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【詩】 朝靄はポンテケージョの香り 他1編

爽やかで、日も長く、暑すぎず寒すぎない5月が好きで、こういう気候がずっと続けばいいなと思いながら過ごしています。
さて、「今月の詩」のコーナーです。
楽しんでいただけたら嬉しいです。


「朝靄はポンテケージョの香り」

ホラー映画を観た翌朝は
意外にもすっきりした気分だった
窓を開けると高原の風が吹き抜ける
ちょうど家族でドライブをした日と同じ気候で
20年前を昨日のことのように思い出した

後部座席から 5月の風景を逆さまにして見た
新緑が光の中を踊っていて
祖母はたくさんの季節の歌を教えてくれた
田園の香りは押し花にして 
そっと心の中にピン留めしておく
牧場の隣に霞む山小屋で買ったポンテケージョが
この世界の何よりも優しいような気がした

ひとりでは大きすぎる部屋にも
朝は必ずやってくる
口いっぱいに広がるショコラとブラックカラント
頬張って思った
帆を高く上げて 靄の中を突き進め
忘れられた世界の唯一を暴くように
波に飲まれそうでも 目を逸らしたくても

「サイパン」

夜の道に踊り出たい
車の通りのない 椰子の木が思い思いに立ち並ぶ面白い道
それは 2005年のサイパンの夜だった
闇を恐れずに街灯は息をいている
わたし以外には誰もいない
ひっくり返ったボートの廃墟はいつまでも波打ち際で朝を待つ
朝が来たら 今度は昼まで眠るつもりだ
真夏の果実の香りは神秘的な顔をして 円やかに風に乗る
そんな夜の街に踊り出て
誰もいない喜びと 淋しさと 楽しさを噛み締めたい

サイパンの空気が吸いたい あわよくば夜の


最後に

一かけらの今様の「彼と彼女のソネット」 5月の恋愛詩として「海の鼓動」を選んでいただきました。ありがとうございます!
素敵な写真と共にサイトに載せてくださったのも、たくさん読んでいただけたのもとても嬉しく、ひとりひっそり部屋でガッツポーズをしておりました。 


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
良い5月を過ごしましょうね。


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