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【詩】 桜の頃 他2編

今月の詩を3編選んでみました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。



「桜の頃」

春に舞う雪を 銀色の浴槽から見た
力を無くした泡が私の体を滑っていく
溜め息と蛍光灯のあかるさに包まれて
波打つ湯は溢れ出す
小さな窓をもっと開けてしまおうか
すると 肌を刺しきれぬそよ風と
あの繊細な香りが舞い込んでくる
あ、と思わず声を上げた
微かに明滅する街灯の橙
柔らかな薄紅色の絨毯を見た



「虫」

ひそひそ言われてる
気づいてる
腹の虫が剽軽な音を立てた

真面目で面白くないから
新聞は読まない
真面目で面白くないわたしは
いつもひとり 蚊帳の外

虫 けらけら 弱虫毛虫
ひとりぼっちの 虫けらけら
泣き虫 いつも 孤独のわたし


「CAT BAT」

悪い猫ちゃんや ちょっとこっちに来ておいで
一緒にお菓子を食べに行こう

夜の闇が僕らの姿を消して
あらゆる悪事を隠しているから
盗んだバイクで 隣町まで行こう

あんまりしがみつくでないよ 猫ちゃん
大きな翼でハンドルを握る
風を切る 風を切る
国道を一直線に突っ走る
おいしいお菓子の店が あるからね

秘密の路地裏
猫ちゃんや 好きな味を選ぶといい 
さあ 夜が更けぬうちに
僕らの時間が終わらぬうちに



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