普通の演奏(とくにドイツ的と言われる楽団)では古典派の曲、特にベートーヴェンの曲では弦楽器のみがメインのようになってしまい、全体的に重たい音色になってしまう傾向があるのですが、阪さんは弦楽器と同様にしっかりと管楽器、特に木管楽器を目立たせ、音色が弦楽器に引きずられることなく、全体的に華やかで軽やかな印象を与える音を作り出していました。(こうした特徴ゆえに、彼の振るJ.シュトラウスやモーツァルトは絶品です。)さらに、そうした音響的な効果に加えて、演奏の解釈もしっかりとしておりました。詳細は曲順とともに見て行きます。

さて、19時から開演しまして、前半は序曲「コリオラン」と交響曲第5番でした。序曲は、シリアスさも兼ねつつ、アダージョらしい静かなところでは木管楽器をしっかり目立たせ、全体的に滑らかに進行していました。テンポはイマドキらしくやや速めでした。また、弦楽器の昇降する部分等もしっかり響かせていたため、麗しい音色と同時に程よくシリアスさが垣間見える演奏でした。交響曲では、オケは8型でしたが、しっかり音量が出ていました。弦楽器の技術力が存分に活かされていて、聴き心地は最高でした。また、対向配置で、かつセカンドバイオリンをかなり活用していたので、冒頭からの緊張感が絶えなかったのがよかったです。また、特に印象に残りましたのは、3楽章のチェロ・コンバスからバイオリンまで同じメロディーを弾く部分で、弦楽器の集中力の高さと言いますか、テンポが微塵もずれずにアンサンブルが成立していて、演奏技術どんだけよ、と実感させられました。そして、第4楽章では本当に8型なのかと思うほど、弦楽器も含めしっかり音量が出ていました。

ベートーヴェンの交響曲は、ゴリゴリに音量を出し、ロマンあふれる演奏にする場合(フルトヴェングラーやセル?)もあれば、肩の力が抜けた、リラックスした状態で精神的、哲学的な演奏をする場合(クレンペラー)もありますが、今回は両者の良いところを取りつつ、ベースは後者よりな演奏でした。言い換えれば、早めのテンポ設定という、おそらく精神的な要素を反映させるのがやや難しい状況においてもオケを自在に操っており、表現を都度都度的確に変えていく様子が伝わりました。英国の指揮者、ブリテン氏の演奏を思い出しました。音楽において、オケの各楽器を活かした華やかな響きと、精神的な思索が両立する場合はかなり珍しい(あくまで主観です)と思いますので、今後の阪さんの活躍に期待が高まる一方です。

20分ほどの休憩をはさみまして、後半はソリストの小山実稚恵さんをお招きして、ピアノ協奏曲の第5番「皇帝」でした。

小山実稚恵さんは、チャイコフスキー国際コンクールとショパン国際コンクールのピアノ部門で高い順位を獲得している実力派のピアニストですので、難しいパッセージを華麗に弾きこなしていました。個人的には、もっと精神的な、思索に耽るような演奏が好きなので、若干物足りなさはありましたが...。ですが、この曲は高いテクニックが求められる華やかな曲であったので、よく考えられた選曲だったなと思います。演奏全体としては、華麗なピアノと華やかな響きのするオケの伴奏という組み合わせはとても相性が良く、完成度は高かったです。

アンコールとして、阪さんと小山さんが連弾でベートーヴェンのトルコ行進曲を演奏しておりました。

最後に、Twitterなどで調べました限り、今回の公演は地方での公演だったこともあり、首都圏のクラシック音楽好きの方の関心をあまり惹いていなかったのが残念です。在京オケと肩を並べうる実力を持った山形交響楽団と、個人的な主観では、日本人指揮者の中で突出した才能を持つ阪さんというかなり強烈なコンビの知名度がまだまだ低いのは本当に惜しいです。CURTAIN CALLというサイトで、このコンビでの演奏が掲載されているのですが、この投稿を見て阪哲朗氏と山形交響楽団のコンビに興味を持ってくださった方は是非とも、ご覧になってください。私としても、このコンビがサントリーやミューザなどといった素晴らしいホールで演奏するのを聴きたくてしょうがないので、ぜひともご協力(?)をお願いしたいです!!


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