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僕とMOTHER2 - その2

僕は探した。MOTHER2を。

当時はもちろんネットなんてものはなく、ゲームを買うとしたらゲーム屋さんかおもちゃ屋さんだった。
大抵のゲームは"ファミコンランド"というショップにあった。
しかしMOTHER2は無かった。

文新堂という書店、ハローマックというおもちゃ屋、
ファミリーブックというレンタル店、どこにも無かったのだ。

群馬県は車社会。
両親は共働きで家には居らず帰りも遅い、
父方の祖父母と暮らしていたようなものだった。
祖母も住み込みで働くことが多く、祖父とずっと居た。

すこし話はそれるが、祖父は今は亡き高崎競馬のジョッキーだった。
僕が生まれた頃には家に馬がおり、しばらくして厩務員になった。
朝早く、昼過ぎには家にいた祖父。
二人で色んなところに行った。
いつも行くところと言えば高崎競馬場、
馬券は買わず、パドックで馬を見る祖父と一緒に馬を見ていた。

話を戻そう。
そんな祖父にねだり、伊勢崎のハローマックや西友、前橋のハローマックや文新堂、大胡の文新堂、ファミリーブックなど、思い付く場所を巡ったが、どこにも無かった。

マザー2はどこにも無かったのだ。

無いと余計に欲しくなるもの。
テレビでCMが流れるたびにこれが欲しいと言い、
広告に乗っていればこれが欲しいと言い、
いつでもどこでもMOTHER2が欲しい欲しい子になっていた。

そんな僕を17歳離れた叔父がどう思ったのか、
とある日の夜、高崎まで連れて行ってくれた。
ユーノスロードスターの助手席にちょこんと乗り、オープンカーにしてもらって国道50号から国道17号へ入り、国道沿いのビデオショップみたいなところへ連れて行ってくれた。

洋楽のCDがずらっとある店内。
小学生の僕にとってどこか怪しい雰囲気を感じていた。
MOTHER2に例えるなら、そう、ムーンサイドのような感覚。
ハローそしてグッドバイされてしまいそうなそんな雰囲気だった。

夜に行くお店は不思議な雰囲気だった。

店の片隅に少しだけゲームコーナーがあった。
洋楽のCDを見ている叔父を横目に探しに行った。
広告で見た赤いパッケージ、無いか無いかと探してみるが、
平置きや正面が出ている棚には無かった。
ここにも無いのかなーと思った矢先、
横面で棚の中に差し込んである赤い箱を見つけた。

もしかして?
そう思って手に取ってみると、それはMOTHER2だった。

ここにはさんざん探したMOTHER2があったのだ。
赤いパッケージに飛び出るようなMOTHER2のタイトル。

僕はMOTHER2を手に入れた!


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